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不動産「両手取引禁止」の波紋

2009年10月14日(水)

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不動産売買の仲介業者が、売り手と買い手の双方から手数料を徴収する「両手取引」。民主党がこの取引の原則禁止を掲げたことが、不動産業界に波紋を広げている。業者は売買が停滞すると猛反対だが、不透明な取引にメスが入る可能性もある。

 「いつ議論の俎上に載るのか、気が気じゃないよ」。大手不動産会社の幹部は苦笑いする。

民主党が公表した政策集

 八ツ場ダム、日本航空(JAL)再建、高速道路の無料化…。政権交代以降、山積する課題に精力的に取り組む前原誠司・国土交通相を評価しながらも、どこか浮かない様子。その理由は、民主党が不動産業界に対して明言している政策にある。

 「(不動産の)両手取引を原則禁止とします」──。民主党が総選挙で掲げた「民主党政策集インデックス2009」にはこんな記述がある。一般にはあまり注目されていないが、いつこの政策が議論に上るのか、不動産仲介の関係者の多くは気をもんでいる。

売却物件を抱え込む悪質業者

 「両手取引」という聞きなれない言葉は、不動産の売買を仲介する業者の取引形態の1つだ。不動産仲介業者は、不動産の売り手と買い手、双方の売買を取り持つが、その過程で発生する手続きの見返りとして、手数料を徴収する。この手数料を、売り手か買い手、どちらか一方からしか受け取らない場合は「片手取引」となり、両方から受け取る場合には両手取引となる。

 例えば、マンションの所有者が売却を考えている場合。所有者は不動産仲介業者に買い手の探索を依頼する。仲介業者は買い手を募集し、売り手と買い手が価格交渉で折り合いがつき、取引が成立すると、仲介業者は双方から手数料を徴収する。手数料は宅地建物取引業法で定められており、物件価格が400万円以上の場合はその3%に6万円を加えた金額が上限となる。売却価格が500万円の場合は、売り手と買い手の双方から3%、合計6%に6万円ずつを足した42万円を得られることになる。

 日本では、仲介業者の両手取引は古くから続いてきたため、「なぜ今さら、両手禁止なのか」と民主党の政策に首をかしげる業者は少なくない。

 ところが、不動産の売り手と買い手から見ると、この取引は大きな欠陥をはらんでいる。「業者によっては、いくらでも悪用できてしまう仕組みだ」と、ある不動産会社の社長が指摘する。

 どういうことだろうか。先の不動産会社社長が典型的な手口を明かす。

 まず仲介業者は、物件価値の下がりにくい好立地のマンションなどに狙いを定める。「あなたのマンションの購入を希望している人がいます」といった趣旨のチラシを頻繁に郵便受けに投函し、購入希望者がいることを住民に継続的にアピールする。首尾よく売却希望者が現れると、「相場よりも高く売却する」などと約束し、一切の売却手続きを任せるように迫る。

 ところが、仲介業者はいったん仲介を引き受けると、その物件を放置するのである。1カ月、2カ月と塩漬けにし、売り手がしびれを切らした頃合いを見計らってこう切り出す。

 「もう少し安くすれば売れますよ」

 売却価格を引き下げるように促し、最終的には相場よりも安い値段で物件を売却させ、手数料を徴収する。この間、購入希望者が現れても、売り手には伝えない。結果的に、売り手は本来売却できたはずの価格よりも低い値段で売らされる。「悪質な場合は買い手と結託して物件を再び買い戻して高値で転売する業者もいる」と前出の社長は言う。価格を操作して不当に値ざやを抜いている可能性がある。

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「不動産「両手取引禁止」の波紋」の著者

蛯谷敏

蛯谷敏(えびたに・さとし)

日経ビジネス記者

日経コミュニケーション編集を経て、2006年から日経ビジネス記者。2012年9月から2014年3月まで日経ビジネスDigital編集長。2014年4月よりロンドン支局長。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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