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第4話:「ダメ飼い主はいても、ダメ犬はいない」。犬に“しつけられた”私

  • 津田 和壽澄

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2009年6月10日(水)

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 (前回から読む)

 普通の犬よりは2~3カ月遅れながらも、ヨークシャー・テリアのピピは穏やかに成長していった。ただ、社会性が備わるその時期の成長の遅れは、「犬見知り」をする傾向を強くした。

 初日から体が弱く、看病と愛情を一身に受けてしまったためか、自分を人間だと思い込んでいるのか、ピピは他の犬には興味のない犬に育っていった。

 ボスを私とする“2人きりの群れ”。極力他の犬に触れさせようと努力したが、結局のところ、私に触れられ語りかけられるのが、一番幸せそうだった。それは生後半年の頃、公園でリード(ひき綱)を外したゴールデン・レトリバー2頭に襲われてからは、いっそう顕著になった。私自身もピピを他の犬に触れさせることを恐怖するようになっていた。

 しかし、私には夢があった。
 それはピピをセラピー・ドッグにすることだった。病気やけが、精神的な痛手を受けた人の不安を和らげ、心と体を癒やすお手伝いをする訓練された犬である。

 例えば高齢者がいる施設などを訪問し、ふさぎ込んでいる方々がその小さな温もりを膝に抱き上げることで、犬にまつわるかつての記憶がよみがえったり、無表情だった顔に微笑みが浮かんだりする。触れられるのが好きなピピにとって、それは「犬道」を全うする素晴らしい役目に思えたのだ。

 セラピー・ドッグとなったピピ! それは何と凛々しくクールであろうか。ただ、ある問題にすぐに気づいた。ピピは私以外に触れられることに抵抗があるのだ。他の人が触れると、噛むことさえないものの露骨に嫌な顔をし、うなり声で威嚇する。しかし夢は諦め切れなかった。

警察犬の訓練士に家庭教師を依頼

 そこで、ピピが3歳になった頃ペット・シッター(留守中の犬猫の自宅にて給餌、散歩をする人)の紹介により、警察犬訓練士を家庭教師として依頼した。犬の訓練のため1カ月程度預ける方法もあるが、いわゆる家庭犬の場合、生活をする場所での訓練が重要だということであった。

 家庭教師を依頼した目的は2つ。
(1)誰がどう触れようとも、吠えないようにすること
(2)他の犬とも遊べる社会性を身につけること

 初日の朝9時30分、訓練士がやってきた。小柄でがっしりとした50代の男性である。これまで警察捜査でシェパードを連れて出動した経験はあるが、小型犬は初めてだという。

 私はその高度な手腕にひたすら期待をし、彼の一挙手一投足に注目をした。月曜から金曜まで毎朝小1時間、ピピはただ気ままに触れられる、という地味な訓練が行われた。

 次第に「朝練」のリズムに慣れてきた私にとって、それは育児に迷った新米ママが助っ人を得たような日々であった。結局屋内外の訓練を3カ月ほど続けた後、その訓練は突然終了した。おかげでピピは、子供の集団の中でもおとなしく触れさせ、他の犬にも挨拶できるようになった。

 しかし訓練終了後、この状態は日を追って元に戻ってしまった。犬は相手を瞬時に見抜くという。強いボスつまり訓練士には従うが、私になった途端、がまんする行為はピピにとっては意味がなくなったのだ。

 それから2年ほど経て、書店では必ず立ち寄ることになっているペットコーナーで『やっぱりワンちゃんと一緒が楽しい』(三好春奈著、エクスナレッジ)という本を手にした。パラパラとめくるうちに、著者の生き方に惹かれ一気に読み進んだ。そこには、人づき合いにストレスを感じ競馬場の厩務員へと転職し、その後コンパニオン・アニマル・アドバイザーになった女性の体験と犬のしつけが書かれていた。

 三好春奈さんは「コンパニオン・アニマル110番」代表で、2001年、相棒のウェルシュ・コーギー・ペンブロークの富士丸くんとともに、テレビ東京の番組で第3代犬通選手権チャンピオンになったという経歴。

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