昨年、世界は驚くべき事態を経験した。9月に米リーマン・ブラザーズが破綻すると、金融市場は事実上崩壊し、人為的な生命維持装置を装着しなければならなくなった。このようなことは1930年代の大恐慌以来だ。
今回の市場崩壊が特に注目に値するのは、それが外的要因ではなく、金融システムそのものによって引き起こされ、それが世界経済全体に波及したことだ。一般的に金融市場には自己修正する機能があると考えられており、これは完全に想定外だった。
今回のことで、市場に自己修正する機能がないことは明らかになった。だからといって、行き過ぎた規制緩和の反動で、過剰反応したくなる気持ちは抑えなければならない。市場は不完全だが、規制当局も官僚的で政治的な影響を受けやすい人間の集まりに過ぎない。新たな規制は最小限にとどめるべきなのだ。
金融改革へ3つの原則
金融規制改革を進めるうえでは、3つの基本原則を尊重すべきだろう。まず最も重要なのは、金融規制当局が資産バブルの肥大を防ぐ役割をきちんと果たすことである。米連邦準備理事会(FRB)元議長のアラン・グリーンスパン氏らは、市場がバブルを認識できないのなら、規制当局にも不可能だと主張してきた。そうだとしても、金融当局はバブルを防ぐ努力をしなければならない。結果はうまくいかないとしても、市場からのフィードバックによって政策が行き過ぎか不十分かは分かるはずだ。それに応じて修正すればいい。

次に、資産バブルをコントロールするには、マネーサプライ(通貨供給量)に加えて、信用供与も管理する必要がある。最もよく知られた手段として、委託保証金比率や最低自己資本比率を規制する方法がある。不動産バブルを防止する策として、規制当局は商業用と居住用不動産で融資比率を変えることもできる。
さらに規制当局は、従来型の規制手段を復活させる必要があるかもしれない。例えば中央銀行が民間銀行に対して、不動産や消費者金融といった過熱する懸念のある特定のセクターへの融資を規制していた時代には、金融危機は起こらなかった。中国は今でもこうした措置を実施しているほか、民間銀行が中央銀行に預けるべき最低預金額も定めている。
グリーンスパン氏が早々とバブルだと認識していたにもかかわらず、全く対応を取らなかったIT(情報技術)バブルの時はどうだったか。彼が対応手段としてマネーサプライの引き締めでは乱暴過ぎると考えたのは正しい。だが株式を使ったレバレッジの拡大がバブルに拍車をかけていたことを考えれば、証券取引委員会(SEC)に新株発行の禁止を求めるといった、より的を絞った対策を実施できたはずだ。
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