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クライスラー、GMの命運を握るUAW

「労組がオーナー」の矛盾

  • 水野 博泰

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2009年5月1日(金)

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 米自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、クライスラーの3社は、かつて「ビッグスリー」と当然のごとく呼ばれたが、最近はビッグの看板は外され、本拠地名を取って「デトロイトスリー」と呼ばれることが多い。

 その上位に立ち、米自動車産業の将来を左右するような影響力を握る「ビッグワン」の姿が見えてきた。デトロイトスリーの従業員が加盟している全米自動車労組(UAW)である。

米政府とUAWが大株主

 デトロイトスリーの一角を占めるクライスラーが連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請したのは4月30日のことである。事前に予測されていた事態とはいえ、この日ばかりは米国内トップニュースの座を豚インフルエンザから奪った。

 政府からの追加融資を受けるための条件として大幅な債務圧縮が必要だった。経営陣、労働組合、債権者が妥協し、伊フィアットも提携を決断していたが、債権団のうち少数の中堅ヘッジファンドなどが最後まで条件を受け入れなかったために時間切れとなった。

 前日に就任100日演説を行ったバラク・オバマ大統領はホワイトハウスで2日連続の記者会見に臨み、厳しい表情ながらも力強い口調でクライスラー再生の継続的支援を約束。破産法手続きは30~60日で短期決着できる見通しだと強調したほか、ディーラーや部品メーカーへの緊急融資対策も提示して米国民の不安払拭に努めた。

 次は5月末に期限が迫るGMの番である。それまでに徹底的なリストラ計画を策定し、すべての債権者から債務圧縮の合意を取りつけなければならない。既に4月27日に追加再建計画を発表済みで、ブランド廃止、工場閉鎖、賃金引き下げ、ディーラー削減、人員削減など広範囲にわたる思い切ったリストラ策を打ち出している。

 最大のポイントは、債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ)による負債の大幅削減を打ち出したことである。そのスキームは米政府(財務省)からの融資とUAWが運営する医療保険基金の拠出義務のそれぞれ半分を株式に転換するというもの。クライスラーも同様の手法を取る方針。米メディアの報道によれば、クライスラーの場合はUAWが55%と過半を占めることになる。GMの場合は米政府の比率が50%で「ガバメントモーターズ」と皮肉られるほどだが、UAWの株主構成比率も39%と高い。この資本構成は、破産法適用の場合でも、回避した場合でもほぼ変わりがないと見られる。

 最終的には株式は売却され政府とUAWの保有比率は下がるはずだが、それがいつのことになるのかは分からない。少なくとも経営再建を軌道に乗せるまでは、この資本構成のまま。政府はともかく、経営陣と敵対してきた労組がオーナーになるのは、「極めて異様」との声が上がっている。

ストライキは誰に打つ?

 UAW代表が取締役や経営陣に名を連ねても不思議ではない。だが、労働者の権利を守る労組と、企業の所有者として最大利益を追求するという株主の目的が相反してしまう。カール・マルクスとアダム・スミスを一度に信奉するようなものである。

バンク・オブ・アメリカに対する労組の抗議デモ(ニューヨーク)

 もっと卑近に言えば、組合員は今後ストライキを打つのか? 打てば所有する会社にオーナー自身がストを打つという奇妙なことになる、すると労組の意義は何なのか…。そういった矛盾や疑問が次々にわいてくる。

 これはクライスラーとGMに限らない。フォードはまだ政府支援を要請していないが、年末までには資金繰りに行き詰まるのではないかという見方もある。ほかの2社と同様に医療債務を株式で支払うことによる現金支出抑制を選択する可能性は少なくない。

 「フォード家は、出資比率こそ少ないが議決権を4割ぐらい押さえている。そこさえ堅持できれば、株式を50%以上渡してもかまわない」(大和総研アメリカの坂牧史郎アナリスト)

