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世界500兆円の財政出動は誰を救う?

新しい国家資本主義の果て

  • 濱田 康行

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2009年7月27日(月)

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 世界金融危機は世界中の政府・中央銀行にフリーハンドを与えた。危機が100年に一度かどうかはまだ分からないが、少なくとも現在、各国の政府や中央銀行が危機対応として実施している諸政策の多くは異例の措置であり、かなりの程度、資本主義の原則を逸脱している。

 米国政府は、リーマン・ブラザーズを救わなかったが、保険会社のAIGについては株式を収得し国有化した。そして、かのクライスラー、ゼネラル・モーターズ(GM)も同様の扱いである。しかしここまではサプライズではない。国有化などは世界史の中ではありふれた話だからだ。もっとも、ある企業は救い、他のある企業は救わないという基準は曖昧でわかりにくい。米国でもかなりの議論・疑問があったが、政府の説明はAIGは保険会社で社会に与える影響が甚大だということだが、説得力はあまりない。リーマン・ブラザーズの破綻でも、米国社会どころか全世界に大きな衝撃を与えた。日本でも、日本債券信用銀行と足利銀行が同じ時期に破綻したが、事後処理の仕方は大きく違っていた。足利は株主責任が問われて、株券の価値がなくなり“紙”となったが、日債銀はそうではなかった。「なぜ、処理の仕方が違うのか」と、当時の栃木県知事や宇都宮の市長が抗議したのが記憶に残っている。

中央銀行の中立性さえ逸脱

 今回、世界中で展開した救済劇に特徴的なのは、(1)救済策のバラエティ。それこそ何から何まで。(2)用意した金額が巨額。あとで問題にするが、財政問題を引き起こす規模。(3)財政当局だけでなく中央銀行が参加している。中央銀行の中立性が危ぶまれる事態。以上の3点である。

 政府の行った救済劇は、(1)先に述べた国有化、つまり国が筆頭株主、あるいは大株主になる、(2)銀行の不良資産の買い取り、(3)銀行への公的資金の注入、(4)株式の買い支えに大別される。日本の場合、(1)について言えば、一度、民営化を宣言したはずの政府系金融機関を復活させて、緊急融資・投資を実施した。具体的に言えば、日本航空に日本政策投資銀行から600億円(これは金融危機対応措置のひとつとして)、半導体メーカーのエルピーダに300億円の投資(産業再生法の改正に伴う措置)である。

(通称、産業再生法は2009年4月に3度目の延長・改正がなされ、大企業への直接投資、官営ベンチャーキャピタルの設立などが可能となった。当初はパイオニアにも投資が予定されていたが、延期になった。)

 政府が一企業に直接出資するという異例さだが、これは別名「電機業界救済法」とも呼ばれる通り、特定の業種、特定の企業を対象にしている。法律の適用には、売上高が20%以上減少、民間金融機関の融資が単独では難しいなど条件があるが、注目すべきは従業員5000人以上と明言していることだ。露骨な大企業救済なのだが、その理屈がない訳ではない。このまま放置すると、日本を代表する基幹産業がダメになる。それを何とかするのだから“国益”というわけだ。しかし、ここで突然、国益が出てくるのもおかしい。

 融資については、日本航空の他、トヨタを除く自動車産業の名前があがっている。銀行をつぶせば、社会的影響が大きいという理屈は金融危機の折、ずいぶん主張されたが、それが単純に一般製造業に展開した。しかし、金融業の公共性については理論上の根拠もある(濱田康行著『金融の原理』P.244、「銀行の“公共性”について」、北海道大学図書刊行会、1999年)。

 一般製造業にはそれはない。ないのが資本主義である。だから今回の措置は脱資本主義である。しかし、世間の論調はおおむね賛成のようだ。

 日本経済新聞のコラムも「大企業が倒産すれば雇用が減り、経済全体に悪影響を及ぼします。さらにその企業の持つ人材や技術、ノウハウなどが散逸し、失われてしまう可能性があります。そうなれば、景気が回復しても、もう一度同じ企業体を作り出すのは困難です」と指摘している(4月27日付)。

 しかし、この引用が主張する論理上では企業はすべて公共性を持つ。かつて運悪く倒産した企業で、それが人材やノウハウを持っていた企業は無数にある。でも誰も助けてくれなかった。

 問題は先にある。政府が出資したからといって、政府が企業を救えるのか。融資であろうと投資であろうと企業に資金が入るのだから一時的に資金フローの状況が良くなり危機を脱することはあるだろう。しかし、政府に電機メーカーを運営するノウハウがあるわけではない。産業再生機構が最初に扱ったのはダイエーだが、その後の推移をみても、まだ成功とはいえない。

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