「衆院選「候補者A」かく闘わんとす」

第30話 「候補者A」市村浩一郎 当選

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2009年9月4日(金)

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 総選挙が民主党の地滑り的な勝利に終わった。この連載の主役である民主党の「候補者A」こと市村浩一郎も、兵庫6区で3度目の当選を果たした。

 小泉旋風から吹き荒れた2005年の前回衆院選で、市村は自民党の新人候補に小選挙区で惜敗した。比例復活で議席こそ守ったが、今回は雪辱を期す闘いでもあった。

総投票数の約55%を獲得

 市村は前回から約6万票増の16万票を得票目標に掲げた。民主党への追い風があるとはいえ、かなり強気の数字である。約45万人に及ぶ選挙区有権者の投票率を70パーセントと仮定し、総投票数の過半数を得ようというのだ。「過半数を得てこそ有権者の真の代表」との市村の理想からである。

 結局、市村は目標を上回る約17万3000票を獲得した。総投票数に占める割合も55パーセント近い圧勝だった。

 「有り難いことです。しかし、これからが本当のスタートです」。総選挙を戦い終えた市村は、言葉少なに言うだけだ。

演説する市村と応援に駆けつけた楽天会長兼社長の三木谷浩史 (撮影:筆者。以下同)
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 市村は福岡県出身の45歳。一橋大学社会学部を卒業後、故・松下幸之助が創設した松下政経塾へと進んだ。政治家養成機関として知られる政経塾は、衆参併せて34人の現職国会議員を輩出している。所属政党別では自民党が6人、残り28人はすべて民主党である。その中には、前原誠司や野田佳彦といった民主党の若手リーダーも含まれる。

 市村が政経塾を卒塾した1993年、政界では日本新党ブームが起きていた。市村は政経塾の先輩に誘われ、日本新党の政策担当職員となった。以降、新進党の職員を経て、96年にはいったん政治の世界を離れる。

 前年起きた阪神・淡路大震災の復興に関わる非営利組織の基金の運営を任され、神戸へと拠点を移したからだ。このことが後、市村が兵庫県の選挙区から国政に立候補するきっかけとなった。

初挑戦では、小池百合子を相手に善戦

 非営利組織での活動を終えた99年、当時誕生して間もない民主党の地元関係者が、市村を衆院選の候補者としてスカウトした。民主党の支持率が「消費税並み」と揶揄された時代のことである。

 しかも市村が公認を打診された兵庫6区には、与党の人気現職、小池百合子が君臨していた。民主党の候補者探しが難航していたのも当然だった。市村は言う。

 「しかし、時代が動いている時は、新人にとってはチャンスなんです。きちんとした主張を打ち出せば、絶対に理解が得られる。多くの選挙を手伝ってきた経験からもそう考え、兵庫6区で挑戦することに決めました」

 市村は初めて駅頭で演説した「99年12月21日」を鮮明に記憶している。「松下政経塾出身の34歳、市村浩一郎です。日本の洗濯をジャブジャブとさせてください」

 そんなフレーズをひたすら繰り返し、寒さに震えながら朝7時から9時まで喋り続けると、1日で喉がつぶれて声が出なくなった。

 団体の会合や地域のお祭りに顔を出しても、野党の新人候補など相手にすらされない。それでも毎日、駅に立ち、自らハンドルを握って1人で選挙区内を回り続けた。

2003年に初当選

 その甲斐あって2000年6月、市村は初の衆院選で約7万4000票を獲得した。当選した小池とは1万票差という大善戦で、市村を見る周囲の目が大きく変わった。

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著者プロフィール

出井 康博(いでい・やすひろ)

ジャーナリスト。
1965年岡山県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本経済新聞社入社、「ザ・ニッケイ・ウイークリー」記者、米国黒人問題のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」の客員研究員を経て、独立。主な著書に『松下政経塾とは何か』(新潮新書)、『年金夫婦の海外移住』(小学館)、『黒人に最も愛され、FBIに最も恐れられた日本人』(講談社)などがある。また日経ビジネス2002年9月30日号コラム「ひと烈伝」でヨシダソースで有名な米ヨシダグループの吉田準輝会長を寄稿、現在「フォーサイト」(新潮社)で「2010年の開国・外国人労働者の現実と未来」を長期連載中。最新刊に『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社)がある。



このコラムについて

衆院選「候補者A」かく闘わんとす

ねじれ国会に、2代続けて首相の突然の辞任、そして総選挙。ざわつく国政に、テレビや新聞、そして週刊誌と政局関連の話題を取り上げているが、その当事者である代議士、そして代議士になろうとしている人たちは、いったい普段どんな生活をしているのかは意外と知られていない。本連載では、「地盤」「看板」そして「カバン」を持たない“フツー”の代議士や候補者の生活に焦点を当てることで、日本の政治はどのように作られるのか、そして現在の政治システムが抱える課題とは何かを浮かび上がらせていく。

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