ダウ・ジョーンズ工業株30種平均は、「ニューヨーク株」「ダウ平均」などとも呼ばれ、米国株式市場の代表的な指標として広く知られている。6月8日、その構成銘柄からゼネラル・モーターズ(GM)が除外され、1世紀以上にわたり米国の経済や文化をリードし、象徴として輝いてきた自動車産業が、ついにその姿を消した。
GM破産にも市場は冷静
ニューヨーク証券取引所近くの地下に、チャールズ・H・ダウ氏とエドワード・D・ジョーンズ氏がダウ・ジョーンズを設立したのは1882(明治15)年。当時の主要銘柄だった鉄道株を中心に平均株価を算出し、「午後の手紙」と題して投資家に届けたのが米経済紙「ウォールストリート・ジャーナル」の先駆けとなる。
「ダウ・ジョーンズ工業株平均」と銘打つのは1896年から。当初の銘柄数は1ダース(12)で、各社の事業内容は綿花油、砂糖、たばこ、ガス供給、牛馬飼料、電気、鉛、路面電車、石炭・鉄鋼、皮革、ゴムなどで、米国はまさに農業国から工業国への転換点にあった。現在の30種に銘柄数を増やしたのは1928(昭和3)年のことである。
ダウ平均の構成銘柄は企業の合併・買収などに伴って入れ替えが繰り返され、米国産業の栄枯盛衰の歴史を刻んできた。ゼネラル・エレクトリック(GE)は1896年に初めて銘柄入りして現在まで残る老舗銘柄(10~11ページの表)。GMは1915年に12種平均入り。クライスラーは1928年に30種平均入りしたが半世紀後の79年には脱落、IBMが取って代わった。
70年代以降、資源、化学、鉄鋼などの重厚長大産業から、大衆消費財、ハイテク、娯楽、サービス、医療、金融へと銘柄の入れ替えが相次ぐ。
現在の30銘柄のうち24銘柄が70年代後半以降の採用で、半数以上の17銘柄が90年代以降の新顔だ。戦前から続く長寿銘柄はGE、エクソンモービル、P&G、デュポン、ユナイテッド・テクノロジーズの5銘柄だけである。
こうして見ると、GMの転落は大事件には違いないが、産業構造の転換という大きな流れの末の必然だったとも言える。GMが連邦破産法第11条の適用を申請した6月1日、米市場がその事実を驚くほど冷静に受け止めたのはそのためでもある。
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