今年の8月、オランダを視察してきた。オランダの制度も必ずしもうまくいっているわけではないが、そこで91歳の女性とお話しする機会があった。彼女は独り暮らしで介護が必要な状況にあり、日本で言うなら要介護度2か3だ。
しかし彼女は、介護保険をもらわないと言うのだ。年金月額13万円くらいで暮らしている。どうして介護保険をもらわないのか。そう聞いたところ、こんな答えが返ってきた。
「私がもらっても貯金してしまいます。年金だけで十分です。私がもらわなければ、この介護保険の分は、国が使ってくれます。私よりもっと困っている人のところに配ってほしい。だから私はもらわないほうがいいのです」
驚いて私はさらに聞いた。
「でも、国だって間違えるでしょう。間違った挙句、もし国がつぶれたらどうするのですか」
すると彼女は、こう言ったのだ。
「私は91年間も生きてきましたよ。だから政治家が絶対的に正しいとは思いません。腹立たしいこともたくさんある。でも、政治家が失敗したら、国民は次に正しい政治家を選ぶでしょう。私は、政治家は信じていない。けれど、私はこの国民を信じています」
政権を担う政治家の責任は、これほどまでに重いのだ。
「計画の裏づけ」のない中期計画などあり得ない
民主党のマニフェストを全体的に眺める限りは、「子育て・教育」や「年金・医療」を5つの政策の柱に大きく掲げるなど、非常に国民の側に立った、いいものができているという評価に値する。ただ、これからは政権を担うことになる。現状では2つの疑問を指摘したい。
まず1つは、どのようにムダ使いをなくせば財源が出てくるのか、という疑問だ。マニフェストは会社で言えば中長期計画にあたるだろう。それを作成するに当たって私たち経営者がまず考えるのは、「計画の裏づけ」を明確にすることだ。投資に見合う資金調達をどうするのか、どう回収し、その結果バランスシートはどうなるのか。こうした点が抜けた中期計画などあり得ない。 ところが、民主党のマニフェストからは、「政策の裏づけ」がはっきり見えてこない。
マニフェストには「特別会計はゼロベースで見直し、必要不可欠なもの以外は廃止する」とある。私は自分でも特別会計について調べたが、必要不可欠なもの以外とは何を指すのか、それによってどうしたら政策に回す財源があそこまで多く出てくるのかが理解できない。
しかも、ただ政策に使う財源が出てくるだけではダメで、2008年末時点で850兆円もある国の借金を返していくための財源を長期間にわたって確保しないといけないのだ。そこまで考えると、かつて細川政権の時にあった「国民福祉税構想」のような、突然大増税が政府から飛び出してくるようなことなしに、本当にそれだけの財源確保が可能なのだろうか。国民は財政破綻や家計の行き詰まりの心配をせずに暮らせるのだろうか。本当にそれができるのなら、まずは是非見せてほしい。この疑問に民主党政権はどう答えるのか。これが注文の第一だ。
なぜ売り上げを自ら手放さなければいけないのか?
第2の疑問は、あまりにも平坦にお金を配りすぎていて、本当に困っている人のところにお金がいけばいいのに、困っている人にも困っていない人にもみんな同じようにお金が回っていくような、そういう仕組みに今回のマニフェストがなっている点だ。
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