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「ここにお嫁に来たい」と言わせた村

助成金なし、「先進地視察」なしで始めたからうまくいった

  • 吉永 利夫

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2009年7月30日(木)

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 水俣には「逆境を逆手に取る人々」が居ます。農業にも水産業にも、まちづくりにも。そんな中でも「村丸ごと生活博物館」はたいへんユニークなものです。

 いまや、日本だけでなく、ベトナムなどにまで広がりを持ってきた「地元学」がその発端です。「地元学」は、吉本哲郎氏の提唱による「地域見直し」の考え方です。ここで、「地域活性化」などと書けば、「活性化って、何な?」と、吉本氏は突っ込んでくることでしょう。

学芸員は村の元気なおやじたち

 「村丸ごと生活博物館」とは、何も無い、どこにでもある、親類しか来ない村を丸ごと「博物館」に見立てたものです。学芸員は村の元気なおやじたち。インストラクターは熟練の生活技術を持つ、おばさん、おじさんたち。レストランとなった地区の公民館には、シェフのお母さんたちが居ます。吉本氏の独創は「村の活性化」とは呼ばずに「村丸ごと生活博物館」と呼んだこと。村を案内すると、1人1000円を訪れた人たちからいただく仕組みを創ったことです。よく言われる「人、もの、金」をつなぎ合わせたアイデアといえるでしょう。

吉本哲郎氏。著書に『地元学をはじめよう 』(岩波ジュニア新書)ほか。(写真:宮嶋康彦、以下同)

 「哲ちゃん」こと吉本哲郎氏は、一昨年まで水俣市の職員でした。その語り口から、とても市職員とは思えない人です。海辺の水俣病被害者のことしか知らなかった私に、「山にも人が住んどる」と教えてくれた人でもあります。もちろん山間部にも集落があり農業があり、人々の生活があることは、私も知らなかったわけではありません。魚を行商ルートで食べていた人の話も聞いていました。でも、「知っている」ことと、「理解している」ことは全く違うことに気付かされました。

 もう15年以上も前の話になりますが、何かのきっかけで吉本氏の自宅を訪問しました。部屋の壁には一面スライド写真を納めた分厚いファイルが並べられていました。そのファイルを開いて、次から次に見せられる水俣は、私の知らない水俣ばかりでした。静岡市の生まれで、20歳で初めて水俣に来た私にとって、水俣は「水俣病」一色だっただけに、驚きでした。

 その頃はまだ「地元学」という言葉は聞いていませんでしたが、「村の生活は、基本的に縄文時代と同じ」という話が耳に残っています。豆を粉にして食べる。たけのこを様々に使いこなす村の料理法。水のあるところに人が住むこと。墓をどこに、神さんをどこに据えるか。太陽と水が、村の暮らしを決める――。あれこれ聞いていれば、家の周りに植えてある植物の話だけで半日が終わってしまうほどの内容でした。

 市役所を退職し、自由人になった氏の風貌と行動範囲は、世界に広がっています。「地元学」の手法をたずねられ、文字通り東奔西走の毎日です。「あるもの探しと、ないものねだり」「答えではなく、問題を探せ」「村の流儀を理解しろ」。吉本氏の言うこれらの言葉に、地元学の真髄があるように思います。

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 「日本一の泉質」と呼びたくなるほど上質の温泉が湧く「湯の鶴温泉」の上流に、頭石(かぐめいし)地区があります。平家の落人の子孫が住むこの集落から「村丸ごと生活博物館」が実際に動き出しました。村の全世帯が参加することが条件でした。村の景観を守り、村を守る機運がこれで生まれたに違いないと思います。何より全世帯参加が要です。

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