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05 「経済学を信じていい理由ってなんだろう?」

「ゼロ成長」とは、「2%成長」のことじゃないの。

2009年9月4日(金)

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 「経験に勝る理論ってあるの?」という問いに対し、理屈、理論は、体験の代替にすぎない、と言い切る経済学者、飯田泰之氏。ところが人間には、成功の理由が、例えば偶然の力がどのくらいで、能力がどのくらいかが、分からない。確かに言われてみればそのとおりです。

 そこに、現実を数量化して考える技術の使い道が出てくる。ならば、その数字の出し方の根拠に納得がいくかどうかが、「経済学を信じていいのかどうか」という自分の疑問の答えになりそうです。

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 本連載もいよいよ大詰め。文中に出てくる本を始め、経済学への入門や、それを使って社会的な課題を把握するための、専門家による「定番」本リストはごらんいただけましたでしょうか。本連載第2回(「02 経済学っぽく社会を考える、勉強本リストはこれだ!」)。

 有隣堂ヨドバシAKIBA店さんでは、今月半ばまでこちらでご紹介した本を揃えてくださっています。ぜひ、直にお手にとってお読みください(なんだか、記録的に売れているそうです。日経ビジネスオンラインはまったく儲かりませんが、ありがとうございます!)。お店の場所はこちらから。

(聞き手:日経ビジネスオンライン編集Y)

*     *     *

話者プロフィール

飯田 泰之(いいだ やすゆき)
1975年東京生まれ。エコノミスト。東京大学経済学部卒業、同大学院博士課程単位取得退学。現在、駒澤大学経済学部准教授。内閣府経済社会総合研究所、参議院特別調査室等の客員を歴任。専門は経済政策、マクロ経済学。主著に『経済学思考の技術』(ダイヤモンド社)、『ダメな議論』(ちくま新書)、『考える技術としての統計学』(NHKブックス)、『昭和恐慌の研究』(共著、東洋経済新報社、第47回日経・経済図書文化賞受賞)など。ブログ「こら!たまには研究しろ!!」。

――経済の話というのは、ようは銭金の話ですよね。

飯田 そうですね。人と話をするときに、考え方の違いってなかなか折り合えないですけど、それを銭金の話にすると、興味を持ってもらえたり、意外に通じることがあるのではないでしょうか。

――身近なことでいうと、好きなサブカルのネタはそのままやれないけれど、「なんぼ儲かります? お客さんはどんな人?」みたいな話にしてしまえば、「日経ビジネス」にだって掲載できてしまう。

飯田 銭金の話にすると、何というか、価値観の問題はちょっと横に置いておこうよ、となるんですね。それはとても経済的な考え方だと思います。価値観とか、実存を軽視しているわけではないんです。しかし、問題解決のための第一歩としては、対象を分解して話をしないと先に進めない。全部の要因を同時に考えられるほど人間の--少なくとも僕の頭は、ハイスペックではないですから。

 こういうのってすごく重要な経済学的思考法だと僕は思うんですが、どうも日本の経済学者のなかには「実存に悩まないとかっこ悪い」と思っている人が少なくない。そして経済学者はえてしてそういう価値や実存について思考するのは上手ではない。ちょっと経済用語を使うと……そういう総合的な思考に「比較優位」はないのですね。

――大工さんが彫刻家の気分に浸っているような感じですか。

飯田 そうそう。芸術家気取りみたいなものかもしれません。でも、実際の芸術家って、実存がどうのこうのとか作品のベースにある思想がどうのといった悩み方はあまりしないそうですよ。「オレの存在とは」と悩んでみせるより「なんでこうなるかって? だってこっちのカーブの方が格好いいじゃないか」とか、そういう話で。だから、あくまで気取りなんですが。

安上がりなデータ=統計

――飯田先生のご専攻はマクロ経済学ですよね。

飯田 そうです。でも、この連載でやっている「経済学っぽい考え方」が一番分かりやすく表れるのは、ミクロ経済学の分野なんですよ。

――マクロ経済学の方が、景気とか貿易とかが話題になって実践的な気も…

飯田 確かに経済学以外の人が考える「経済学ってこういうことをしているんだろう」というイメージに近いのはマクロ経済学かもしれませんね。GDPとかの話が出てきますから。でもマクロ経済学はちょっと応用色が強すぎる。ミクロ経済学の理論を何段階も積み重ねているので、経済学っぽさが前面には出てこないんです。その意味で「思考法として役に立つのはミクロ・マクロどちらか」と問われたならば、僕は迷わず「ミクロ経済学だ」と答えます。そしてミクロ経済学よりももっと有用なのがデータの利用でしょう。

――「データ>ミクロ>マクロ」という感じですか?

飯田 そうですね。だいたいその順番かな。もっとも有用性というよりも汎用性といった方が正解かもしれませんが。

 経済学に限らず、論理的な思考法は「問題の発見→仮説の設定→仮説検証」という3つのプロセスを行ったり来たりしながら磨かれていきます。入口と出口にデータが必要になるわけですね。もちろんどの学問もこのプロセスを踏んで議論が行われているのですが、それがモジュール化されているというか、手法や手順がシステム化されている度合いについては、今のところ経済学の方が社会科学をリードしている、といって良いでしょう。

 アカデミックな研究においてデータを得る方法は3つあります。歴史事例、フィールドワーク(実地調査・観察)、もうひとつは統計です。このなかで一番難しいのが歴史、同じくらい難しいのがフィールドワーク、割と使い勝手がよいのが統計かな。

――歴史が一番難しいというのは意外ですね。

飯田 いえ。少し考えてみると当然です。だって検証のためのデータがないからといって徳川家康にインタビュー取りに行ったり、奈良時代のGDP統計作ったりは出来ないでしょ? もちろん新資料の発掘というのはあるわけですが、それだって限りがある。つまりは、時代をさかのぼればさかのぼるほど、データの量が絶対的に制約されているんです。

――なるほど(笑)。ではフィールドワークの難しさはどこにあるのでしょう。

飯田 フィールドワークの難しさは、その解釈に主観が入らざるを得ないところにあります。観察やインタビューは主要な実証ツールではありますが、分析者が「見たことを虚心坦懐に記録する」というのは非常に難しい。話したことの字面だけでは発言者の内面は理解できない。かといってその内面への類推を加えると主観からフリーとは言えないデータになってしまいます。その結果、フィールドワークによるデータは他の人が再現できない。ここがフィールドワークの難しさです。

――では、歴史やフィールドワークよりも統計を重視すべきということですね。

飯田 その質問への答えですが……アカデミックな意味では明確にNoです。統計データの最大の欠点は何らかの形で数字化されている必要があるというところにあります。つまりは数字に直すことが出来ないデータは取り扱うことは出来ない。しかし、世の中の重要なこと全てが数字に直すことができるわけではないでしょう。

 その一方で、ビジネスの文脈についてならば答えはYesです。少なくとも統計データで詰められるところまで詰めてから、どうしてもというときに歴史やフィールドワークに手を出す方が無難でしょう。歴史やフィールドワークからデータを得る訓練よりも基礎的な統計のハンドリングの方が容易でしょうから。費用対効果の面で統計を重視すべきです。

――なるほど。統計の方が「安上がり」というわけですね。

コメント5

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「05 「経済学を信じていい理由ってなんだろう?」」の著者

山中 浩之

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス副編集長

ビジネス誌、パソコン誌などを経て2012年3月から現職。仕事のモットーは「面白くって、ためになり、(ちょっと)くだらない」“オタク”記事を書くことと、記事のタイトルを捻ること。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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