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富士重工が“暴いた”防衛政策の曲がり角

鳩山政権は防衛産業とどう付き合うのか?

  • 鍛冶 俊樹

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2009年9月28日(月)

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 富士重工業が9月初め、防衛省に対して約500億円の支払いを求め、受け入れられなければ訴訟も辞さない構えを見せた。政権交代のタイミングで、なぜこのような出来事が起きたのか。その背景を探っていくと、防衛政策が曲がり角を迎え、巨大防衛産業の戦略転換が余儀なくされている姿が浮かび上がる。

 事の発端はこうだ。防衛省は2001年に米国製戦闘ヘリコプターとして有名な「アパッチ」を62機購入する計画を立てた。これを受けて富士重工は米国製のヘリを日本国内で生産できるように米ボーイングからライセンスを取得、その代金として約400億円を支払ったという。ところが生産体制に入ったものの、これまでに防衛省は10機しか発注せず、今後も発注の見込みがない。

 ライセンス料や生産基盤の確立のための費用は1機当たりのヘリ代金に上乗せして回収する計画だったから、10機で購入を打ち切られれば大損害は免れない。この損害は防衛省の計画変更によるもので、その分を支払えというのが富士重の主張である。

本来、あってはならない事態

 こうした計画の行き違いによるトラブルはビジネスの世界ではよくあることだ、と思われる方も多いだろう。ところが、防衛産業では異例のことなのである。

 そもそも防衛産業は、国防・軍事を支える基幹産業であり、世界中どこの国でも安定産業である。生産は国家計画に基づいており、軍事機密を取り扱うから国家の厳重な監督下に置かれている。

 つまり、一種の国策会社であり、国家と企業は強い絆で結ばれている。一般企業間のように、状況が変わったから「契約は撤回、違約金を払えば問題なし」というドライな形態では成り立たないのだ。

 日本ではいまだに防衛産業を白眼視して「死の商人」のように思っている人たちもいるようだが、それは大きな勘違いと言える。「戦争になれば儲かるから戦争を引き起こそうとする」といった防衛産業は、少なくとも先進国ではありえない。戦争などによって生じた利益は国に報告しなければならず、その分の利益還元を求められるのが先進国の通例であるからだ。そこでは議会もマスコミも鋭い監視の目を光らせており、戦争で巨利を貪るなどということは、事実上、不可能である。

 戦争で利益が上がらない代わりに、平時には損害が生じないように国家計画により生産が管理されているのが防衛産業なのである。安定産業と呼ばれて当然だろう。

 従って契約をめぐるトラブルなどは滅多に表面化しないはずだし、まして防衛産業に携わる側が国を訴える事態は、本来あってはならないのである。

 にもかかわらず、富士重工は提訴も辞さずの構えを取った。一体いかなる理由なのか? この背景には長期にわたる防衛費削減の影響が考えられる。

 日本の防衛費は2003年から毎年約1%ずつ減り続けている。これは小泉純一郎内閣が削減方針として決定したことで、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎内閣でも変わらずに継承された。

 2003年に4兆9265億円だった防衛費は、今年は4兆7028億円であり、2237億円減額されている(4.5%減)。特に兵器などの購入費は同時期9028億円から8252億円と776億円減(8.6%減)、防衛費全体に占める割合も18.3%から17.5%に落ち込んでいる。つまり兵器などの購入費の減額の割合は、ほかの削減に比べて著しいことが分かる。

 防衛省がアパッチを62機購入する計画を立てながら発注できないでいるのは、兵器などの購入費の減額幅が大きいためと考えるのが自然だ。

 防衛費のこうした一律一方的な削減が危険だと指摘する声はかねてからあった。中国の軍事費は公表されている額だけでも21年間で20倍に膨らんでおり、今後も軍拡の方針に変わりがない。ロシアも1990年代の軍縮時代は終わりを告げ、この数年は平均3%以上の軍拡となっている。核ミサイルの開発に余念がない北朝鮮の暴走振りは言うまでもない。

コメント15件コメント/レビュー

自衛隊にいた者ですが、個人装具ひとつとっても、「高いだけで使えないモノ」がたくさんあります。 このあたりの品質アップとコスト削減の可能性は結構なものと考えています。 恥ずかしい話しですが官給品の無線機は使い物にならず、演習では市販品の無線機をやむなくつかっていたりします。 使えない官給品はお飾りでもつけていなくてはならず、本当に無駄です。 現場の隊員も重々承知しているはずなので、このあたりの現場からの改革も期待したいものです。 (2009/09/30)

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自衛隊にいた者ですが、個人装具ひとつとっても、「高いだけで使えないモノ」がたくさんあります。 このあたりの品質アップとコスト削減の可能性は結構なものと考えています。 恥ずかしい話しですが官給品の無線機は使い物にならず、演習では市販品の無線機をやむなくつかっていたりします。 使えない官給品はお飾りでもつけていなくてはならず、本当に無駄です。 現場の隊員も重々承知しているはずなので、このあたりの現場からの改革も期待したいものです。 (2009/09/30)

「無用の用」という言葉がある。世の中に本当に無駄なモノなどはないのである。現代は、実際に戦争が起こらないと軍備の重要さを理解できない人が増えすぎている。今の状態では、オウムやアルカイダのようなテロ犯罪組織は必要悪なのかもしれない。実際に有事になって、力なき正義の無念さを実感しないと、国防に対する理解は得られないのではないだろうか。武器や腕力というものは、普段から鍛えておいて有事に備えるのは大切な事であり、仮にそれを使う事がなくてもそれはそれでよいのである。問題は、鍛えた腕力や武器を不条理に行使する団体や組織であり、そのような組織に対して丸腰で挑む事は現実的ではなく、暴力や武器に屈服する事につながるのである。いくら理論武装していても目の前の武装集団には抵抗できなくなるものである。また、軍需産業にしても一定の雇用を創出しており、軍縮すれば確実に失業者の増加につながり、不況に拍車をかける事になる。(2009/09/29)

>戦争などによって生じた利益は国に報告しなければならず、その分の利益還元を求められるのが先進国の通例・・・・ 税金以上に何か徴収しているんですか? そんな話聞いた事ないんですがもう少し詳しく説明してもらえますか?  アメリカでは純粋な軍事産業以外でも軍によって潤っている企業は山ほどあります。食料を大量に販売したり戦地で軍服を洗濯したりするのも立派な軍需産業です。ブッシュ政権時代は軍事産業や石油業界がバックについていたのも周知の事実です。チェイニーやブッシュ本人・ライスなど。ちょっと認識が甘いのでは?(2009/09/28)

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