「2009年 政権交代」

実は「似たもの政策」、国民の利益はどこへ?

民主党の経済政策を点検する(1)

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2009年9月3日(木)

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 選挙が終わり、今後、民主党政権下での経済運営が行われることになりました。そこで、マニフェストなどを元に、民主党の経済政策の課題を考えてみたいと思います。

 「マニフェスト選挙」と呼ばれたように、今回の選挙に際しては、政党間のマニフェストの違いが論点になりました。しかし、私が自民党と民主党のマニフェストを読み比べてみた後に浮かんだ最初の感想は「よく似ている」というものでした。私は、今回の選挙戦では「ホテリング現象」と「ブキャナン現象」が現われたと考えています。

もっと売りたいと考えると店は同じ場所に接近

 具体的には、自民党も「市場原理の行き過ぎを是正する」と明言しています。両党とも「地方主権を目指し」「天下り、渡りを禁止し」「世襲候補を制限し」「官邸機能を強化し」「教育費支援を行い」「非正規雇用の正規化を図る」としています。基本的な方向は驚くほど同じであり、むしろ違いを探すのが難しいほどです。

 これは米国の統計学者ハロルド・ホテリングが指摘するとおりの現象で、私はこれを「ホテリング現象」と名付けています。ホテリングは、次のような例を出しています。

 長さ1000メートルの浜辺のある海水浴場で、2つのアイスクリーム屋AとBが店を出すとします。アイスクリームの品質は両店とも同じで、海水浴客は均一に散らばっており、自分に最も近い店にアイスクリームを買いに行くと仮定しましょう。

 当初、Aは右端から250メートルの地点に、Bは左端から250メートルの地点に店を出したとします。このとき両店の売り上げは等しくなり、均衡状態となります。しかしこれは不安定な均衡です。なぜなら、Aは、少しでも真ん中に寄っていけばより多くの客を獲得できるからです。

 そこで、Aは店を右端から350メートルの地点へ移動させたとしましょう。Bもこれに対抗して左端から350メートルの地点に店を移動させます。ここでも両店の売り上げは均衡するのですが、今度は両店の距離は500メートルから300メートルに接近しています。

 同じことを繰り返していると、最後は、浜辺の真ん中、つまり左右両端から500メートルの地点で隣り合うことになります。今度は両店とも改善の余地はなくなるので、これが安定的な均衡状態となります。

 経済学では、このように、他のプレーヤーの戦略を所与とした場合、自分の戦略を変えることによってより高い利得を得ることができない状態を「ナッシュ均衡」と呼んでいます。「ナッシュ均衡」の下では、どちらのプレーヤーもそれ以上作戦を変えないことになります。浜辺の真ん中に2店が寄り添う状態は、典型的なナッシュ均衡なのです。

どんどん政策が似てくるという現象が起きた

 やや脇道に逸れますが、この均衡は浜辺の客にとっては最適な状態だとは言えません。なぜなら、最初の両端から250メートルに立地した時、海水浴客がアイスクリームを買いに行く距離は平均125メートルですが、ナッシュ均衡の真ん中では、平均移動距離は250メートルとなってしまうからです。

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著者プロフィール

小峰 隆夫(こみね・たかお)

小峰 隆夫

法政大学大学院政策創造研究科教授。日本経済研究センター研究顧問。1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。2003年から同大学に移り、08年4月から現職。著書に『日本経済の構造変動―日本型システムはどこに行くのか』、『超長期予測 老いるアジア―変貌する世界人口・経済地図』『女性が変える日本経済』、『データで斬る世界不況 エコノミストが挑む30問』、『政権交代の経済学』、『人口負荷社会(日経プレミアシリーズ)』ほか多数。新著に『最新|日本経済入門(第4版)』



このコラムについて

2009年 政権交代

 衆院議員選挙の結果、民主党が新政権を発足させることが確実となった。民主党が衆院の第1党となるのは1996年の結党以来、初めてのことだ。民意による初の政権交代は現実のものとなった。
 新政権のもとで日本はどのように変わっていくのか。また、2度目の野党転落となった自民党は今後、どう巻き返しを図っていくのか。

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