「ニュースを斬る」

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2009年5月21日(木)

新型インフル、騒ぎ過ぎの代償

マスクが“演出”するパンデミック

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 「魔女狩りもどきの機内検査やメディア報道が嫌で日本に帰るのを急遽やめました。確かに人ひとり感染が増えるとウイルスが悪性化する可能性が高まるとは言え、インフルエンザは毎年死亡原因のトップに挙がるものだし、ここまでする必要はあるのでしょうか」

 久々に里帰りしようと思っていたけれどやっぱりやめます、と、ニューヨーク在住の旧友から落胆したメールが来た。

NYではインフルで毎年1000人が死亡

5月20日朝、神戸のラッシュアワーの様子 © AP Images
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 ニューヨークでも新型インフルエンザの感染が広がっているという。死者も出た。しかし、一般の混乱を防ごうと市の対応は冷静であるようだ。

 市の医療局長は、5月18日付「ニューヨーク・タイムズ」で、こうコメントしている。「今回のインフルエンザのリスクは通常のインフルエンザとは変わりがないだろう。ニューヨークでもインフルエンザで毎年1000人ほどの方が命を落とす。そのことを忘れてはいけない」。

 帰国を諦めた友人も、「日本も機内検疫という水際対策でなく市内の病院での感染者への対応に軸足を移したようだけれど、アメリカは当初からそのスタンスで、症状の軽い人は自宅療養として病院には来ないように呼びかけています」と話す。

 一方、日本では厚生労働相が新型インフルエンザ対策から「季節性と変わらず」と、通常のインフルエンザ対応にその対策を切り替える方針を18日に発表した。

 しかし既に時遅しという感を否めない。未知の病気に対する不安感は社会に満ちてしまったのではないだろうか。

 関西方面に修学旅行や出張に行って帰ってきただけでも1週間の出席や出勤停止。大阪と兵庫への出張の禁止、その地域からの訪問者との面会禁止などの反応が企業などでも続々と起きている。

 ビジネスだけではなく、修学旅行のメッカでもある京都や奈良への旅行のキャンセル、テーマパークの閉園やコンサートの中止。関西方面の一斉休校。確かに、後で感染が分かった場合に、「あの時ああしていればこんなことにならなかったであろう」という後悔をしないためには「妥当」と言える選択だ。しかし、リスクというものはどうしてもゼロにはできない。

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著者プロフィール

西澤 真理子(にしざわ・まりこ)

西澤 真理子リテラジャパン代表。社会のリスクリテラシーに関する研究を手がける。英ロンドン大学インペリアルカレッジのサイエンスコミュニケーションで社会学博士号(リスク政策とコミュニケーション)を取得し、英独にて10年間研究生活を送る。現在、独シュトゥットガルト大学環境技術社会学科フェロー、ビジネス・ブレークスルー大学院大学ティーチングスタッフを兼任。また東京大学農学部の非常勤講師として環境倫理学を担当。


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日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、NBonline編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。

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