「経済学っぽく行こう!」

04 「現場の経験は学者の理屈に勝る」、と思うんだけど・・・

バックナンバー

2009年8月28日(金)

1/4ページ

印刷ページ

 多分野の知の出会い、掛け合わせのために、経済学の考え方が必要だとシノドス(シノドスの詳細はこちら)が考えた時に、若手経済学者としてテーブルについたのが飯田泰之氏です。

 飯田氏は『日本を変える「知」』(光文社、シノドス編集)に『「経済学っぽい考え方」の欠如が日本をダメにする』を寄稿し、続く『経済成長って何で必要なんだろう?』(光文社)では日本の格差や貧困について現場の論者と対談を行っています。近著は『脱貧困の経済学』(飯田泰之・雨宮処凜,自由国民社)です。

 自分の身の回りを取り巻く現実の諸問題をどう考えたらいいのか、「経済学っぽい考え方」から見たその処方箋を、飯田泰之氏に伺いに行きました。まずはプロローグ編。そもそも経済学って、そして経済学者、エコノミストの言うことって、それ信じる根拠はどこにあるの? というところからお話はゆっくり浮上していきます。(聞き手:日経ビジネスオンライン編集 Y)

話者プロフィール

飯田 泰之(いいだ やすゆき)
1975年東京生まれ。エコノミスト。東京大学経済学部卒業、同大学院博士課程単位取得退学。現在、駒澤大学経済学部准教授。内閣府経済社会総合研究所、参議院特別調査室等の客員を歴任。専門は経済政策、マクロ経済学。主著に『経済学思考の技術』(ダイヤモンド社)、『ダメな議論』(ちくま新書)、『考える技術としての統計学』(NHKブックス)、『昭和恐慌の研究』(共著、東洋経済新報社、第47回日経・経済図書文化賞受賞)など。ブログ「こら!たまには研究しろ!!」。

――というわけで「経済学っぽい考え方」に興味津々、でも本当に信じていいのかどうか、本日は経済学者の飯田さんに根ほり葉ほりお聞きしたいと思いまして。

飯田 あ、僕、自分自身で経済学者とはあまり名乗りませんよ……。なんというか、学者というとなんか上から目線な気がしてどうも苦手で。だから、肩書きを自分で選べるときは「エコノミスト」と名乗ることが多いです。これって単に英語に直しただけですけど。

――そういえば、経済学の専門家って経済学者、エコノミスト、経済評論家と肩書きがばらばらですよね。それぞれの違いって何なのでしょう?

飯田 この区分はきわめて日本的に決まってる感じですね。大学の経済学部に所属しているならば経済学者、官庁やシンクタンク、企業の調査部あたりに所属していればエコノミスト、組織に属さずに経済を語っていれば経済評論家、というのがおおまかな傾向でしょうか。英語ではこれら全て「エコノミスト」です。だから僕もエコノミストというわけ。

――なるほど、それは実感にとっても近いですね。ところでエコノミストと言えば、東谷暁氏が「文藝春秋」2009年7月号で「エコノミストは役に立つのか 25人採点」という記事を書いてらっしゃいますね。

危機の予想、結論の一貫性は評価軸になるか?

飯田 あの格付けこそが「役に立つのか」。立たないと思いますね。「今サブプライム問題による金融危機を予想できたか否か」という評価方法自体が、経済学を根本的に誤解している証拠でしょう。エコノミストは予想屋ではありません。

――誤解とは?

飯田 エコノミストの役割はむしろ医者に近い。加藤涼氏の言葉を借りるならば「私は来週風邪を引くでしょうか?」という質問は、それ自体ナンセンスですし、これにすらすら答える医者はむしろ信用できない。エコノミストに求められているのは金融危機への効果的な対処法を論じることであって、予言ではないのです。

――同記事では論理の一貫性も重視されています

飯田 論理と言うより、援用する理論や結論の一貫性といった方がいいでしょうね。ただ、援用すべき理論は状況によって変わるので、必ずしも一貫している必要はありません。再び医者のアナロジーを変えると、病状が違うときに処方が異なるのはむしろ当然でしょう。提案する政策が一貫しているというのはもっと問題です。状況が違えば提案は異ならなければいけないのです。

――ああ、なるほど。結論というのは理論から導かれるものだから、あまりにも結論が首尾一貫しているということは、逆に理論のほうがフラフラしているということだ、と。

飯田 でも、そのほうが主張がはっきりしているように見えるでしょう?

――短い時間でぱっと結論だけ述べるテレビ番組の議論なんかじゃ、どうしてもそう見えますね。

飯田 ですから、前に自分が言ったことを正当化するために理屈の方を変えようとする人が多いんですよ。

 例えば野口悠紀雄氏は『未曾有の経済危機 克服の処方箋  国、企業、個人がなすべきこと 』でがつんと「結論」を変えました。こんなに経済の状態が悪くなったんだから、「結論」の方はがらっと変えますという、その姿勢のほうが正しいと思います。

――なるほど。

飯田 さらに、数字が出てくる話を全然しないエコノミストも結構いるんです。なんというか「雰囲気と情緒」だけのエコノミスト。

 それはもう、『日本を変える「知」』に書きましたけど、いかがなものかと。じゃあ何を語るのかというと、素人の社会学者みたいな話しかできない。「経済学者が言っているから、きっと経済学っぽいんだろう」と思われるでしょうけど、違うんですよ。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント9 件(コメントを読む)
トラックバック
著者プロフィール

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス、日経クリック、日経パソコン編集を経て、2006年2月から日経ビジネスオンライン副編集長、編集委員を務めた後、2010年4月から日経ビジネスアソシエ副編集長。ツィッターはこちら

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン