(前回から読む)
竹中 今回の衆院選で民主党が掲げたマニフェストには、異質な要素がモザイク的に盛り込まれています。その矛盾とか整合性とかを指摘する声はある。
年金改革にしても、医療改革にしても、少子高齢化対策にしても、どう乗り切っていくかという政権運営のポイントは、結局、そのコストを国民がどう負担するかでしょう。その時、国民を納得させるための必要条件は「ぶれないビジョン」だと思うんですよ。
民主党の鳩山(由紀夫)さんが、これからビジョンを打ち出せるのか。「友愛社会」とは言っているのだけれど、どうもビジョンとしてはフニャっとしていて、よく分からない。この辺が1つの問題ですよね。
「ちょうどいいところ」でコンセンサスは取れる
東京財団 上席研究員
1963年福島県生まれ。東北大学歯学部卒業後、アメリカに留学し社会科学を学ぶ。ニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチで政治学修士課程修了。95年にCSIS(戦略国際問題研究所)入所。2003年3月から上級研究員として、日本の政党政治と外交政策、アジアの安全保障、日米関係全般についての分析・研究に携わる。2005年に帰国し、三井物産戦略研究所主任研究員等を経て現職。現在、CSIS非常勤研究員、沖縄平和協力センター上席研究員を兼任。父は民主党代議士渡部恒三氏 (写真:柳生 貴也、以下同)
渡部 私は最近、国家の大戦略をどう立てるべきか考えています。
マサチューセッツ工科大学のリチャード・サミュエルズ教授が最近出した『日本防衛の大戦略』(日本経済新聞出版社、原書:Securing Japan)では、ゴルディロックス・コンセンサスという指摘をしています。
ゴルディロックスというのは、童話『3びきのくま』に出てくる女の子の名前です。彼女はクマの家に行って、熱いスープも冷たいスープも飲まず、ちょうどいい熱さのスープを飲んだ。要するに「ちょうどいいところ」でコンセンサスが取れるということです。
日本では今まで、明治維新とか第2次世界大戦後とかの節目でいつも「富国強兵」「吉田ドクトリン」といったスローガンが出てきた。最初から打ち出していたわけではないのだけれど、コンセンサスとしてだんだんまとまってくるものだというんですね。
竹中 日経ビジネスオンラインでも、アンケートをやりましたよね。結果は、 自民党と民主党で投票した人の価値観がかなり重なっている。軸となるビジョンには、実はあまり違いがない。
渡部 だから、外交で言えば、米国かアジアか、ではなくて、その中間をまず探していく。どっちも大事なんだから、両方狙うということです。経済もそうですね。
鳩山論文で米国中に不安が走った
渡部 8月27日、鳩山さんの名前でニューヨークタイムズに論文が出ました。あれで、米国中に不安が広がりました。
1つは「市場原理主義」で米国を批判したことです。市場原理主義は、もともと英語にない概念で、英訳すると「マーケット・ファンダメンタリズム」となる。
米国人はカチンとくるわけですよ。「この人は市場経済を否定するのか」「社会主義者じゃないか」と。日本と違って社会主義者というのは、米国ではすごく悪い印象がありますからね。
元になったのが日本の雑誌に掲載した論文で、しかも相当、出来が悪かった。確かにそうは書いてあるんですけど、言いたいことは「友愛」だった。おじいさんの鳩山一郎はこう考えて「フラタニティ」を「友愛」と訳した、といった話をしている。
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