前編に続き、企業が事業を継続するために新型インフルエンザ対策を実施するに当たって、直面する疑問や課題について、米格付け会社スタンダード&プアーズで危機管理顧問を務める佐柳恭威バイスプレジデントに解説してもらう(佐柳氏へのインタビュー記事はこちら)。
Q:新型インフルエンザが大流行した場合、国・自治体が様々な施策を打ち出してきます。企業は、その順守に努めていればいいのでしょうか。
A:企業は、国・自治体を補完する役割を担う
感染防止のため、社員の意識づけを徹底する
佐柳 恭威: 新型インフルエンザウイルスの国内流入を防ぐのは、主に厚生労働省を中心とする国の役割です。しかし、今回のメキシコで発生したH1N1型豚インフルエンザ(正式名称は「新型インフルエンザA」)の例が示すように、国の力だけでは防疫体制を維持できないことは明らかです。6月11日、WHO(世界保健機関)はついに、H1N1型豚インフルエンザに対して、パンデミック(世界的大流行)を意味する最終警戒レベルの「フェーズ6」を宣言しました。企業や個人の防疫意識は、パンデミックの被害を最小限に抑えるうえで、絶対に欠かすことはできません。
現在、H1N1型豚インフルエンザの次に来ると想定されている脅威として、H5N1型鳥インフルエンザの流行が懸念されています。このH5N1型鳥インフルエンザのウイルスは、鳥から人間に感染する際、致死率60%を超える猛烈な毒性を持っています。これが変異して、人間同士で容易に感染するようになった場合の致死率は定かではありませんが、極めて深刻なレベルになる可能性が高いと考えられるため、その蔓延が人類にとって一番危険なパンデミックとなります。
未感染地域でも油断せず
強毒性インフルエンザが発生した暁には、国全体を危険にさらすような企業や個人の勝手な行動は、厳に慎まなければなりません。誤解されやすいポイントなのですが、感染の発生していない地域への渡航や旅行も、必ずしも安全とは言えません。感染が発生した国を経由して移動してきた旅行者や、客室乗務員と接する可能性があるからです。リスク管理の観点から考えれば、パンデミック時には、空港など不特定多数の人が世界各地から集まる場所には近づくべきではないのです。
そこで問われるのが企業の対応です。もし企業がパンデミック時に迅速な渡航規制を実施しなかったとしたら、事業継続計画(BCP=ビジネス・コンティニュイティ・プラン)による管理体制のレベルの低さを示すことになります。ましてや、感染者の存在を隠して国・自治体に報告しないといった行動をすれば、もっと深刻な社会的制裁を受けることを覚悟しなければいけません。
学校における感染管理は、文部科学省を中心とする国と自治体の役割です。だからと言って、企業が無関係というわけではありません。多くの子供たちを少数の教師で感染管理しなければならないのですから、きちんと目が行き届かず、不測の事態が起きることは十分に考えられます。
そこで、企業は社員を通じて家族への啓蒙に努め、学校での感染拡大を防ぐ取り組みを支援する必要があります。さもないと、学校で感染した家族を介して社員に感染が広がりかねません。これでは企業のBCPに悪影響を及ぼします。
新型インフルエンザウイルスに感染してしまった人に対して、企業は厚生労働省や自治体が定めた手順に従って、保健所などに設けられた「発熱相談センター」を利用するように指示します。そこでの指導に基づいて、発症者には「発熱外来」に指定された医療機関で治療を受けさせます。
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