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“草食男子” が産業革命を起こした?

「マルサスの罠」はいかにして克服されたのか

2009年10月1日(木)

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 英国の古典派経済学者ロバート・マルサスは、1798年に有名な「人口の原理に関するエッセイ」、いわゆる人口論を発表した。彼は、人口は幾何級数的に急増するが、その食糧生産は算術級数的な緩やかな成長しかできないので、いずれ必ず貧困、飢饉が蔓延することになり、人口は天井に達すると論じた。

マルサスの議論は悲観的で合理的でないのか

 さらに、これを打破しようと、開墾や技術開発を積極的に行って、食料生産を増加させても、たちまち人口が増加してしまい、再び貧困と飢餓が蔓延することになる。人口増を制限しない限り、永久にこれが繰り返されるが、人為的な人口抑制は人間の本性から困難であるとした。この単純だが、極めて説得力に富む悲観的議論は、発表当時も、その後も大きな議論を呼んだ。

 しかし、英国をはじめとする欧州では、その後人口が爆発的に増えたにもかかわらず、貧困と飢餓が蔓延することにはならなかったので、マルサスの論は、後世の強い批判を浴びた。特に経済学者の間で評判が悪かった。

 結局、マルサスは産業革命時に生きた学者であり、産業革命が将来、人口と生活水準に究極的にどのような影響をもたらすのかを予測できなかったのだ。現在では、「マルサス的な」という比喩は、過度に悲観的で合理的ではない見方、ないし技術革新を軽視しすぎているという批判的なニュアンスで使われることが多い。

 しかし、マルサスの単純明快で強力な議論は、21世紀においては簡単に忘れ去られるべきものではない。計量経済史が専門のカリフォルニア大学のグレゴリー・クラークは、産業革命以前の全世界の社会、あるいは現代でも工業化以前の国、地域では、このマルサスの法則がいかに正確であるか、多数の統計を用いて実証している。

人口の時間推移を描くいくつかのモデル

 クラークの著書の日本語版のタイトルは、『10万年の世界経済史』という(原題は、A farewell to Alms)。人類史は、石器時代の狩猟採集社会から、高度に発達した農業社会であった100年、200年前までの西欧・中国・インド・日本等に至るまで、過去10万年以上にわたってすべてマルサスの罠に実際にとらわれていたとしている。おそらく、この説への反論はほとんどないだろう。マルサス本人が生きていた時代までは、マルサスの結論は全く正しかったのである。

 ただし、マルサスの人口論は、人口の時間的推移がなめらかな曲線、すなわち指数関数に従って増大し、ある時点で人口増が突然ストップし、その後その状態が定常的に継続するような議論をしているが、伝統社会の実際の人口の時間的推移は、そのようなものではないようだ。

 既にこのコラムの第1回目の中国の人口史のところで述べたように、増大と減少を何度も繰り返す、不規則なサイクルを描いている。これは、人口学の大家、ロックフェラー大学のコーエンが引用する、古代からの現代に至るまでのエジプト史などでも、全く同様である。

 人口(生物一般で言えば個体数)が、一定環境下で、どのような時間的推移を示すのかについては、マルサスの単純な議論よりも、後世の生態学者の方がよりリアルな数学モデルを提案している。

 第1回目で触れたロトカ・ボルテラ・モデルもその一つであるが、最も古典的で有名なものに、ベルギーの数理生態学者ベルハーストが19世紀半ばに発表した、ロジスティクス曲線がある(図1)。

 これは、個体数推移に限らず、各種エンジアリングや、(批判が強いが)時に石油などの資源の生産量推移の長期予測などにも用いられている(ピークオイル論)。

 環境容量が個体数に対して相対的に非常に大きい左端の初期状態から、急速に個体数が増加し、環境容量の半数に達した時点で増加率が減少し始め、やがて環境容量に接近するに従って増加率は限りなくゼロとなるS字型のカーブを描く。

 マルサスの、一方的に発散して突然終局が来るモデルよりは、洗練されたモデルではあるが、シャーレの中で菌を培養するようなケース以外では、現実の世界ではあまりお目にかからないカーブでもある。世界全体の人口推移カーブがこのようになるのかどうかは分からない。ロトカ・ボルテラ・モデルの1サイクルの上昇期を近似しているとも考えられる。

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