コメント6件コメント/レビュー

コメント(2)アメリカ有力自動車雑誌「ロード&トラック」の元編集長ジョン・ラムが、4年前GMの一副社長にインタビューした時、『GMは金融業の傍らで自動車を造っている』とコメントを受けた。日本のメディアは、日本の常識と経験則だけでアメリカ自動車業界の苦境を報道している為、真実が何も見えない。アメリカには日本の様な国民皆保険制度・皆年金制度が存在しない。デトロイトスリーが現・退職者とその家族に支払う莫大な医療費と年金が経営を圧迫してきた。デトロイトスリーの当該資金運用はサブプライム問題を機に破綻し、次いで経営も破綻した。クライスラーは70年代投資グループ・トラシンダのカーク・カーコリアンが買収。90年代モーガンスタンレーの一AEと懇意のウォールストリートジャーナルの記者が、「400万台クラブ」なる記事をデッチアゲて集めたファンドマネーでダイムラーとの合併が実現。トラシンダとモーガンスタンレーは莫大な利益を得たとされる。そして現在のサーベラスだ。過去30年間、クライスラーは投資ファンドとUAW/CAWの金儲けの道具だったのではないだろうか。(2009/05/10)

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コメント(2)アメリカ有力自動車雑誌「ロード&トラック」の元編集長ジョン・ラムが、4年前GMの一副社長にインタビューした時、『GMは金融業の傍らで自動車を造っている』とコメントを受けた。日本のメディアは、日本の常識と経験則だけでアメリカ自動車業界の苦境を報道している為、真実が何も見えない。アメリカには日本の様な国民皆保険制度・皆年金制度が存在しない。デトロイトスリーが現・退職者とその家族に支払う莫大な医療費と年金が経営を圧迫してきた。デトロイトスリーの当該資金運用はサブプライム問題を機に破綻し、次いで経営も破綻した。クライスラーは70年代投資グループ・トラシンダのカーク・カーコリアンが買収。90年代モーガンスタンレーの一AEと懇意のウォールストリートジャーナルの記者が、「400万台クラブ」なる記事をデッチアゲて集めたファンドマネーでダイムラーとの合併が実現。トラシンダとモーガンスタンレーは莫大な利益を得たとされる。そして現在のサーベラスだ。過去30年間、クライスラーは投資ファンドとUAW/CAWの金儲けの道具だったのではないだろうか。(2009/05/10)

コメント(1)日本のメディアで、筆者が最初に「デトロイトスリー」と記述した。数年前からアメリカの自動車業界専門紙では「デトロイトスリー」と呼んでいた。敢えて言えば、同業界紙ではデトロイトスリーにトヨタ・ホンダ・日産を加えて「ビッグシックス」と呼んでいる。何故、日本のメディアは日本の自動車会社がアメリカで現地生産する自動車について正確な報道をしないのだろうか?アメリカで製造される乗用車で生産台数が一番多いのは「トヨタ・カムリ」だ。ホンダがアメリカで製造する自動車は日本国内の生産台数より22万台も多い。日本の自動車メーカーが海外で製造する自動車は約1200万台。今や国内生産台数を上回っている。実に輸出台数の2倍以上だ。自動車や家電が、日本の主要輸出品目だったのは30年も昔の話だ。アメリカに於ける日本の自動車メーカーの成功要因のひとつはUAWとの協約を免れたからだ。UAWは給与や福利厚生だけでなく、工場のコンベアーラインのスピードや自動車の間隔にも要求を出す。即ち、経営にも立ち入っているのだ。(2009/05/10)

UAWは既得権の塊。失業率が高くなるなかで自分たちだけの利権を守っている。それも現役世代の賃金が上がらない中で、退職者が現役世代とそう変わらない年金と無料の医療を受け取り続けている。その責任は第一義的には、そんな破綻確実な契約を結んでしまった当時の経営陣にある。これは、「これだけあげるから、私にもこれだけ増やしてね」という一種のバーター取引。コケにされたのは株主。でも、GMが特別だと思ってたら間違い。米国は国民年金なんてないが、今度は日本国がGMになりかねない!TT(2009/05/08)

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