• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

アメリカは変われるか?

映画「グラン・トリノ」が日本人に突きつける問い

  • 竹中 正治

バックナンバー

2009年5月27日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 クリント・イーストウッドの主演・監督映画の最新作「グラン・トリノ(Gran Torino)」の日本でのロードショーが4月下旬に始まり、映画館に見に行った。ため息をつくほど、しびれた。

 良くも悪しくも、映画にはその時代を代表するような作品があり、世間の雰囲気、思潮を鋭く反映している。ずっとアメリカ映画を見続けている私には、過去10年間で右から左へ、驕りから自戒、そして再生へと向かう流れを感じる。ちょっと振り返ってみよう。

アメリカの驕り、「絶対悪vs.絶対正義」

 1996年のアメリカSF映画「インデペンデンス・デイ(Independence Day)」は、地球に襲来した異星人の侵略に対して、かつて空軍の戦闘機パイロットだったアメリカ大統領自らが戦闘機に乗り、戦闘機部隊を指揮して戦う物語だ。映画の最後に異星人撃退を果たした日を「ニュー・インデペンデンス・デイ」として祝う。

 この構図は、「絶対悪(地球を侵略する異星人)」に対して人類の自由と独立を防衛する「絶対正義」の戦いである。その先頭に立つのがアメリカであり、アメリカ人による祖国の防衛が、絶対悪から世界人類の自由を取り戻すための戦いと何の疑いもなく同一視される。そういう意味で、「アメリカ帝国のイデオロギー」が、無邪気かつ露骨に横溢した映画だった。

 この映画が発信するイメージは「異星人」を「テロリスト」に置き換えれば、ジョージ・W・ブッシュ大統領が9・11以降のいくつもの演説の中で繰り返したビジョンそのものである。この映画が封切られたのは96年であり、2001年の9・11(米同時多発テロ)の5年前である。9・11テロを受けてブッシュ大統領はテロという「絶対悪」に対する宣戦布告を行った。映画のビジョンは「対テロ戦争」として現実のものになった。

秘められた含意:帝国主義への風刺

 拙著『ラーメン屋vs.マクドナルド』(新潮新書、2008年)で取り上げたが、この映画との対比で見ると興味深い含意を秘めているのが、2005年にスティーブン・スピルバーグ監督によって映画化された新版「宇宙戦争(War of The Worlds)」である。

 スピルバーグ監督は、異星人襲来という恐怖の臨場感を盛り上げるために、9・11テロをアメリカ人に想起させる様々な仕掛けを映画の中に巧みに設定した。ところがそうした分かりやすい仕掛けのもう一つ奥に、9・11とは対極をなす別のイメージを仕込んだ。

 映画の中で、異星人の超ハイテク兵器が轟音を発し、夜の闇に閃光が走り、市民は逃げ惑い、パニックとなる。それを見ているうちに、「米軍のハイテク兵器の攻撃にさらされたバグダット住民の恐怖も、このようなものだったのではなかろうか…」という直感が強烈に浮かんできたのだ。

 スピルバーグが9・11テロを想起させて恐怖感覚を煽る仕掛けのもう一つ奥に潜ませた含意が、ここにある。

コメント14

「ニュースを斬る」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック