「時流超流」

デトロイト、米最悪都市の末路

GM破綻、犯罪増、人口減…

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2009年6月15日(月)

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 ゼネラル・モーターズ(GM)破綻から一夜明けた6月2日。バラク・オバマ政権が真っ先に打った政策は、ほとんど知られていない。

 デトロイト救済策──。

 失職した労働者の救済策に4900万ドル(約48億円)を投入し、1000万ドル(約9億8000万円)でデトロイトの警察官を100人増員する。

 緊急発表された2つの施策が、巨大都市が陥った惨状を物語る。

「死んだ街」

 貧困と犯罪。この2つの病理が絡み合いながら、デトロイトは転落の一途をたどっている。

 政府が認定する「貧困層」の収入水準で計算すると、貧困率は33.8%となり、大都市(人口25万人以上)では全米最悪となっている。失業率は22%にも達する。

 人々の生活苦は、そのまま犯罪の増加に結びつく。凶悪犯罪発生率は全米1位。1960年代の暴動もあって、白人は市内から逃げ出し、黒人比率が82%となっている。

 こうした負のスパイラルによって、人口減少が止まらない。50年頃には全米4位の180万人を誇ったが、今では半分の90万人まで落ち込んでいる。ここ数年も年2%の減少が続く。

 そして中心街は、ゴーストタウンと化している。多くのレストランや雑貨店が閉鎖され、荒れ果てた状態だ。市内の3割が空き地と言われ、朽ち果てた工場やビルが放置されている。

廃墟となったビル
廃墟となったビルが目立つ

 ホームレスや泥酔した男性が昼間から街をさまよい、人々はますますダウンタウンに寄りつかなくなる。

 「この街は、もう死んだよ」

 平日のダウンタウンの公園で、57歳のピーター・バイブルは、ベレー帽を目深に被って座っていた。何もすることがない。アルコール依存症からは立ち直ったが、仕事は週3日だけ。

 「この街は職がないし、レイオフの話題ばかりだ。若者に未来がないよ。財政が破綻しているから、学校教育なんてボロボロだからね」。そう言って、力なく笑った。

 「すべては、自動車会社から税金が入らなくなったからさ」

 眼前にはGMの巨大な本社ビル「ルネサンス・センター」が見える。だが、そのランドマークがデトロイトをさらに窮地に追い込もうとしている。

超高層ビルが廃墟に

 「GMが本社を移転する」

 そんな噂が出たのは、破綻の直前のことだった。豪華な外観の超高層ビルだが、ひとたび足を踏み入れると、人もまばらで閑散としている。改修費だけで5億ドル(約490億円)を費やしてきたビルだが、レイオフが続いたこともあって、オフィスの半分はもぬけの殻となった。そこでGMは、隣接するウォーレン市にある技術センターに、本社機能を移すことを検討している。

GM本社ビル
デトロイトの中心に位置するGM本社ビル

 ウォーレン市長は、既にGMに対して特別の税制優遇を提示した。移転後に購入した機械や設備の固定資産税を全額免除する、といった破格の待遇が盛り込まれている。

 “引き抜き”の事実を知ったデトロイト市長は、猛烈な反対運動を展開し始めた。ウォーレン市長の税制優遇を「猿知恵だ」と批判し、移転阻止に向けたロビー活動に走る。だが、米連邦破産法の適用申請で再建を目指すGMにとって、コスト削減効果があれば本社移転を実施する可能性は高い。

 そしてGMが去ることになれば、デトロイトにとって30年以上にわたる「地域復興」が挫折することになる。70年代、暴動などによって荒れ果てたダウンタウンを再開発するために、中心地に「ルネサンス(復興)センター」を建設した。そこに主要テナントとして本社を移したのがGMだった。

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著者プロフィール

金田 信一郎(かねだ・しんいちろう)

日経ビジネス副編集長。日経ビジネス記者(1990〜2006年)、ニューヨーク特派員(2006〜2009年)、日経ビジネス副編集長(2010年)、日経ビジネスオンライン副編集長(2011年)を経て、2011年9月から現職。

加藤 靖子(かとう・やすこ)

在米ジャーナリスト。中央大学卒業後、米ペース大留学。2008年から日経ビジネスニューヨーク支局編集部に勤務し、2010年から在米ジャーナリストとして活躍。2011年に米カリフォルニア州シリコンバレーへ移住し、経済、政治、社会問題を中心に取材・執筆を続ける。テクノロジー関連企業に強い。ホームページはこちら。ブログ「Pink Tech シリコンバレー」更新中。ツイッターアカウントは@Yasuko_Kato



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