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そんなに「金融資本主義」が嫌いですか?

我々は何に対して怒っているのか

  • 竹中 正治

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2009年9月25日(金)

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 時代にはその時の雰囲気を象徴する言葉が登場する。2002年の小泉内閣の登場は「構造改革」「改革なくして成長なし」がキャッチフレーズになった。

 米国発の金融危機と世界不況を経験した今日では「金融資本主義批判」「市場原理主義の修正」が枕詞になった感がある。鳩山由紀夫首相も、首相になる前にこう言っている。「この危機は、冷戦終焉後米国が推し進めてきた市場原理主義、金融資本主義の破綻によってもたらされたものです」(同氏ホームページ

 しかし、そのはやり言葉が何を意味するのかをどうとらえるかは十人十色で、意味不明のまま言葉だけが出回っている場合も多い。社会主義経済を志向する方々は今では極少数派になったので、ほとんどの論者はみな資本主義の中身に関する“程度”の違いを論じているに過ぎない。「金融」についてもその機能を否定する人はいない。あり方の問題を議論しているわけだ。

ジキル博士 VS とハイド氏

 ところが、「資本主義」に「金融」の名を冠すると、なにかとても悪性のものにイメージが変異するようだ。なぜだろう? 「強欲な金融業者」を叩いてやりたい気持ちが、そういうイメージを生むのかもしれない。しかし「金融」の何を生かし、何を削がなくてはならないのかを考えてみよう。

 金融・投資活動は実際のところ、「ジキル博士とハイド氏」的な2面性を内在している。

 金融の1つの顔は、「規律、効率性、合理性、機会」を象徴している。金融のおかげで、住宅を購入する、あるいは事業を立ち上げるなど多くの機会が実現する。同時に破産することなく返済するには合理性、効率性、規律が必要だ。金融はそうしたものを要求する論理を内在している。

 もう一方の顔は、「バブルと崩壊、強欲、搾取」を象徴している。今回の金融危機でもっぱら叩かれているのはこちらの面である。

 どうして金融は全く対照的な2つの顔を持っているのだろうか。あるいはどういう条件下で金融はジキル博士になったり、ハイド氏になったりするのだろうか。それを理解するために、まず世の中には2種類の異なった儲け方(所得の源泉)があることを理解しよう。

草食系ビジネス VS 肉食系ビジネス

 パン屋が小麦粉を仕入れてパンを焼き、一月に200万円販売したとしよう。原料の小麦粉や水、光熱費などの経費は100万円かかった。そうすると差し引き100万円がパン屋の生み出した付加価値で、経済全体が生み出す付加価値の1年間の総額がGDP(国内総生産)である。

 パン屋の生んだ付加価値100万円は、様々な所得として分配される。従業員を使用していれば給与を支払い(給与所得)、銀行から金を借りていれば利息を払い(利子所得)、店舗を借りていれば家賃を払う(賃貸所得)。残りがパン屋の純所得(事業者所得)だ。金を貸した銀行が利息を伴って資金を回収できるかどうかは、ひとえにパン屋が十分な付加価値の生産に持続的に成功するかどうかにかかっている点を強調しておこう。

 もう1つ別の儲け方がある。例えば株式トレーダー(投資家)がA社の株を100万円で買い、1カ月後値上がりしたので200万円で売ったとしよう。トレーダーくんの儲け(所得)は100万円である。しかし、同じ所得でもこの所得は付加価値ではない。彼が安く買った反対側には安く売った人がおり、高く売った反対には高く買った人がいる。つまり市場全体ではゼロサム(損得合計でゼロ)だから、付加価値としてGDPには含まれない。これを「ゼロサム所得」と呼ぶことにしよう。

 今流の言い方をすれば、パン屋を「草食系ビジネス」、トレーダーを「肉食系ビジネス」と呼ぶこともできようか。ただし、トレーダーは無用の長物というわけではない。現代の金融・資本市場が機能するために不可欠な「市場の流動性」(いつでも金融資産が売買できる条件)のためには、広い意味でトレーダーが提供する機能が欠かせないからだ。肉食動物も生態系を構成する不可欠な環であるのと同じだ。

最終消費市場 VS 資産市場

 こうした2つの異なった儲け方と対を成す形で、経済も2つの異なった層から成る。資産市場と最終消費市場では別々の行動原理が支配している。

 最終消費市場とは、財やサービスの供給と消費から成る実体経済の市場である。この市場では財やサービスの使用価値と価格の関係が問題になる。資産市場は、不動産、株式、債券などの金融資産を含む資産の取り引きからなる。この市場では際限のない金銭的価値の蓄積を目的とする行動原理が支配し、各種の資産の価格(=相場)が形成される。

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