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政治と浮気は、同じメカニズム

【オリエンテーション】進化政治学とは何か

  • 森川 友義

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2009年6月1日(月)

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 進化政治学。「こんな学問、聞いたことがない」と言う人がほとんどだと思います。それはそうでしょう。今のところ、日本では、私1人しか研究していませんから。

 もちろん、真面目な学問です。政治学には、様々な分析手法があります。戦後間もない頃までは、法律や歴史の見地から政治をとらえていました。近年は、政治科学として、目覚ましい発達を遂げています。1980年代からは、経済学を取り入れた手法が一般的になりました。

 公共選択理論という言葉を耳にしたことのある人は多いでしょう。あたかも企業活動を分析するように、政治家や官僚の行動を研究するのです。今はこの手法が主流で、私自身、何本も論文を書いてきました。

 21世紀に入り、新しい手法が話題になっています。生物学、特に進化論を基に政治をとらえ直そうという考え方です。私は元来、新し物好きで、すぐに興味を持ちました。

 米国政治学界において、こうした見方が萌芽したのは80年代で、論文が発表されるようになったのはつい最近です。まだ名称もはっきりと決まっていません。学者によって、「脳政治学」とか「バイオ政治学」とか「政治行動に対する進化論的アプローチ」とか、まちまちです。私が提唱しているのが「進化政治学(Evolutionary Political Science)」という呼称です。日本語として、ピンとくるでしょ。

複雑な人間関係が脳を育てる

 進化政治学では、私たちの遺伝子が、最後の氷河期が終わった1万2000年前の狩猟採集時代の遺伝子とほとんど変わっていない事実に着目します。例えば、国際紛争といっても、しょせん、人間同士が行っていることです。この点で見れば、狩猟採集時代での部族間の争いと、現在の国家間の争いに、大した違いはありません。狩猟採集時代にさかのぼって根源的な紛争のメカニズムを理解することで、現在の国際紛争の解決に役立つのです。

 進化とは、「遺伝子が突然変異を起こし、与えられた環境に最適な遺伝子が種全体に広がっていく過程」を指します。人類がサルと枝分かれし、直立二足歩行をし始めたのが700万~1000万年前と言われています。その後も自然選択と性選択によって進化が繰り返され、我々ホモ・サピエンスは二十数万年前にアフリカで誕生したことが分かっています。

 すべての身体構造のみならず、喜怒哀楽等の情動、さらに言えば、その情動と密接にかかわるホルモンや神経伝達物質も、進化によって作り出されてきたのです。

 さて、サルの脳の平均容量は300グラムです。これに対して、サルから進化したヒトの脳の平均容量は大体1300グラム。320万年前の「ルーシー」で有名なアファール猿人の脳が400グラム、「トゥルカナ・ボーイ」の呼称で知られる150万年前のホモ・エルガスターが900グラムですから、私たちの脳は徐々に巨大化していることが分かります。

 なぜヒトの脳は巨大化したのでしょうか。私たちの祖先は少なくとも700万年前、居住していた森林の環境悪化で、サバンナに移ることを余儀なくされました。ここでは、外敵から隠れる場所がない、直射日光にさらされる、新たな食料源を獲得しなければならないなど、多岐にわたる課題に直面したと推測できます。

 特に外敵から身を守るには、個別に対応するよりも、集団の方が生き延びる確率は高くなります。家族4人で行動するよりも、血縁関係のある10人でいた方が安全というわけです。

 ただし、血縁関係と言っても、配偶者は原則的に血縁関係がありませんし、お父さんの兄弟の子供同士では血が遠くなります。すると、利他的に行動するよりも、利己的に行動する方が得する場面が生まれるなど、複雑で多様な人間関係が集団内に出来上がります。

 誰がどんな行動を取ったのか。自分の味方なのか、敵なのか。嘘をついているのか、本当のことを言っているのか。

 集団行動では、こうした点を記憶しつつ、意思決定していかなければなりません。集団が大きくなるにつれて、記憶しなければならない出来事も増えた結果、脳の巨大化につながったと考えられます。実際、脳の中でも新皮質(neocortex)と呼ばれる高度な推論を行う場所が、ヒトは肥大しています。

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