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アメリカは変われるか?

映画「グラン・トリノ」が日本人に突きつける問い

  • 竹中 正治

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2009年5月27日(水)

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 クリント・イーストウッドの主演・監督映画の最新作「グラン・トリノ(Gran Torino)」の日本でのロードショーが4月下旬に始まり、映画館に見に行った。ため息をつくほど、しびれた。

 良くも悪しくも、映画にはその時代を代表するような作品があり、世間の雰囲気、思潮を鋭く反映している。ずっとアメリカ映画を見続けている私には、過去10年間で右から左へ、驕りから自戒、そして再生へと向かう流れを感じる。ちょっと振り返ってみよう。

アメリカの驕り、「絶対悪vs.絶対正義」

 1996年のアメリカSF映画「インデペンデンス・デイ(Independence Day)」は、地球に襲来した異星人の侵略に対して、かつて空軍の戦闘機パイロットだったアメリカ大統領自らが戦闘機に乗り、戦闘機部隊を指揮して戦う物語だ。映画の最後に異星人撃退を果たした日を「ニュー・インデペンデンス・デイ」として祝う。

 この構図は、「絶対悪(地球を侵略する異星人)」に対して人類の自由と独立を防衛する「絶対正義」の戦いである。その先頭に立つのがアメリカであり、アメリカ人による祖国の防衛が、絶対悪から世界人類の自由を取り戻すための戦いと何の疑いもなく同一視される。そういう意味で、「アメリカ帝国のイデオロギー」が、無邪気かつ露骨に横溢した映画だった。

 この映画が発信するイメージは「異星人」を「テロリスト」に置き換えれば、ジョージ・W・ブッシュ大統領が9・11以降のいくつもの演説の中で繰り返したビジョンそのものである。この映画が封切られたのは96年であり、2001年の9・11(米同時多発テロ)の5年前である。9・11テロを受けてブッシュ大統領はテロという「絶対悪」に対する宣戦布告を行った。映画のビジョンは「対テロ戦争」として現実のものになった。

秘められた含意:帝国主義への風刺

 拙著『ラーメン屋vs.マクドナルド』(新潮新書、2008年)で取り上げたが、この映画との対比で見ると興味深い含意を秘めているのが、2005年にスティーブン・スピルバーグ監督によって映画化された新版「宇宙戦争(War of The Worlds)」である。

 スピルバーグ監督は、異星人襲来という恐怖の臨場感を盛り上げるために、9・11テロをアメリカ人に想起させる様々な仕掛けを映画の中に巧みに設定した。ところがそうした分かりやすい仕掛けのもう一つ奥に、9・11とは対極をなす別のイメージを仕込んだ。

 映画の中で、異星人の超ハイテク兵器が轟音を発し、夜の闇に閃光が走り、市民は逃げ惑い、パニックとなる。それを見ているうちに、「米軍のハイテク兵器の攻撃にさらされたバグダット住民の恐怖も、このようなものだったのではなかろうか…」という直感が強烈に浮かんできたのだ。

 スピルバーグが9・11テロを想起させて恐怖感覚を煽る仕掛けのもう一つ奥に潜ませた含意が、ここにある。

コメント14件コメント/レビュー

体の成長が止まった大人は、生き物としてそのまま劣化するだけの存在か?とかんがえると、それは否定できると思います。インプットや体験をもとに、挑戦し成功や失敗から学び、知識や経験を積み上げ、判断を重ね、心や精神に成長を続けさせることは可能です。日本のおかれている状況はそれと同じことではないかと思います。次々と提供されるモノやサービスや情報を押し付けられて、多くの人は受身になっている。次々にやり過ごしたり流していればまだましだが、殆ど全てを受け止めてしまっていると、自分で考えて意思を反映して選択する前に、流れに乗せられて誤った判断をさせられてしまうことも多い思いと思う。ただ、それでは、提供する側から見ると、サービスを選んで使ってくれるユーザーではなく、サービスに対してお金を払う装置としての消費者になる。まるで注文の多い料理店で、次々と現れる指示に従って料理の下ごしらえをする外国かぶれの猟師の様に、自らを消費させる準備をしているようなものだ。考える力、疑う力、判断する力、未来を予測する力、それは、インプットばかりでは身に付かない。必要なのは、人の意見ではなく自分の感覚や経験に基づいた判断。インプットを止めて、アウトプットを増やす。そのためには失敗を許す環境が必要なのだが今はそれすら難しい。であれば、人為的にそういう環境を作って失敗させる、或いは乗り越えさせるのが、実は一番の近道なのかもしれない。(2009/05/28)

