景気には持ち直しの動きが続いていますが、雇用情勢は依然として厳しい状況です。8月の失業率は5.5%と、前月よりわずかに改善したとはいえ、戦後最悪の水準です。これに対して、民主党はどのような雇用政策を打ち出しているでしょうか。
民主党のマニフェストには、雇用政策として、月額10万円の手当て付き職業訓練制度による求職者支援、雇用保険の全ての労働者への適用、製造現場への派遣を原則禁止するなどの派遣労働者の雇用の安定、最低賃金の引き上げ、ワークライフバランスと均衡待遇の実現が掲げられています。
これらの政策の意図は明確でしょう。働く人の労働条件を向上させるための規制の強化と失業者の生活を支えるためのセーフティネットの充実です。
規制強化だけで労働条件は改善されるのか?
今回の急激な景気悪化のなかで、非正規労働者が、相対的には正規労働者に比べて賃金が低い上に、「派遣切り」、「雇い止め」が行われるなど雇用の調整弁となりやすく生活困難に陥りやすいという問題が顕在化しました。民主党の政策は、こうした非正規労働の問題を直接的に解決しようとしています。
確かに、失業者の生活を支えるためのセーフティネットの充実は必要と思われます。前内閣で雇用保険の受給資格は、6カ月以上の雇用見込み(従来は1年以上)に拡大されましたが、モラルハザードの問題があるとはいえ、雇用調整を受けやすい非正規労働者に受給資格がないという問題は対応が必要でしょう。また、失業者をなるべく早く雇用の場に戻すためには、生活保護を受けずに、生活の保障を得ながら職業訓練を行う制度の充実と恒久化が必要だと考えられます。
法学者と経済学者の見解の相違
しかし、働く人の労働条件を向上させるための規制強化については、これらの政策を現在のような経済情勢下で実施した場合には、かえって雇用情勢が悪化すると危惧する経済学者、エコノミストは少なくありません。これは、雇用政策を巡って、法学者と経済学者でしばしば意見の相違がみられる点でもあります。
労働法学者と労働経済学者のコラボレーションである『雇用社会の法と経済』(荒木尚志・大内伸哉、大竹文雄、神林龍編、有斐閣)の巻末座談会の中で、清家篤慶應義塾大学教授は、法学的思考と経済学的思考について「労働法学者が、困っている労働者を助けるためにいろいろな規制や政策を行う必要があるという主張をされるのに対して、労働経済学者は、もちろん困っている労働者を何とかしなければいけないという点についてはかなり同調しながら、しかし、労働法学者がいうような規制や政策を進めれば進めるほど、かえって労働者には気の毒な結果となるのではないか、というコメントが多かった気がする」と述べています。
このような議論が起きるのは、経済学では、一つの変化が起きたときに、相互作用として何が起きるかを重視するからだと思われます。
この問題を、消費税率の税率引き上げといった「衝撃」が与えられたとした場合、衝撃がどのように「転嫁」され、実際の負担は誰に「帰着」しているかを例にとって考えてみます。
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