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ポール・クルーグマン教授に聞く
「GM問題、米金融危機、日本経済」

  • 大野 和基

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2009年6月1日(月)

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 2008年度のノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン教授は、このたび日本国内向けとして特別に『危機突破の経済学』(PHP研究所)を上梓、その記念として先頃来日した。

 来日中、クルーグマン教授が都内の大手家電量販店や商店街を見て回った感触は「日本は恐慌ではない」。ただ地方など日本のすべてを見たわけではないので、本当のところは分からないと慎重な姿勢も。

 そうした姿勢は世界経済の見通しにも表れ、今年末から来年にかけて底入れ、本格回復には4~5年かかると見るが、日本のような「失われた10年」を経験する可能性を否定しない。クルーグマン教授に世界の景気情勢や米ゼネラル・モーターズ(GM)、バラク・オバマ大統領の経済政策などについて聞いた。

(聞き手はジャーナリスト 大野 和基)

 ―― クルーグマン教授は昨年12月に行われたノーベル経済学賞の授賞式で「ビッグスリー(米自動車大手3社)はいずれ消滅するかもしれない」と述べました。

 今年4月末に、クライスラーが連邦破産法11条の適用を申請しました。そして今、GM(ゼネラル・モーターズ)が矢面に立っています。クライスラー倒産の背景にはバラク・オバマ大統領の決断があったと言われます。GMについてオバマ大統領、もしくは米政府はどう対処すべきなのでしょうか。

ポール・クルーグマン氏
(Paul Krugman)


米プリンストン大学教授。1953 年生まれ。77 年に米マサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学博士号を取得。米スタンフォード大学、MIT教授を経て2000 年から現職。1999 年から米ニューヨーク・タイムズ紙でコラムニストとして活躍している。
(写真:長谷 亨、以下同、写真は2006年に撮影したもの)

 クルーグマン クライスラーを破綻させたのは、誤りだったと思います。景気が悪い時は、破綻させるべきではありません。もっと景気が悪くなるからです。あと2年くらいは延命させるべきだったと思います。

 ですからGMについては、クライスラーと異なり、今は救済すべきだと思います。クライスラー同様、今後2年間は延命させるべきだと思います。ただ、それで本格的に立ち直るかは分かりません。5年後には完全に消える可能性があります。

 ―― 危機にあるGMの幹部たちが先頃、自社株を売却していたことが分かりました。こうした行為について、どう考えますか。

 クルーグマン もし同じ立場なら、私も同じことをしたと思います。なにしろ価値がなくなってしまうのですから。

 ―― クルーグマン教授はクライスラーを破綻させたことには批判的ですが、オバマ大統領の最初の100日間の経済政策は、100点満点で何点でしょうか。またその理由は。

 クルーグマン 87点。米国式の評価で言うならAマイナスです。ヘルスケア分野の進展が大きく、環境問題にも力を入れています。景気刺激策もまだ足りませんが、効果は出ています。

 ―― 米経済の回復には、金融機関の不良債権処理が欠かせません。そのためには金融機関から不良債権を切り離す作業が必要です。投資家が不良債権を買い取るためには、まず不良債権額を確定しなくてはなりません。その意味で、米連邦準備理事会(FRB)が実施した金融機関に対するストレステストの結果をどう見ていますか。

 クルーグマン ストレステストの結果はIMF(国際通貨基金)の調査結果と一貫していますが、ストレステストそのものに不可思議な点があります。例えば状況がかなりひどい状態のシティグループについては、まだ実行していないことも評価の対象にして、状態がいいように見せていることです。

 ストレステストの前提は現在、銀行に支払い能力がある、ということですが、その前提は間違っています。今の銀行は十分機能していないのであって、いくらストレステストをやってもその事実は変わりません。

 全く意味がないテストではありませんが、先に政策を立てて、その政策を正当化するために、ストレステストをやっただけです。

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