「「進化政治学」で選挙が見える」

双子は同じ政党を支持する? しない?

【第2講】新説・有権者の投票行動研究

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2009年6月15日(月)

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 長い間、政治学者は有権者の投票行動について、実証研究を重ねてきました。誰がどの政党をなぜ支持するかは、政治学でも重要な関心事項です。

 ざっくりですが、企業経営者や農林水産業従事者が自民党を、都市部の会社員の多くは民主党を支持しているといった傾向はあります。職業や年収で、色分けができるのかもしれません。

 年齢で見ると、お年を召すに従って、自民党支持者が増えていきます。さらに、男女別の観点では、女性はやや自民党支持者と言われています。どうやら、女性にとって民主党は魅力的に映らないようです。

 職業、年齢、性別、収入、学歴・・・。様々な変数を使って、政治学者は投票行動の分析にいそしんでいます。

 そんな中、新たな変数として進化政治学者が唱えているのが、遺伝子の影響です。人間の政治行動は、社会行動や経済行動と同じように、先天的影響を多分に受けている可能性があるという主張です。この学説によれば、自民党を支持するか、民主党を支持するかは、遺伝子で大体決まっていることになります。

1700人以上の双子を調査研究

 違和感を覚える方もいらっしゃるでしょう。当然です。民主主義という近代の政治制度と、生来的なものである遺伝子という両者の間に相関関係があるとは、なかなか考えづらい。

 でも、現実に研究した学者がいるのです。米ネブラスカ大学のジョン・ヒビング博士や米ライス大学のジョン・アルフォード博士を中心としたグループです。

 彼らが着目したのは、双子でした。先天的な要因が政治行動にどのぐらい影響を与えているのかを調べるのに、双子のデータは有効です。双子には、100%遺伝子を共有する一卵性双生児と、50%遺伝子を共有する二卵性のケースがあります。さらに、それらの双子が同じ環境で育った場合と、離れて異なる環境で育った場合があります。2×2ですから、計4パターンが考えられます。

 従来の政治学の見地に立てば、双子と言えども、異なった環境で育てば(原因、独立変数)、政治行動(結果、従属変数)とは相関がないとなります。

 これに対して、遺伝子が重要とする立場を取るならば、異なった環境で育っても、双子の政治行動は似通っており、しかも二卵性よりも一卵性の双子の方が、同じような政治行動を示す傾向があるとの仮説が成り立ちます。

 ヒビング博士らは1700人以上の双子に対して、政党選好、政治イデオロギー、国家政策などに関する政治行動について調査しました。遺伝的要因と後天的要因のどちらがより色濃く、各人の現在の政治行動に影響を与えているかを分析したのです。

 その結果――びっくりするくらいに、遺伝的要因が後天的要因を上回っていました。

 2005年に「米国政治学会誌」で発表された論文(“Are Political Orientations Genetically Transmitted?”)は、当時の編集長が「かつて出版された論文の中で最も重要なものの1つ」との評価を与えたほどです。

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著者プロフィール

森川 友義(もりかわ・とものり)氏

早稲田大学国際教養学部教授、政治学博士。1955年12月、群馬県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒、ボストン大学政治学部修士号、オレゴン大学政治学部博士号取得。国連開発計画(UNDP)、国際農業開発基金(IFAD)などの国連専門機関に勤務。米ルイス・クラーク大学助教授、米オレゴン大学客員准教授を経て、現職に至る。主な著書に『60年安保 6人の証言』(同時代社)など。また、『若者は、選挙に行かないせいで、4000万円も損してる!? 35歳くらいまでの政治リテラシー養成講座』、『依存大国ニッポン 政治リテラシー養成講座2』(いずれもディスカヴァー・トゥエンティワン)を7月に同時出版する予定。



このコラムについて

「進化政治学」で選挙が見える

日本の政治が大きく変わるかもしれない。今年の衆院選の結果では、政権が自民党から、いよいよ民主党へ移る可能性がある。また、米国のバラク・オバマ大統領が登場したように、政治家への期待も高まっている。こうした時代だからこそ、派閥などの政治力学、制度などの組織論といった従来の枠組みとは違う視点で、政治や選挙を考える必要がある。21世紀に入って注目を集めているのが、政治研究の新手法「進化政治学」だ。人類の進化論と政治を重ね合わせて考察していく。

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