今回のような新型インフルエンザの発生や、近い将来に予想される強毒性ウイルスの蔓延は、これまで企業が経験したことのない未知のリスクである。それだけに、事業継続のための対策計画を実施しようとすると、様々な疑問や課題にぶつかるはずだ。混乱をなるべく最小限に抑えるには、危機管理担当者だけでなく、経営陣や管理職も基本的な考え方を頭に入れておく必要がある。
そこで2回に分けて、企業がぜひ押さえておきたいポイントについて、新型インフルエンザなどのパンデミック(世界的大流行)対策に携わってきた米格付け会社スタンダード&プアーズの佐柳恭威バイスプレジデントに、自らの経験を踏まえて解説してもらった。
Q:新型インフルエンザによるパンデミックが起きた場合、企業はどのような被害を受ける可能性があるのでしょうか。また、影響はどのぐらいの規模と見ておけばいいのでしょうか。
A:パンデミックは断続的に1年から1年半続く見込み
企業活動には大きな制約が出てくる
佐柳 恭威: 新型インフルエンザの毒性や感染力に注目し、2つのケースに分けて考えたいと思います。
1つは、今回メキシコを起点として世界に広まった新型インフルエンザ(H1N1型豚インフルエンザが変異してヒト−ヒト感染の能力を獲得したもの)のように、感染力は強いが毒性はそれほど深刻ではないと考えられるケース。このH1N1型豚インフルエンザは、WHO(世界保健機関)の見解では、致死率や重症率に照らし、3段階中2番目の「中度」と評価されました。
もう1つは、今後発生すると懸念されている、感染力も毒性も強い新型インフルエンザ(H5N1型鳥インフルエンザが変異してヒト−ヒト感染の能力を獲得すると予想されているもの)が蔓延するケースです。
ここでは社会や経済への影響の大きさを考え、便宜的に前者を「プレパンデミック」、後者を「パンデミック」と分けて呼ぶことにします。「プレ」という言葉を使うのは、「事業継続計画(BCP=ビジネス・コンティニュイティ・プラン)の真価が試されるのは本来、強毒性ウイルスが蔓延するパンデミックであり、それに向けて企業は準備を行うべきだ」という考えに基づいています。
感染力も毒性も強いH5N1型の新型インフルエンザが流行するパンデミックでは、社員やその家族に多数の死者が出たり、会社全体や事業部門単位で、蔓延を防ぐために社員が自宅などの遠隔地で勤務せざるを得なかったりする状況になると考えられます。このような状態は、いったん始まると約2カ月間継続し、その後も断続的に数度の流行の波を繰り返して、全体で1年ないし1年半続くと予想されています。
企業活動は長期間にわたって大きな制約を受けますから、経済も停滞します。企業が考えなければならないのは、遠隔勤務を前提に、限られた経営リソースをより重要性の高い業務にシフトし、資金繰りを確保していくことです。
さらに、パンデミックが終息に向かった際に業務を回復させる手立てを準備する必要もあります。この意味で、「強毒性のウイルスによるパンデミックは、企業にとってサバイバル期」であると言えます。
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