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体の成長が止まった大人は、生き物としてそのまま劣化するだけの存在か?とかんがえると、それは否定できると思います。インプットや体験をもとに、挑戦し成功や失敗から学び、知識や経験を積み上げ、判断を重ね、心や精神に成長を続けさせることは可能です。日本のおかれている状況はそれと同じことではないかと思います。次々と提供されるモノやサービスや情報を押し付けられて、多くの人は受身になっている。次々にやり過ごしたり流していればまだましだが、殆ど全てを受け止めてしまっていると、自分で考えて意思を反映して選択する前に、流れに乗せられて誤った判断をさせられてしまうことも多い思いと思う。ただ、それでは、提供する側から見ると、サービスを選んで使ってくれるユーザーではなく、サービスに対してお金を払う装置としての消費者になる。まるで注文の多い料理店で、次々と現れる指示に従って料理の下ごしらえをする外国かぶれの猟師の様に、自らを消費させる準備をしているようなものだ。考える力、疑う力、判断する力、未来を予測する力、それは、インプットばかりでは身に付かない。必要なのは、人の意見ではなく自分の感覚や経験に基づいた判断。インプットを止めて、アウトプットを増やす。そのためには失敗を許す環境が必要なのだが今はそれすら難しい。であれば、人為的にそういう環境を作って失敗させる、或いは乗り越えさせるのが、実は一番の近道なのかもしれない。(2009/05/28)

アメリカは聖書に忠実であろうとした原理主義的なキリスト教徒が、本国での弾圧から逃れ、成立させた国です。一神教の持つ善と悪の完全な分断は現実の社会にも反映されているのでしょう。自分達が神の国の住人であると信じれば、敵対するものは悪魔の国の住人です。一神教であるが故に対立する相手に絶対悪が必要で、その価値観が宗教とはやや異なるイデオロギーを敵と捕らえて、冷戦構造を形作っていた。それがなくなって、"神の国"は福音を与えるつもりで実は不幸を撒き散らしているだけの、他国から見れば"悪魔の国"だということを世界中の知るところと成った。金融大量破壊兵器なるものまで使って世界を混乱に陥れて、その対応に追われるフリをしながら、実は火種を撒き、先週あたりからは、日本のすぐ近くできな臭い話がくすぶり始めている。80年前の亡霊の後ろに、70年前、60年前の亡霊を忍ばせているかの様だ。アメリカ人は確かに少しは変わったかもしれないが、"神の国"は結局は変わらないのでは?あるいは今までのアメリカにとって変わる"神の国"が現れるだけなのでは?(2009/05/28)

私は40代の男性です。作者の紹介された映画を丁度、見たいな~と思っていたところ、この記事を読みました。多少?内容が明かされた気もしますが、ますます見に行きたくなりました。今週末に公開のスタートレックと一緒に見たいと思います。昨日、年金の不公平格差が明らかになり、国会でも制度見直しの論議が盛んです。私は今の老人が権利を手放さない為に、若者の教育費格差が広がって、益々、将来の不安が濃くなったと思う人間です。日本人の未来=若者の為に、何を捨て、何を救うべきなのか?私は年金を捨て、子供の教育+生活費を国家で保障する、子供生存保障制度を新たに作るべきと考えます。私自身の老後よりも、子供の未来が保障されるべきだと考えています。(2009/05/27)

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