一転二転、三転四転と混迷を極める政局、先行きの見えない経済情勢。そんな状況下でも、政策提言から外れた国際情勢や、国が晒されているリスクを分析し、淡々と首相にレポートしている組織がある。内閣専属の情報機関を抱える内閣官房である。
その内閣官房で、主にマクロ経済を専門として情報分析を続けている参事官が、混迷の最中にあえて口を開いた。藤和彦参事官だ。
止まらぬ北朝鮮のミサイル発射や、終わりの見えない経済危機に、「世界大戦へとつながるリスクがある」と警鐘を鳴らした上で、グローバリゼーション一辺倒の日本経済に、「内需主導の成長を」との提言も披瀝する。
―― 北朝鮮の威嚇が止まりません。7月4日には日本海に向けて計7発のミサイルを撃ち込みました。国家規模のリスク分析を担当する立場として、どれほどのリスクがあると見ていますか?
1960年名古屋市生まれ。84年早稲田大学法学部卒業後、通商産業省(現経済産業省)へ入省。大臣官房、産業政策局、資源エネルギー庁、中小企業庁、石油公団などで勤務。2003年、内閣官房へ出向、現在経済担当の内閣参事官として、首相向けの情報収集、分析に携わる (写真:陶山 勉、以下同)
藤 2006年7月、3年前に同じようにミサイルを発射して、それから核実験なるものをやったのですが、思い起こせばその時は世界がバブルの絶頂期だったんですね。
当然のことながら関係国も鷹揚に構えられたし、いざとなったら軍事手段を投入するぞという構えがあったのですが、昨年9月の「リーマンショック」以降、関係国すべてが経済不安で悩み、財政的な余裕がなくなっている状態です。
ですから、責任を持って、この朝鮮半島のリスクをコントロールしようとする国が無いのではないか、というのが最大の懸念です。
―― 一体、北朝鮮国内では何が起きていると分析していますか。
藤 ミサイルの発射や核実験も含めて、やはり改革派の動きをあまり嬉しいと思ってない連中がやっているんじゃないかと一般に言われています。これは、米国が対話に乗って来ないからです。
―― クリントン米国務長官は最近のインタビューで、北朝鮮を「手に負えない10歳代の子ども」と評しました。やはり、北朝鮮は業を煮やしているのでしょうか。
藤 心配なんだと思います。彼らからすれば、いつ米国にサージカルアタック(外科手術的な先制攻撃)をされるか分からないという恐怖がある。だから、何とか早く米国に対話で安全保障を確保してもらいたい。そうしないことには改革開放もできないと。
実際、中国にしても、まず1978年に米国と平和条約を結んだ後に、改革開放をやっているわけですね。それを北朝鮮もよく見ていますから、まず米国との関係の正常化を行って、そこから初めて改革開放だと。
それを、じっくりやればいいと思っていたのが、何がしかの前倒しをしなければいけない理由が出てきたということじゃないでしょうか。その理由が、金正日さんの健康問題ではないかというのが、今、一番有力な説ですよね。
本当に金正日総書記は息子に継承させたいのか
―― 健康問題と前後して、後継者問題も取り沙汰され、三男の金正雲氏が後継者として正式に内定したとの報道もありました。
私は懐疑的に見ています。決まっているなら、あんなに対外的なドタバタ劇をするのかなと。たぶん、まだいろいろな勢力がうごめいていて、そのうちの1つのグループが韓国メディアを利用して、対内的にアピールしているんじゃないかという気がします。
というか、もっと言っちゃいますと、本当に金正日が息子に王位継承をさせたがっているのかすら懐疑的です。そうなのか、本当はまだ誰も分かってないんですよね。こんなひどい状況で息子たちに継がせたくない、こういう辛いことは自分限りにしておきたいと金正日総書記が思っている可能性も排除できないのではないでしょうか。
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