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岐路に立つアメリカの金融ビジネス

オバマ金融規制改革への期待と不安

  • 竹中 正治

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2009年7月6日(月)

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妻 「あなた、今月はもう乗り切れないわよ。住宅ローン、自動車ローン、ガス代、電気代、もう払えないわ。クレジットカードも限度いっぱい使っちゃったし」

夫 「ベイビー、俺に任せとけ。とっておきの手があるぜ。こうすると政府が救済してくれるってさ」

 そう言って夫は自分の家の屋根に「BANK」と書いたでかい看板を掲げた…。

 どの雑誌だったか、あるいは新聞だったか覚えていないが、こういうアメリカの4コマ漫画が昨年あった。「金融機関の連中は高給をもらっているのに、政府の公的資金注入で金融機関が支えられるのは納得いかない」という反発は、今のアメリカに限らない。日本でも銀行の不良債権危機の時期に繰り返されたことだった。

 これはバラク・オバマ米大統領も様々なスピーチでとても気を使っている点で、「我々の目的は金融機関を救済することではない。アメリカ経済を回復するために欠かせないファイナンスの流れを回復させるのだ」と繰り返し強調してきた。

 公的資金注入による支援問題の議論で必ず持ち出されるのが「大き過ぎて潰せない(too big to fail)」である。実際に財務省の総額7000億ドル(約70兆円)の不良資産救済プログラム(TARP)による公的資金注入先一覧を見ると、公的資金注入対象先は延べ600社を超える。つまり実際は「多過ぎて潰せない(too many to fail)」でもあるのだ。

 この「大き過ぎて(多過ぎて)潰せない」ということの経済論的な本質は何だろうか。合理的に正当化できることなのだろうか。まずこの点から考えてみよう。

信用ネットワークとは生物の細胞組織のようなもの

 以前の論考で取り上げたが、経済学に「外部性」という概念がある(2009年4月30日、ニュースを斬る「米ドルが凋落するってホント?」)。ある経済主体の選択(行動)がほかの経済主体に便益をもたらす場合には「正の外部性」があるという。反対に害やコストをもたらす場合には「負の外部性」がある。

 企業が排出する汚染物による公害は「負の外部性」の典型だ。困ったことに、負の外部性が大きな財やサービスは、当該経済主体がその社会的なコストの一部(他者の受ける損害)を免れているので、その分だけ過剰に供給される。

 また「ネットワークの外部性」という言葉を目にされたことがあるだろう。電話や電子メールなどのコミュニケーション手段は、利用者が1人の場合、価値はゼロであるが、加入者が増えるにつれ便益(プラス価値)が生まれる。そのプラスの価値はある一定規模を超えると急激に増大する。コミュニケーション手段に限らず、財、サービス、情報、資金を相互にやり取りするために人間が形成するネットワークは、ほとんど皆規模(参加者の数)に応じた正の外部性を生み出すようだ。

 金融システムもそうしたネットワークの正の外部性に支えられたものだ。このネットワークの中では多くの主体が「他者から借りられるから、別の他者にも貸す」「他者から返済を受けられるので、別の他者にも返済できる」という相互依存を形成している。この信用ネットワークが十分に大きくなることで得られる便益とは、経済活動に必要なファイナンスがいつでも(一定の要件を満たすことを条件に)利用できることだろう。

 自動車を買う時にはオートローン、住宅購入には住宅ローン、様々なショッピングにクレジットカード、企業の場合には短期・長期の運転資金から設備投資資金まで、現代ほどファイナンスの利用可能性(availability)が社会全体に拡大した時代はない。

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