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第2話:愛犬との運命の出会い。それは心が折れていたあの夏

  • 津田 和壽澄

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2009年5月27日(水)

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 (前回から読む)

 2008年12月27日、大切な家族であったヨークシャー・テリアのピピが腎不全によって虹の向こうに旅立った。看病に関しては幸い、「できる限りのことはやった」という実感を持つだけの時間は与えてもらえたが、そう考えたとて悲しみが減るわけではない。月日が経つごとに、胸の痛みは時ところを選ばず心の奥深くへきりきりと刺さり、涙は「なぜ、今?」と驚くような場面であふれ出す。

 涙も喪失感も、なんと様々な形を持っているのであろうか。月日は過ぎ、季節は衣を替える。今さらながら、「これほどまでに、ピピと深い絆が築かれていたのか」と感慨深い毎日である。

 というのも、12年前の私にとって、このようなことは全く予想しないばかりか、「動物を飼う」という表現すら語彙の中にない生活を送っていたからだ。

在りし頃のピピ

仕事上の人間関係に傷ついていた頃、ペットの夢を見た

 当時、私は外資系企業でのパワーゲームの不毛な争いにより職を失ったという苦い体験を経て(詳細は、『もう、「ひとり」は怖くない』、祥伝社を参照してほしい)、人事戦略コンサルタントとして活動しつつあった。

 しかし、つらいその経験は、心にそれまでの長い社会生活でたまっていた澱のようなものを表出させるきっかけとなっていたのだ。自尊心は傷つき、折れた心はまだ修復の途中にあり、さらにそのことを誰にも表現できずにいた。

 そんなある夜、夢を見た。
 かつて働いていたビルがあるニューヨークの五番街を、私はまっ赤なリボンを首につけた小さな豚を連れて歩いている。そこにいる私は、とても幸せそうだった。目覚めても記憶は鮮明で、夢に出てきた小さい生き物がとても気になった。

 それまで無気力感がどこかにあった私は、ひるがえって何かに憑かれたかのように行動を開始した。調べてみるとその小さな豚は、スキニー・ギニア・ピッグという小動物らしい。その動物を扱うペットショップを見つけ出し、中野へと急行した。

 ケージにいたそれは、本当に絵本に出てくるような「手乗り豚」だった。丸々とした清潔な肌に惹かれ、これに赤い首輪をつけて、歩く幸せを思った。

 しかしその時、隣でささやくカップルの声が聞こえたのだ。「かわいいけど、この子、すごく好奇心が強くて動きも速いんですって。部屋の隅に隠れてしまって、探すのに苦労するみたいよ」。

 そんなやり取りを耳にして、私のファンタジーは一気に現実に引き戻された。「そうか、生き物を飼うとは、そういうことから考えないといけないんだ」。

 しかし、この時私の中で眠っていた何かのスイッチが、無意識の内に押されてしまったのだ。

 中野のペットショップでの顛末を友人に話すと、いとも簡単に「じゃあ、犬を飼えば?」という答えが返ってきた。それを聞いて、私の中には即座に次のようなウォーニング・ランプが点滅した。

 1つ、これまで1人でやってきたのに、自分でコントロールができないもの(本能で動く存在)をライフスタイルに取り入れるなんて無理ではないか。

 1つ、30代で独り暮らしの女性が犬を飼う? いよいよ「愛情のはけ口を犬に求め、寂しさを紛らわしているかわいそうな人」というオーラを出すことになる? そのうち犬に手作りの洋服を着せ、赤ちゃん言葉で話しかけ、犬を擬人化している我に気づかない愚かな人間になるの?

 1つ、心と体を整え、何とかこれから仕事をしようとしているのに、なぜ今、犬を飼うの?

 1つ、犬には4歳の頃に洋服を、17歳の時に左目を噛まれた経験がある。そんな怖い犬をなぜ飼うの?

 1つ、動物の命を預かる覚悟が、経済的、肉体的、心の余裕として今の自分にあるの?

コメント5件コメント/レビュー

私もペットに心を救われた一人です。作者の思いが、痛いほど分かります・・・。この記事は、私にとって新しい人生のスタートのきっかけをくれました。ありがとうございます。次回も楽しみにしています!(2009/05/29)

「ペットを看取るということ 天国の犬からの宿題」のバックナンバー

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

私もペットに心を救われた一人です。作者の思いが、痛いほど分かります・・・。この記事は、私にとって新しい人生のスタートのきっかけをくれました。ありがとうございます。次回も楽しみにしています!(2009/05/29)

多くのペットとともに暮らしてきたが、その出会いはいつも「縁」であった。筆者の場合、その「縁」は自らが求めたものと、あちらから来たものの両方の意味があったのであろう。この「縁」によって生まれた「絆」について、これから先のストーリーを心待ちにしている。(2009/05/29)

子供時代に経験したペットとの死別は辛いもので、それ以来ペットを飼うのを敬遠していたほどだった。しかし、子供達にせがまれ2匹の猫を飼い、楽しい13年ほどの月日を過ごした。それが2004年1月28日、白黒のライアが突然死んでしまった。子供のように可愛がっていた動物の死は自分でも想像を絶するものだった。自分が子供時代に感じた悲しみとは全く異質な衝撃的な悲しみだった。胸の中に大きな堅いものがゴロリと入ったまま、こころが固まってしまった様だった。著者が感じたように、私も突然何かの瞬間にボロッと涙が落ちて、私はどうなっちゃっただろう?と自分に於ける存在のあまりの大きさに改めて驚き、深く感謝した。あれから4年半の月日が経っているのに、未だ私の中でライアは生き続けている。著者の痛みが少しずつでも癒える事を祈念しております。(2009/05/29)

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