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低利融資が家計崩壊を招く

日本版サブプライムの悪夢

  • 加藤 修平,飯泉 梓

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2009年7月28日(火)

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 「もう払えない」

 東京都内に住み、住宅設備の販売会社に勤める40代の男性は頭を抱えた。悩みの種は住宅ローンの支払い。既に延滞期間は2カ月を過ぎた。3カ月以上支払いが滞ると預金凍結などの措置が施される可能性がある。もはや一刻の猶予も残されていなかった。

 念願のマイホームを購入したのは12年前の1997年のこと。返済計画には無理がないように思えた。

 購入価格は約4000万円で頭金は500万円を用意。3500万円の住宅ローンは毎月12万円、ボーナス時には15万円を支払う予定だった。給与の手取りは月額30万円を超えていたうえに、妻のパートタイムによる収入も約10 万円あった。

借入先は計9社に

 最初の歯車が狂ったのが、購入から2年が経過した時だ。勤めていた会社が倒産。転職の結果、年収は200万円ほど減り、月額で手取りは20万円ほどに。その後、やり繰りしたものの、昨年からの景気悪化が家計をさらに圧迫。生活費を補うために消費者金融など8社を加え、借り入れ先は合計9社に。住宅ローン以外の支払いが毎月20万円以上に膨れ上がった。

 住宅ローンで家計が破綻するケースが増えている。相談を受け付けるアディーレ法律事務所の石丸幸人代表は言う。

 「金融危機の余波が企業からついに個人にまで押し寄せてきた」

 家計に占める住宅ローンはかつてないほどまでに重しとなっている。

競売申立件数の推移

 総務省の「家計調査」に基づいて第一生命経済研究所が試算したところ、世帯主が働いている世帯では、収入から税や社会保険料を除いた「可処分所得」のうち住宅ローンの返済に回る額の割合は、2008年11月に8.5%と過去最高になった。低金利が続くとはいえ、家計が抱える住宅ローンは過去最高の水準で推移している。

 実際に住宅を手放す人も多い。住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)によると、2008年度の競売件数は前年度より35%多い1万6577件で、過去最高。2007年に支援機構に独立行政法人化する際、競売の申立業務が滞り、2008年にしわ寄せされたという理由もある。だがそれを差し引いても増加傾向にある。担当者は「これから増える可能性はある」と指摘する。

政府の優遇策が落とし穴

住宅金融支援機構
住宅金融支援機構は償還期間が最長50年の「フラット50」も用意した(写真:辻 牧子)

 なぜ住宅ローンがここまで家計を圧迫しているのか。背景にあるのは賃金カットと、これまでの住宅購入の優遇策だ。厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、5人以上が働く事業所の1人当たり現金給与総額は2008年に毎月33万1300円。2000年に比べて6.8%も減った。戦後最長の景気回復でも住宅ローンを払う原資となる賃金は増えなかった。それだけでなく、一昨年からの景気後退で給与は減り続けている。その一方で、低金利を売りものにする住宅ローンは住宅購入を後押しした。米国では信用力が低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)の破綻が広がり、世界同時不況の引き金となった。その日本版とも言える現象が起こり始めている。

 火種の1つが支援機構が1982年から始めた段階金利型の融資だ。住宅着工が低迷した98年に年2%と最も低い金利プランを設定。「最初に後々、金利が上がると説明した」(住宅金融支援機構)。それでも低金利に引かれて家を購入した人は多いと専門家は指摘する。10年後の2008年、金利は2倍の年4%に引き上げられ、景気後退と相まって債務者の負担が増加した。

 支援機構が扱う「フラット35」は民間金融機関が融資し、その債権を機構が買い取ってMBS(資産担保証券)を発行する仕組みだ。債務者の破綻リスクがMBSを買った投資家に転嫁される点では、サブプライムローン危機を世界中に蔓延させた証券化と全く同じだ。住宅ローン保証では、米政府が管理下に置く連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)などと同じリスクを抱える。

低金利ローン競争が過熱

 実際に返済が滞ってしまった際にはより金利が安い、変動金利タイプのローンに借り換えることが多い。

 しかし、変動金利はリスクも大きい。

「銀行は金利変動のリスクをもっと顧客に説明すべきだ。変動金利のローンは足元の金利が低いから、借入額が大きくなりがち。金利が上がると、返済が難しくなる人が一気に増える」。コンサルティング会社であるA.T.カーニーの辻井隆司パートナーはこう警告する。景気対策に伴う国債の大量発行が長期金利の上昇につながり、住宅ローンを直撃するリスクはくすぶる。

 その一方で、銀行は競い合うように安い変動金利プランを設定している。

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