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新疆ウイグル「純粋な悪魔はいない」

中国当局の民族政策が破綻した

2009年7月16日(木)

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 「胡錦濤が主要8カ国(G8)サミット出席を打ち切って帰国するのは、漢族がウイグル族に反撃し始めたからだ」

 7月8日正午、中国共産党幹部で外交を担当してきた知人から、こんな携帯メールを受け取った。5日、新疆ウイグル自治区ウルムチでウイグル族による暴動が起きた(「7・5」事件)。7日には、ウイグル族の行動に不満と怒りを爆発させた漢族が反撃に出た(「7・7」事件)。イタリアを訪問中で、G8首脳サミットに出席予定だった胡錦濤国家主席は異例のドタキャンを決断。それはウイグル情勢が「民族対立」の様相を呈したからにほかならない。

 ほぼ同時間、ウイグル族の友人から同じく携帯にメールを受け取った。

 「国内メディアの報道は信用するな。自分の頭で考えてくれ。当局はラビアの陰謀だと世論を誘導する気だ。この世に純粋な悪魔などいない」

仮想敵を作り、世論を誘導する

 180人以上の死者(中国当局統計)を出した「7・5」「7・7」事件。中央政府は「ウルムチで起きた暴力犯罪事件は、組織的に実行された陰謀だ。ラビアを中心とした『世界ウイグル会議』などの海外組織が裏で計画、指揮、先導した」というスタンスをすぐに固めた。中国メディアの関連報道はこのトーンで一致していた。

 ラビアとは、ラビア・カーディルという女性。ラビアは新疆ウイグル自治区で実業家として成功し、中国人民政治協商会議委員を務めた経験を持つ。2005年に米国へ亡命した後は、世界ウイグル会議の議長として、中国におけるウイグル人の人権擁護を訴える活動を行っている。

 中国メディアは、ラビアがどれだけ悪者かという報道を多角的に展開した。北京在住の知り合いの記者は「党の方針と異なる一切の報道は許されなかった。私の書いた原稿はボツになった」とため息をついた。

 世論は「打倒ラビア!」一辺倒となった。

 筆者は、昨年北京五輪を前にチベット自治区のラサで勃発した「3・14」事件を思い出した。当局のウルムチとラサへの措置は似通っていた。「仮想敵」を仕立て上げ、国民の注意をそちらに誘導する。ナショナリズムを煽り、党の権力基盤を強化するという政治。

 「民族団結」のため、共産党にとっては唯一の選択なのだろう。それに伴う莫大な政治リスク・コストはやむを得ないといったところか。

 昨年と異なるのは、外国人記者が限られた地域ではあるが現場取材を許可されたことだ。中国メディアは「『3・14』から『7・5』へ、西側メディアの対中報道は偏見に満ちている」と国民を煽る。

経済成長と優遇政策の矛盾

 中国当局が現在実施している民族政策は1980年代にさかのぼる。ソ連やユーゴスラビアなど社会主義国のモデルを参照した。『中国少数民族政策及び実践』白書によると、中国には明確な成文としての「民族政策」がある。「少数民族」であることが身分証に明記される。「民族区域自治制度」を設置し、自治区・自治州において「民族」を主体に政策が遂行される。つまり、民族の差別化がガバナンスの出発点になっているということだ。

 80年代の国家指導者たちは、少数民族に一定の優遇を与えることで民族間の平等を実現しようとした。人口の90%以上を占める漢族と少数民族にダブルスタンダードを設け、分割統治を行ってきた。少数民族は、子供を1人以上産んでもいい、大学試験で加点される、犯罪が軽罰化される、納税額が少ない、などの優遇を受けてきた。自治区内の国営企業、大学、軍における漢族の割合が60%を超えてはならないという規定も設けられた。

 就業機会が国家によって配分され、中央が社会のあらゆるリソースをコントロールできた時代、分割統治は機能した。国民は貧しく、「超国民待遇」を得た少数民族は満足だった。漢族も不満をあらわにすることはなかった。民族問題は突出しなかった。

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「新疆ウイグル「純粋な悪魔はいない」」の著者

加藤 嘉一

加藤 嘉一(かとう・よしかず)

国際コラムニスト

現在米ハーバード大学アジアセンターフェロー。世界経済フォーラムGlobal Shapers Community(GSC)メンバー。中国版ツイッター(新浪微博)のフォロワー数は150万以上。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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