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カネは世間に落ちている。拾い方を考えろ――「軽トラ」で始めた町おこし

鍋合戦の川南町発、地域を元気にする方程式

2009年6月12日(金)

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 1月30日の「日経ビジネス オンライン」で、宮崎県東児湯郡の5町対抗鍋合戦の模様をリポートした。この平成の鍋合戦を仕掛けた川南町には、鍋合戦のほかにも、よそに誇れるイベントがあった。それは「トロントロン軽トラ市」である。

 軽トラ市とは、川南町の目抜き通りに、様々な産品を満載した軽トラックや軽自動車が並ぶ定期市のこと。今では1万人近くを集める全国でも屈指の朝市に成長。「川南町の成功に続け」とばかりに、軽トラ市は宮崎県内で広がり始めた。多くの地方や農村は出口のない暗闇でもがき続けている。地域を元気にする1つの方程式を、再び川南町に見てみよう。

(日経ビジネス オンライン 篠原 匡)


 軽トラックの隊列が見渡す限り続いていた。

 毎月の第4日曜日、宮崎県の川南町では月に1度の朝市が開かれる。トロントロン軽トラ市。その名の通り、農産物などを山積みにした軽トラが、川南町で一番の目抜き通り、トロントロン商店街に集結するイベントだ。

 ルールは2つ。軽トラックか軽自動車で出店すること。2000円の出店料を払うこと。それ以外には、何をどう売ろうが、縛りはない。

 商品を満載した軽トラが朝市にずらりと並ぶ――。その光景を想像するだけで心が躍る。しかも、川南町の軽トラ市はその規模が尋常ではない。

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坂道に123台の軽トラが並ぶ様は圧巻

 全長600メートルに及ぶトロントロン商店街。その中央線に沿って連なる軽トラや軽自動車は120台を超える。トロントロン商店街を南から眺めると、大通りは緩やかな坂道になっており、途中から軽く右にカーブしている。この緩やかな上り坂に「軽」が列をなす様は圧巻の光景だ。

 もちろん、来場者もすさまじい。

 川南町の人口は約1万7000人だが、軽トラ市の日曜には少なくとも5000人、多い時は1万人近くが訪れる。5月の第4日曜日、5月24日もそうだった。「細かい数字は分からないけど、8000人ぐらいはいったんじゃないか」と軽トラ市を主催している川南町商工会、軽トラ市事業委員会の市来原(いちきはら)進委員長は振り返る。

 高知の日曜市、輪島の朝市など全国的に名の知られた朝市は少なくない。だが、軽トラ市も負けず劣らず魅力のある朝市だ。それでは、魅惑の軽トラ市を少し覗いてみよう。

午前8時、花火の号砲とともに朝市がスタート

 軽トラ市は大通りの交通規制が始まる午前7時30分に動き出す。取材班が訪れた5月24日も、歩行者天国の始まりとともに、どこからともなく軽トラが集まり出した。所定の場所に車を止めた人々は黙々とテントを広げ、テーブルや椅子を並べ始めた。

朝トラ市の開始前。まだ客は誰もいない
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花火の号砲とともに、軽トラ市は幕を開けた
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 普段は物静かなトロントロン商店街。ハレの日を待ち焦がれているのか、町全体がどこかそわそわしている。ちなみに、観光ガイドによると、「トロントロン」という風変わりな地名は、諸説あるが、数百年前の住民が水音をトロントロンと認識したことに由来している、とあった。

 この日、川南町は雲1つない青空に恵まれた。南国、宮崎特有の刺すような日差しが乾いた路面に照りつけている。「今日はたくさん来そうだな」。商工会の関係者は突き抜けた青空を見上げると、目を細めてこう言った。

 午前8時。花火の乾いた号砲を合図に軽トラ市が始まった。突如として出現した青空市場。その賑わいは想像をはるかに超えていた。

2時間以上、車を飛ばして出店した人まで

 トウモロコシ、トマト、山菜、タケノコ、マンゴー、キャベツ、キュウリ、ジャガイモといった野菜類は当然のこと。キハダマグロの切り落とし、湯がいたフカ(サメ)、干物、たこ焼き、お茶、帽子、ウナギ、Tシャツ、寿司、観葉植物、鍋、古道具、カレー、生バンド演奏、コーヒー豆――。個性豊かで脈絡のない123台がきれいに隊伍を組んでいた。

 例えば、北の端、トロントロン交差点のすぐそばでは、鶏のモモ焼きを売る軽トラが強烈な白煙を上げていた。「いろいろなイベントに出店しているけど、ここは客の入りが違うね」。宮崎市から来たという店主は網の上で鶏肉を転がしながら言った。

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 その向かいには軽トラのカレー屋があった。看板メニューは豆カレー。1杯300円と抜群に安い。聞けば、「将来の独立を夢見て、軽トラ市で修業している」とのことだった。その3軒先にある県立高鍋農業高校のブースでは、自分たちが栽培したお茶の試飲を勧めていた。その先では、子供たちがオモチャ屋の軒先でぬいぐるみを売っている。

 さらに少し歩くと、ある軽トラの前に人だかりができていた。覗いてみると、「椎茸、詰め放題300円」との張り紙。椎葉村から来たお母さん集団の売り場だった。「今日が初めて。一度、出してみたかった。やっぱり人の出が違うわね。でも、この椎茸、ちょっと安すぎ。値つけを失敗した」とはリーダーらしき女性。宮崎県の秘境、椎葉村から川南町までは車で2時間以上の道のり。それだけの磁力があるということなのだろう。

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「カネは世間に落ちている。拾い方を考えろ――「軽トラ」で始めた町おこし」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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