「脱常識の世界史」

戦国時代は寒冷化による食料争奪サバイバル戦争だった

自爆テロの横行、日本の高度成長、そして中国の急速な高齢化を読む

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2009年9月24日(木)

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 20世紀前半に吹き荒れて、全欧州を瓦礫の山にし、数千万人の死者を生み出したナチズムや、21世紀に入ってから9.11に代表されるイスラム原理主義の自爆テロの嵐が発生した真の原因は、何だろうか。

 第一次大戦の敗戦国、ドイツにとって過酷だった戦後ベルサイユ体制や、世界恐慌の発生、ドイツの国民性、あるいは中東諸国の専制政治体制や貧困など、様々な原因が語られてきた。しかし、どれも表面的な分析の印象は免れず、「真の」発生原因として説得力は弱い。

 例えば、自爆テロの原因が貧困や専制政治にあると言うのは、9.11の自爆犯が金持ちの息子たちや国外留学組のエリートたちであったことを想起すれば、ほとんど説得力がない。ハンチントンのように「文明の衝突」で説明するのも、現在の現象面だけに着目しており、かなりご都合主義の感を免れない。

 ところが近年、フランス国立人口研究所のエマニュエル・トッドは、これらを「移行期危機」という人口史概念で以下のように鮮やかに説明している。

ナチズムと自爆テロを「移行期危機」で読み解く

 人口学的には、男性の識字率が50%を超えると、その社会全体の不安定性が増して攻撃性を帯びる。さらに何十年か遅れて女性の識字率が50%を超えると、やがて出生率が2付近まで低下して、社会全体が落ち着きを取り戻し、攻撃性・好戦性は有意に低下してくる。そのメカニズムは、次の通りである。

 男性識字率が50%に達するということは、若者世代の大半は字が読めて、書物などから新たな知識体系の吸収が可能であり、自我に目覚めるのに対し、彼らの親の世代は大半が伝承による伝統的知識体系に頼っている状況である。

 この結果、親子間の価値観に大きな断絶が生じて、家族内での権威体系が崩壊する。社会は家族の集積であるので、社会全体の価値観や政治体制も不安定化する。

 さらに遅れて、女性の識字率が50%を超えると、女性の知性水準が向上するだけでなく、家族内での地位も向上し、肉体的・精神的負担が大きい「できるだけ多く子供を産む機械」としての役割を放棄し、出生率が低下し始める。出生率が低下し、平均して一家に1人程度の息子しかいなくなると、彼らが戦死した場合に家族はその負担に耐えられなくなるので、社会の好戦性は大きく低下してくる。

 この男性識字率が50%を超えた後に、出生率が3未満に大きく低下するまでの、平均して50年前後の期間がトッドの言う「移行期危機」である。移行期の長さは、国や地域の違い、すなわち家族制度・文化・宗教によって大きく異なる。

移行期危機の真最中であるイスラム諸国

 ナチス・ドイツに限らず、フランス革命やロシア革命、19世紀から20世紀初めにかけての欧州列強の帝国主義戦争や、日本のアジア進出などについても、この説がかなりの程度当てはまるとしている。トッドは、現在、多くのイスラム諸国では、この移行期危機の真最中であり、このことが、自爆テロが横行している真因としている。

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著者プロフィール

石井 彰(いしい・あきら)

エネルギー・環境問題研究所代表、石油天然ガス・金属鉱物資源機構特別顧問、早稲田大学非常勤講師。1974年上智大学法学部卒業。日本経済新聞社を経て、石油公団にて1970年代後半から石油・天然ガス(LNG)開発関連業 務、1980年代末から国際石油・天然ガス動向調査・分析に従事。その間、ハーバード大学国際問題研究所客員、パリ事務所長などを歴任。著書に『世界を動かす石油戦略』、『21世紀のエネルギー・ベストミックス』、『エネルギー:今そこにある危機』、『石油 もう一つの危機』、『天然ガスが日本を救う 知られざる資源の政治経済学』ほか。



このコラムについて

脱常識の世界史

人類の歴史は、究極的に人口とエネルギー源という、2つの要素の変動に駆動されているのではないか。産業革命も、その後の経済成長・変動も、戦争や革命や自爆テロも、人口とエネルギー源の量的・質的変動の観点から見てみると、通常学校で習ったり、新聞・テレビ等で解説されたりする姿と随分と違って見える。人口動態とエネルギー源の変遷が、どのように世界史の動きに絡んでいるのか。これは新たな視点の文明理解、歴史解釈であり、地球環境問題が深刻化している現在、一石を投じる意味があるものと確信している。

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