「脱常識の世界史」

エネルギーの爆食がもたらした2度目の人口増

産業革命を可能にした石炭と「エントロピー排出」の問題

バックナンバー

2009年10月8日(木)

1/4ページ

印刷ページ

前回から読む)

 人類史をマクロ的に眺めてみると、2回の人口爆発期がある。最初は現在より1万年前から2000年前頃までの農業開始の時期である。言うまでもないが、それ以前はすべての人類社会は狩猟採集生活であり、居住可能地の人口密度は最大で1平方キロ当たり1人、通常は0.1人以下と推定されている。

 日本を例にとると、面積が約38万平方キロであるから、30万人以下しかいなかったことになる。事実、定住型の狩猟採集社会であった縄文時代の人口は、考古学的証拠から見て、最大で30万人程度と推定されている。現在の日本の人口の400分の1以下である。

2000年で2倍程度しか増加しなかった産業革命前

 世界の地域や時代によって人口密度に大きな差があったと考えられるが、例えば1万年前の農業革命直前では、世界の人口は多くて1000万人程度と推定されており、人口の年間増加率はほぼゼロ、ないし0.01%増、100年で0.1%増程度と推定されている。

 ユーラシア大陸で、農業革命がほぼ浸透し終わった2000年前、すなわちキリスト生存時代(実在したとすればだが)の世界人口は、南北アメリカ大陸やアフリカ・オセアニアでは、まだごく一部しか農業化されていないにも関わらず、約3億人と推定されているので、ユーラシアだけでみれば、約30倍を遥かにしのぐ程度に急増したことになる。

 一般に粗放農業でも、単位面積当たりの人口支持力は狩猟採集の100倍は下らないと考えられている。しかし、(このコラム連載の後の方で述べるが)だから農業によって人間社会が進歩したとか、人類の生活水準が向上したのではなく、マルサスの罠にはまって、民衆の生活の質は狩猟採集時代より、むしろ大幅に低下したとされている。

 人類史上、第2の人口爆発時代である産業革命の直前、18世紀初頭の世界人口は、6~7億人程度と推定されているから、約2000年の間にわずか2倍程度にしか増加していない。この間、農耕地の拡大が世界的にそれなりにあったから、まさに産業革命前のマルサスの罠である。

産業革命後、わずか2世紀半で約10倍に爆発

 ところが産業革命後、世界人口は爆発的に増加し、既に掲載したグラフのように、約1世紀半後の1900年には16億人、さらに半世紀後の1950年には25億人、2000年には60億人超と、まさに幾何級数的に急増した。わずか2世紀半の間に約10倍もの人口爆発になった(以上の人口推計値は、米国国勢調査局による)。

 なぜ、産業革命によって人口爆発が生じたのであろうか? 出生率が急上昇したのだろうか? 理由はそうではない。死亡率が急減したのである。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント13 件(コメントを読む)
トラックバック
著者プロフィール

石井 彰(いしい・あきら)

エネルギー・環境問題研究所代表、石油天然ガス・金属鉱物資源機構特別顧問、早稲田大学非常勤講師。1974年上智大学法学部卒業。日本経済新聞社を経て、石油公団にて1970年代後半から石油・天然ガス(LNG)開発関連業 務、1980年代末から国際石油・天然ガス動向調査・分析に従事。その間、ハーバード大学国際問題研究所客員、パリ事務所長などを歴任。著書に『世界を動かす石油戦略』、『21世紀のエネルギー・ベストミックス』、『エネルギー:今そこにある危機』、『石油 もう一つの危機』、『天然ガスが日本を救う 知られざる資源の政治経済学』ほか。



このコラムについて

脱常識の世界史

人類の歴史は、究極的に人口とエネルギー源という、2つの要素の変動に駆動されているのではないか。産業革命も、その後の経済成長・変動も、戦争や革命や自爆テロも、人口とエネルギー源の量的・質的変動の観点から見てみると、通常学校で習ったり、新聞・テレビ等で解説されたりする姿と随分と違って見える。人口動態とエネルギー源の変遷が、どのように世界史の動きに絡んでいるのか。これは新たな視点の文明理解、歴史解釈であり、地球環境問題が深刻化している現在、一石を投じる意味があるものと確信している。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン