「2009年 政権交代」

ルールなき政策変更が引き起こす問題

「時間整合性」の理論で、政策の持続性を考える

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2009年9月24日(木)

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 政権交代が現実になった9月16日。民主党はその前から前政権で決定された予算の執行の一部凍結方針を打ち出していました。

 特に話題となっているのが補正予算における基金事業です。前政権は、4月に打ち出した経済対策を裏付けるために、補正予算において、地方自治体などに30基金を新設。さらに既存の16基金で資金を上積みしました。

 予算が単年度主義のところ、基金への予算の拠出という形にすることにより、事業を複数年度にわたって実施することができるようになります。

 これらの基金には、「緊急人材育成・就職支援基金」や、「農地集積加速化基金」などが含まれます。いわゆるエコポイントも「グリーン家電普及促進基金」を通じて執行されることになっています。

 「介護職員の処遇改善等のための基金」のように都道府県が直接事業主体のものも多くあります。

 民主党はムダ遣いの懸念や独自政策の財源確保のため、これら基金への予算執行の停止を考えているのです。

 政権交代は、当然大きな政策変更を伴います。このことはマニフェスト選挙とも言われた今回の選挙の性格を考えると当然かもしれません。しかし、私は、政権交代が通常に行われる社会に移行するためには、留意すべき点があると思っています。

 それは、マニフェストに盛り込まれた政策だけでなく、既存の政策の持続性についてもマクロ経済学で問題となっている「時間不整合性」によく似た問題が発生することです。なお、この問題については法的な問題も発生し得るのですが、ここでは、この問題は扱いません。

時間不整合性とは何か

 「時間不整合性」とは、ごく簡単に言うと次のようなものです。

 政策担当者は、自身がアナウンスした政策を信じて民間主体が意思決定を行った後には、当初アナウンスした政策とは異なる政策を行う誘因を感じる。

 そしてその誘因が発生するメカニズムを理解した民間主体は、政策担当者のアナウンスを信じなくなるため、政策担当者が行う政策の効果が著しく阻害される。

 具体的にこの問題としてよく議論されるのは、中央銀行によるインフレ対策です。インフレの大きな原因は、人々が抱くインフレ期待です。インフレには自己実現的なところがあり、インフレが起こるとすべての人が思うと、実際に起こってしまいます。従って中央銀行の大きな仕事は、インフレ期待を引き下げることになります。

 そのために、まず、中央銀行が景気の後退を覚悟した上で、金融を引き締める旨をアナウンスしたとします。民間の経済主体が、それを信じ、インフレ期待を引き下げて、より低いインフレ率が実現したとします。

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著者プロフィール

桑原 進(くわはら・すすむ)

元政策研究大学院大学准教授(現内閣府経済社会総合研究所主任研究官)。産業カウンセラー。1989年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。99年在チェコ日本国大使館一等書記官。内閣府、連合総合生活開発研究所などを経て2007年に政策研究大学院大学。2010年8月より現職。著書に『経済指標を読む技術―統計データから日本経済の実態がわかる』(共著)、『データで斬る世界不況 エコノミストが挑む30問』(共著)、『政権交代の経済学』(共著)。



このコラムについて

2009年 政権交代

 衆院議員選挙の結果、民主党が新政権を発足させることが確実となった。民主党が衆院の第1党となるのは1996年の結党以来、初めてのことだ。民意による初の政権交代は現実のものとなった。
 新政権のもとで日本はどのように変わっていくのか。また、2度目の野党転落となった自民党は今後、どう巻き返しを図っていくのか。

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