「ニュースを斬る」

ニュースを斬る

2009年6月16日(火)

「最初の感染地」メキシコの今

現地在住者が見た新型インフルエンザ

1/3ページ

印刷ページ

 6月11日、世界保健機関(WHO)は、新型インフルエンザの警戒水準について、最高度の「フェーズ6」宣言をした。これでパンデミック(世界的大流行)が発生したことになる。

 感染が始まったとされるメキシコでも、このニュースが流れた。筆者が見ているテレビは、新型インフルエンザで騒いでいた少し前の様子と、もはや誰もマスクを着けていない現在のメキシコ市を映している――。

 この2日前。メキシコ保健省は、6月9日付で、以下のような発表をしていた。

(1) 新型インフルエンザの感染が確認されたのは6241人で、そのうち108人が死亡。
 
(2) 108人の死亡者のうち51.9%が女性、48.1%が男性。全体の71.3%が20歳から54歳に分類される。感染者に占める死亡者の割合は1.7%である。
 
(3) 108人の死亡者のうち84.3%が咳および発熱の症状あり、74.1%に呼吸困難症状、56.5%は衰弱、50.9%に痰の症状、37.0%がメタボリック症候群、18.5%が心臓疾患、13.0%が喫煙者、8.5%に呼吸器系疾患、残りは感染症や免疫系の症状を持っていた。

当初、政府発表は混乱模様

 新型インフルエンザが最初に発症したのは、政府によると「3月11日、メキシコ市に住む成人男性」となっている。まさにインフルエンザウイルスが活発に活動していたであろう、4月10日と22日に、筆者はメキシコ市に滞在していた。

 その間、テレビも新聞も何も報道していなかった。空港もバス乗り場も何の対応もしていなかった。

 4月23日、自宅があるメキシコ・オアハカに戻るため、満席のバスに乗るが、誰もマスクなど着けている人はいなかった。

 誰もまだ知らされていなかったのだ。

 テレビで新型インフルエンザ(当時は豚インフルエンザと呼ばれていた)のニュースが多くの時間を占めるようになったのは、4月24日頃だった。青いマスクを着けて街を歩いているメキシコ市民、地下鉄の乗客もまたマスクを着けていたし、病院の大部屋に横になって酸素マスクを着けている女性、激しい咳をしている若い男性などの姿が映し出されていた。

 4月26日にメキシコ市が博物館や遺跡の一時閉鎖を始めたのを皮切りに、29日から全国にある170の遺跡が5月5日まで閉鎖になった。学校も4月28日から5月10日まで、すべて休校となった。

 それでも、5月1日のメーデーは小規模ながら決行された。

 キューバ政府は2日間メキシコ間の発着便を停止。続いてアルゼンチン政府もメキシコからの航空便を一時停止した。

 新型インフルエンザが猛威を振るい、死亡者がどんどん増えていった。4月26日時点で、メキシコ政府の保健大臣は新型インフルエンザの疑いのある死亡者数を103人と発表していた。

次ページ以降は「日経ビジネスオンライン会員」(無料)の方および「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみお読みいただけます。ご登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。




関連記事



Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)


Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント2 件(コメントを読む)
トラックバック

著者プロフィール

田澤 たつみ(たざわ・たつみ)

1952年宮城県生まれ。30年の書店勤務の後、気候の温暖なメキシコの地方都市オアハカに移り住む。小さな日本人宿「Casa del Cocotero(カサ・デル・ココテロ)」を経営。


このコラムについて

ニュースを斬る

日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、NBonline編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。

⇒ 記事一覧

ページトップへ日経ビジネスオンライントップページへ

記事を探す

  • 全文検索
  • コラム名で探す
  • 記事タイトルで探す

編集部よりお知らせ

日経ビジネスからのご案内