CDの音楽データを記録する「ピット」をより精度高く刻み込む。10億分の1秒のずれにこだわる技術だが、音の違いは明確に分かるという。従来のCDより数百円高く売れるため、レコード会社の期待は大きい。
「こんなに音質が良くなるなんて、驚いた」。今年4月、ベストアルバムを発売したのを機に来日した有名な音楽デュオ、カーペンターズのリチャード・カーペンターさんは、CDプレーヤーが奏でた自身の名曲の音色を聞いて絶賛した。プレーヤーは従来と変わらないのに、より良い音を楽しめる「高音質CD」が注目を集めている。
1枚300円ほど高く販売
高音質CDの先駆けとなったのは、2007年11月にユニバーサルミュージックと日本ビクターが製品化した「スーパー・ハイ・マテリアルCD(SHM-CD)」だ。その後、CDプレス会社のメモリーテックが「ハイクオリティCD(HQCD)」を、ソニー ミュージックエンタテインメント(SME)が「ブルースペックCD」を発表した。
音質の良さを売り物にした光メディアとしては、これまで「スーパーオーディオCD(SACD)」があった。ただし、安くて数万円、高いと100万円以上もする専用プレーヤーが必要で、一部の愛好家にしか普及していない。
一方、高音質CDは3つとも汎用的な音楽CDの規格「レッドブック」に準拠しており、特別なプレーヤーを必要としない。従来のCDより1枚当たり300円程度高いだけなのに、ラジカセでも音の違いを実感できるため、幅広い音楽ファンの心を捉えつつある。
CDは厚さ1.2mm。下側から、ポリカーボネートなどの透明な基板、反射膜、保護層が重なった構造になっている。反射膜には幅が約0.5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)、長さ数マイクロメートルの細かい窪み(ピット)が無数に刻まれている。下方向から読み取り用のレーザーを当てると、ピットとそれ以外に当たった時の反射光の強さが異なる。これでデータの「0」「1」を判別し、音に変換するのが基本的な仕組みだ。
この仕組みを変えないまま高音質にできるのは、レーザー反射光をより正確に読み取っているためだ。
実は音楽CDを再生する時、音が時間的にずれることは珍しくない。これによる微妙な音の揺らぎを「ジッター」と呼ぶ。ジッターは10億分の1秒といったわずかなもので、専用測定機が機器自身のノイズで測定できないこともある。だが、ユニバーサルの新倉紀久雄氏は、「人間の耳は機器よりもはるかに高精度で、この違いを聞き取っている。ジッターを減らせばスタジオ録音に忠実な良い音を楽しめるようになる」と説明する。
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