• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

逆境を逆手に直販でブランド作り

「人様に毒を売るわけにはいかない」の想いを形に

  • 吉永 利夫

バックナンバー

2009年7月23日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 水俣は海の町。水俣を知らない人々にとって、「海」は水俣の強烈なイメージになっています。そのイメージは、いまだに汚れたヘドロのある、灰色の海のイメージかもしれません。

 水俣の漁師は長い間、多くの苦悩を抱えてきました。今もなお、その苦悩は変りません。一方、海に真っ向から向かう人もいます。

画像のクリックで拡大表示

 杉本栄子さんもその1人でした。水俣市の南にある茂道(もどう)という小さな漁村に、杉本さんは暮らしていました。網元の娘として、胎児性患者が集う福祉施設「ほっとはうす」の理事長として、そして水俣市立水俣病資料館の語り部の中心的存在として暮らしていた人です。栄子さんが他界して1年が経ちました。

 享年69歳。昨年、3月1日の葬儀には私も行きましたが、栄子さんの他界は、新聞紙上での訃報はもちろん、テレビでも大きく報道されました。杉本さんが、並の漁師ではなかったことを改めて認識しました。1000人以上の参列者が集い、送る人々の想いが詰まった葬儀でした。

いじめられた子供たちにも勇気を与えた「語り部」

 網元に生まれた栄子さんには、親方としての気質が元来備わっていたように思います。母親が発病し、父親を劇症の水俣病で失いました。小さな集落の中で「奇病」を背負い、商売道具の漁網を破られるなどの差別や偏見に耐えてきました。栄子さんが「語り部」として語る話に心を打たれ、自宅を訪れる人も絶えませんでした。

 栄子さんの語りは明るかった。経験した苦労や人には見せない病のことの、何百分の一を語っていただけに過ぎないのでしょうが、「水俣病は授かりもの。のさり(神様からのいただきものの意)だ」「人様が変わらないなら、自分が変わろう」――など、被害者とは思えない強烈なメッセージを発していました。「勇気をもらった」。いじめを経験した子供たちの多くもこう回顧しています。

みかん畑から水俣の海を望む(写真:編集部)

 栄子さんやその家族は、みそ汁のだしに使うイリコ(カタクチイワシ)漁を生業としていました。昔は網元制度によって多くの網子を抱え、5艘の船を操り、魚を追っていたと言います。今は魚群探知や網揚げに機械を使い、3艘の船に3~4人が乗り込んで操業しています。栄子さんの遺志を継ぎ、漁を続けているのは、前回も紹介した息子の肇さんです。

 捕獲してゆでたイリコは、腹が赤くなることがあります。そうなると商品価値が下がるため、多くの場合、薬品処理をして色変わりを抑えます。それに対して、杉本さんたちは添加物を使いません。杉本家のイリコは天日干しである上に、ゆで方にもこだわっています。

15年前まで「水俣産」とは明記できなかった

 水俣産の魚介類を販売することは、長い間、非常に困難でした。杉本家のイリコも15年前までは「水俣産」とは明記できず、産地の限定をしていませんでした。「食べ物で苦しんだから、人様に毒を売るわけにはいかない」という栄子さんの想いが、無添加の食品作りを続けさせました。

 杉本家が無農薬の甘夏みかんを作り続けているのも同じ理由です。無農薬みかんの栽培は周りからは笑いモノになっていました。「ガサクレ」と呼ばれる、見かけの悪い、一般市場では商品価値のないみかんを作っていたからです。それでも、栄子さんは意に介さず、甘夏みかんの手入れをしていた姿が、今でも脳裏に浮かびます。

コメント0

「「水俣病でメシを食え」」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

「絶対これしかありません」というプランが出てきたら、通しません。

鈴木 純 帝人社長