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何もない村が成し遂げた国家的プロジェクト

「神社の銅鏡は、どげんかならんもんじゃろか」で始まった「西の正倉院」建造物語

  • 宮嶋 康彦

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2009年6月19日(金)

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 宮崎県南郷村(現美郷町)は、明治、大正、昭和初頭と、林業で栄えた村だった。材木景気が去るとダム建設で口を糊した。公共事業にすがった一時代があった。それも過ぎれば、山の緑と蒼天が美しいばかりの、静かな村になった。村外に流出する人の数が増え続け、やがて過疎の村といわれるようになる。

 村の所在地を聞かれれば“椎葉村の隣、若山牧水の生家のそば”と説明してきた「何もない村」の住民は、諦観に甘んじるようになっていた。同じ「何もない村」でも、椎葉は、ないことを逆手にとって「秘境」で全国に名を馳せた。観光客は秘境へ、椎葉へなびく。大型バスが、県外ナンバーの乗用車が、南郷村を素通りしていった。

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 「神門神社(みかどじんじゃ)の銅鏡は、どげんかならんもんじゃろか、祖母の話じゃと、昭和の初めころ神門神社の銅鏡を研究に来た広瀬都巽(とせん)という学者は、ご飯を食べるのも惜しんで鏡を見つめておったそうな」

 神門神社の祭神の一柱は百済の王族、その貴人に由緒の銅鏡であれば貴重なものに違いない、そう考えたのは、当時、役場の企画観光課の原田須美雄(現63歳)だった。原田家は代々、神門神社の宮司の家系だった。幼少のころから、本家の長老から銅鏡が由緒正しい宝物と教えられていた。

 「村には『師走祭り』(旧暦12月)という、何百年も続いている祭りがあります。百済王族の父と子が1年に1度、再会を果たすというものです。神門神社から90キロ離れた木城町の比木神社には福智王という長男が祭られています。最近は2泊3日の行程になりましたが、むかしは9泊10日かけて子が父を訪問するという祭りだったのです。南郷村には、いわゆる百済が眠っているんです」

 この祭りの韓国の研究者の評価は「韓国国内では見られなくなった習俗を随所に確認できる」というものだった。禎嘉王を祀る神門神社は延岡藩、長男の福智王を祀る比木神社は高鍋藩、現在も、美郷町と木城町、こうした藩や町を越境して繰り広げられる祭りは、日本でも他には見られないらしい。文化庁は「きわめて珍しい貴重な文化遺産」として、国選択無形民族文化財に指定している。

正倉院の御物と同じ鏡が村の神社にあった

 原田は神門神社に伝わる銅鏡の評価を仰ぐために、国立奈良文化財研究所に電話をかけた。貴重な古代鏡ということは解っていたが、その価値については十分な理解をしていなかった。「村おこしの契機になれば見つけもん」と気安い問い合わせだったという。反応は意外だった。

 「ああ、宮崎の神門神社ですか、おたくの鏡はとても有名ですよ、国内でも三指に入るほどの鏡が伝世されていますね、論文などでは承知していますが実物を見てみたい」という返事だった。原田は、「思いのほか、すごい鏡だぞ」と色めき、小さいころ「じいちゃん」と呼び習わしていた長老が、古代鏡を讃嘆していた語り口調を思い出した。

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 銅鏡は一般に、出土品と伝世品(代々受け継がれる鏡)に大別される。神門神社の社宝33面は伝世鏡である。伝世の鏡を有する正倉院と八代神社(三重県神島)と神門神社は、三大伝世地といわれていることも知った。

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