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所得補償で農家は強くならない

食料危機の“赤ランプ”は灯ったまま

  • 佐藤 ゆみ

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2009年8月30日(日)

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 日本の農業は構造的な問題を抱え、衰退の一途をたどっている。高齢化が進み、65歳以上の農家が6割を超える。埼玉県の面積以上の耕作地がまばらに放棄されている。

 何よりも憂慮すべきは後を継ぐ担い手の減少に歯止めがかからないことだ。食料自給率は41%(カロリーベース)と低い。今後FTA(自由貿易協定)やWTO(世界貿易機関)の締結を免れる可能性も少なく、自給率の低下が懸念される。

 OECD(経済協力開発機構)の試算によると、2025年には深刻な食料難が予測され、2050年には現在の1.7倍の食料が必要になる。世界が食料の備蓄、輸出制限といった食の安全保障への動きを加速させるなか、日本は食料における確かな国家戦略を持たずして生産調整をしているのが現状だ。

 今こそ農林族・農協(農業協同組合)・農林水産省の3者が支配してきたこれまでの農政を抜本的に見直さなければならない。やる気のある担い手の農業経営そのものを安定化に導き、自給率を安定的に高めるということを優先課題として構造改革を実行しない限り、我が国の農業には近未来の食料難を前に国民の食を担う力がなくなってしまう。

 この危機的な状況を打開する方策があるのか。今回の選挙で浮かんだのは、民主党の農家への「所得補償」に、自民党が「所得増大」で対抗する構図だった。両党は自給率の向上を掲げているが、その中身をよく見てみると、実は農業を強化するための戦略と具体策はない。農業票に目を奪われるあまり、どちらも改革の道筋を示す説得力に大きく欠けている。

振り出しに戻る農業改革

 1986年の自由化以来、農産物の輸入は増え、コメの価格は下落した。これまでの農業政策は、減反による生産調整と高関税で価格を支持し、全農家の「所得維持」を目的としてきたが、生産性は度外視されてきた。そのため生産性が低い小規模農家は全農家のおよそ70%を占め、生産性の高い大規模農家は育たず、全体のわずか1%に過ぎない。

 2007年、日本の農業は改革の大きな1歩を踏み出した。政府が導入した「品目横断的経営安定化策」では、支援対象に4ヘクタール以上の面積条件を設けた。農家1戸当たりの耕地面積を広げる方向に誘導し、小規模農家の組織化、大規模経営化により日本の農業全体の生産性を高めるという目的が明確だった。

 だが、その年の参議院選挙で民主党は異議を唱えた。「大規模農家だけに補助金を出すとは何事だ、小規模農家にも同じように補助金を出すべき」とし、「戸別所得補償制度」を掲げて参院選で大勝した。それを受け、自民党は20ヘクタール以上の集まりになれば補助金を出すという「集落営農」の制度に切り替えざるを得なかった。

 農家にとっても組織化は不可欠だった。高齢化や後継者不足に加え、回復する兆しのない米価の落ち込み。農業機械の購入費や肥料・種代を差し引くと利益はほとんど残らず、家族経営では限界だった。集落営農組織は、法人化すると更に助成金を受けられる、施設整備ができるなど農家のメリットも大きい。

 法人化が進めば、生産性を高めながら現在の農家は農業を続けられ、企業を農業参入させ、競争力をつけることができる可能性が大きい。ここまでは改革路線だった。

 ところが、ここへ来て政治の流れが変わった。民主党は原則すべての農家を対象に、2年前の参院選の時と同様の「戸別所得補償制度」を掲げる。米欧の農業政策は1990年代以降、価格支持(下支え)型から所得補償型にシフトしており、「日本もそれに習うべき」と主張する。

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