7月の東京都議会議員選挙の投票率は54.8%で、前回の44.0%から10ポイントも上がった。今回の都議選は政権交代のかかった次の総選挙の「予備選」の雰囲気となり、有権者の関心が高まったからだろう。
実際、有権者は対立の構図が鮮明な選挙を望んでいるのだと思う。小泉首相が郵政民営化に政治生命を賭けて打って出た2005年の総選挙の投票率が66.3%と前回の57.9%から跳ね上がったのも、争点、対立軸が鮮明だったからだ。一部の論者は、これを「小泉劇場」と揶揄したが、有権者が望んでいるのは対立軸の鮮明化なのだ。
たとえ反対意見の有権者の支持を失っても、政治家が旗幟鮮明に政策原理、ビジョンを掲げて選挙戦を展開することを多くの有権者は望んでいる。ところが肝心の政策原理、ビジョンの対立軸が一向に見えてこない。
A党、B党、どっちが自民、民主?
表にまとめたマニフェスト比較を見ていただきたい。これは2005年の総選挙の際にYahoo! Japanが各党のマニフェストを要約、比較した「選挙に行こう!2005衆院選」から自民党と民主党の政策の見出しを一覧にしたものだ。郵政民営化問題だけは抜いてある。
| A党 | B党 | |
|---|---|---|
| 景気・税制 ・財政改革 |
国の直轄公共事業を抜本的に見直し | 2007年度に消費税含む税制抜本改革 |
| 政治改革 | 選挙制度改革と法整備、国会議員定数を1割以上削減、国家公務員の人件費2割削減 | 憲法改正草案へ、国民投票法成立を、政治資金規正法を改正 |
| 年金 | すべての年金の一元化 | 公務員とサラリーマンの年金制度の統合 |
| 雇用 | パート労働法改正 | 若者の自立・挑戦のためのアクションプランの強化・推進 |
| 医療 | 医療制度の改革、がん予防・治療の体制整備 | 新医療制度改革法案を次期国会に |
| 教育 | 義務教育終了年齢までの子ども手当を支給、子ども園(仮称)の創設 | 児童手当・子育て支援税制を検討、幼児教育の無償化 |
| 環境・安全 | アスベスト被害への対策・制度を確立、地方警察官の増員 | 温室効果ガス6%削減約束の達成、アスベスト被害への新規立法 |
| 地方 | 抜本的な地方への税財源の移譲 | 三位一体改革の推進、道州制導入の検討を促進、集中改革プランにより地方行革を推進 |
| 外交 | 国立追悼施設の建立、自衛隊のイラク撤退を12月までに、日中関係再構築、日韓関係強化 | 自衛隊法の改正、防衛庁を防衛省に、北朝鮮拉致問題の解決に全力 |
あなたはA党とB党、どちらが自民党でどちらが民主党か分かるだろうか。街頭アンケートをすれば、大半の人が迷うと思う。筆者もこれを見せられたら、「三位一体」とか「防衛庁を防衛省に」とかの用語法の違いでかろうじて区別がつくだけだろう。
今回の総選挙では自民党のマニフェストがまだ公表されていないが、政策原理やビジョンの違いは不明瞭なまま、「政権交代」という政治ドラマだけが独り歩きしている。2005年が「小泉劇場」だったと言うなら、今回の盛り上がりは「自民党没落劇場」に過ぎない。
確かに自民党の現状については筆者もうんざりしている1人だ。何らかのビジョンを掲げて総裁選に立候補した人を総裁に選び、その総裁を与党として首相にした以上は、首相と内閣のビジョンの実現に向けて結束して働くのが議院内閣制での政党だと思う。
ところが、首相の人気が落ちるとたちまち足を引っ張り、3年間で3人目の首相・総裁というのは(もう少しで4人目の総裁までいくところだった)、どう見ても政党として機能障害に陥っている。
しかし一方で、自民党と民主党のどちらを見ても、最大公約数の要望を満遍なく満たそうとするような総花的で、区別のつかないマニフェストにうんざりしてきた。
なぜそうしたことが続くのか。
「情緒」に支配された日本の政治
資本主義か社会主義かを問うた時代が昔のこととなり、先進国の大政党の政策がある程度似たものになるのは日本だけの傾向ではない。米国や西欧でも同じ傾向は見られる。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。










