「児玉博の「見えざる構図」」

政権交代に踊る前に、違憲状態に「×」

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2009年8月5日(水)

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 青色LED(発光ダイオード)訴訟で原告の中村修二氏の代理人を務めた升永英俊弁護士や企業法務で著名な久保利英明弁護士が中心となり、「一票の格差」(国会議員1人当たりの有権者数の格差)見直しを求める「一人一票実現国民会議」が立ち上がった。

 7月28日に日経ビジネスオンライン連載「久保利英明の日本人はバカなのか!?」の記事で触れたように、升永弁護士は米国留学時代、米国が1票の価値の平等を徹底する姿勢を目の当たりにした。そこに米国の根幹である正義とフェアネスの精神を守り抜く気概を感じ、衝撃を受けた。

 翻って日本は半世紀以上、一票の価値の平等をないがしろにし続けている。その元凶に、最高裁判所が違憲判決に躊躇する態度がある。そう判断し、一人一票実現国民会議を結成し、次の総選挙で行われる最高裁判所裁判官国民審査で、合憲判断した最高裁判事を罷免にすべく動きだした。

 升永弁護士にその狙いを聞いた。

(日経ビジネスオンライン編集部、聞き手はノンフィクションライター児玉 博)

 ―― 現在の有権者の一票の格差が衆議院で最大2倍強、参議院で同じく4倍強の開きがあります。升永さんにとっては、この格差は看過できない。

「一人一票実現国民会議」設立の記者会見に臨む升永英俊・弁護士
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 升永 まず「一票の格差」というよりは、「一票の不平等」ということです。格差というと、例えば2倍以内ならいいのか、という誤解を招いてしまう。本来は一票の価値は皆、同じであるべきというのが私の信念。価値が平等でない今の状況を説明するのには、一票の不平等という言葉を使っていきます。

 民主主義国家であることを保障するためには、一票の価値は平等であるべき、というのが私の信念です。同じ日本人なのに、住んでいるところが違うだけで、「あなたは1票を持つが、あなたは0.2票分しかない」というのは、どう考えても民主的ではない。こうした差別を、性別や年齢の違いでされたらどう思いますか。

 例えば、男性は1票だが女性は0.9票の価値しかない。50歳以上は1票を与えるが、50歳未満には0.5票しか与えない。それぞれが逆で考えてもいい。こうした差別をされれば、誰だっておかしいと思うはずです。私が50人近い人に、「女性の方が男性より投票価値が低いとしたらどう思うか」と尋ねたら、女性に限らず男性も含めてすべての人がおかしいと答えました。

 民主主義の根幹は、国民一人ひとりの権利が平等に保障されていることです。憲法14条第1項には「すべての国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」とあります。

 ここに住所がないから、住所の違いでは差別して良い、とはならないでしょう。一票の価値は、性別、年齢そして住所に違いがあっても、平等である必要があるのです。「一人一票」の保障は、民主主義国家の基本です。

 ―― 年齢や性別で例えられると、一票の格差問題の重大性を認識できますが、一方でこれまでこの問題に対する国民の関心は低いようですが。

 升永 こういうたとえは、どうでしょうか。

 ニュースで時折、発展途上国や専制国家などで、投票箱の紛失や開票の不正を防止するため、国際連合などから選挙監視団体が派遣される例を見かけます。考えようによっては、日本はこうした団体から監視を受けなくてはならない国々と、同じ状況にあるのです。

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著者プロフィール

児玉 博(こだま・ひろし)

ノンフィクションライター。1959年生まれ。主な著書に『降臨―楽天・三木谷浩史の真実』『幻想曲 孫正義とソフトバンクの過去・今・未来』(共に日経BP社刊)などがある。



このコラムについて

児玉博の「見えざる構図」

ニュースの背後では何が起きているのか。事件の裏側には必ず錯綜する人脈、金脈などが存在する。このコラムでは日本を揺るがすニュースについて、気鋭のノンフィクションライターが、その「見えざる構図」を明らかにする。

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