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第10回 意見を通したいなら翻訳しなさい

  • 山田 ズーニー

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2009年6月22日(月)

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「上への持っていき方をどうしようか?」

大きな企画を通すようなとき、
先輩たちが、「上への持っていき方」に
あれこれ頭を悩ませていた。

新人のころの自分には、
それがばかばかしく思えてしょうがなかった。

「根回ししたり、画策したり、
会社員ってツライよなあ…。
場合によっては、企画を立てる以上の
労力と時間を使ってまで、
なんでそこまでして、上司の趣味・性格にすりよって、
神経すり減らさなきゃならないんだ」と。

しかし会社というものがわかるようになって、
「この作業を決してばかにしてはいけない、
むしろ尊い作業ではないか」
と思うようになってきた。なぜならそれは、

「翻訳」だからだ。

会社の文脈と、新人の文脈は、
常に大きくずれてせめぎあっている。

おなじ日本語と思いがちだが、
別世界の言語と言ってもいいくらいだ。

文脈とは、ここでは、
思考や行動の手続き、優先順位のつけ方、
それらをつなぎあわせたアウトプットの「脈絡」
というような広い意味で使わせてもらっている。

さらに、会社の上層部と一般社員の間でも、
恐ろしく文脈はちがう。

会社はチームになって利益をあげるという、
独特の変わったプレイをしている。

学生時代ボランティアをしていた
アルバイトをしていたなど、
「自分は社会参加をしていたから、そう違和感がない」
という人がいるかもしれない。

しかし、まず、無料でなにかやることと、
お金を取ってやることは、
どちらがいい悪いでなく、見る世界がまったくちがってくる。

たとえば無料でコンサートをやるなり、
なにかサービスをやるとして、
「それが、ただであれば欲しい、うれしい」
という人はいっぱいいるだろう。

しかし、「お金を払ってでも、それを欲しいですか」
となれば、人はぜんぜんちがった表情をみせる。

人間は、財布のひもをひらくとき、
ぐっと厳しい基準でものごとを見る。

身銭をきってでも欲しいとおもってもらうために、
仕事では、人の切実な要求にくいこんでいくような、
独特な思考のつかいかたをする。

つまり、「お金を払ってもらう域まで」人に役立ち・喜ばす

という、ふだんあまりしないことを、
会社では必死で考え続けている。
会社のゴールには「利益」がある。
学生と勝手が違って当然だ。

就職活動のエントリー
シートには、実に多くの若者が、
「人の役に立ちたい」 「ありがとうと言われたい」
と書いている。
しかし、「お金がもらえる域まで」ということは
だれも書いていない。

会社の誠意と、新人の誠意がくいちがうのは、
ここがポイントで、同じ「人を喜ばす」と言っても、
見ている領域はぜんぜんちがう。

会社では基本的に、
「お金がもらえる域まで」人を喜ばす
ことだけをやって欲しいのであって、
それ以外は、「とてもいいことだが、どうぞほかでやってくれ」
ということになる。

しかし、どうしたら、「お金がもらえる域まで」になるのか、
お金がもらえない域と、お金がもらえる域との境界はどこか、
なにしろ働いたことがない新人には、リクツではわかっても、
実際、そんなことに神経をつかってこなかったから、
実感としてわからないのだ。

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