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鉄のゴミを海のサプリに

鉄鋼スラグの有効利用(新日本製鉄、JFEホールディングス)

  • 小瀧 麻理子

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2009年10月15日(木)

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環境破壊が進む海に、鉄分を供給して蘇らせる。利用するのは製鋼の過程で生まれる副産物のスラグだ。産業界が温暖化ガス削減への対応を迫られる中、鉄鋼業界が本腰を入れ始めた。

 北海道室蘭市にある新日本製鉄の室蘭製鉄所。そこからほど近い場所にある伊達市と寿都町の沿岸で、この10月から、縦横2m弱の巨大な箱を浅瀬に沈めるための調査が始まった。海底に設置される箱の中には、鉄を作る際に生まれる鉄鋼スラグが詰め込まれている。

 含有している鉄分を徐々に溶け出すようにして、海に養分を与える仕掛け。周辺に石を敷いて、海藻の胞子を着床しやすくするのだ。

藻の生息場所は4割減少

 「鉄を利用した海の緑化を進めたい」。新日鉄の無機材料研究開発部技術主幹の堤直人氏がこう意気込むように、この取り組みは新日鉄が地元の漁業組合や自治体、北海道大学などと共同で始めた「磯焼け」の海を蘇らせるための実験だ。二酸化炭素(CO2)削減に関する国指定の研究プロジェクトに選ばれている。

 磯焼けは、昆布やワカメなどの藻類が減少する一方で、サンゴモと呼ばれる白く硬い殻のような海草が、海底の岩の表面を覆いつくす現象だ。過去30年で日本の近海では磯焼けが進み、魚の餌となる藻が生息する場所が4割も減少した。漁業関係者にとって、大きな悩みの種となっている。

 こうした磯焼けの原因はこれまでは海水温の上昇や水質汚濁などに加えて、ウニなどの生物が藻類を食い荒らすからだと指摘されてきた。これに対して新日鉄が着眼したのは「海の鉄分不足」だ。背景にあるのが、鉄の供給源となってきた森林の破壊だ。

 木々が栄養分になる鉄を生み出すのは、落ち葉などが腐ってできた腐植土に秘密がある。この土の中には、鉄と結びつきやすい性質を持った腐植酸が発生している。それがさらに地中の鉱物などが含む「二価鉄」と結合して「腐食酸鉄」になり、河川を通じて海に大量に流れ込んできたのだ。

 海藻類はこの腐食酸鉄に含まれる二価鉄を吸収して、光合成や生殖細胞の一種である配偶子を生み出す配偶体を育てたりしていた。ところが近年の森林伐採や大規模なダムの工事で、河川と海が遮断され、海への鉄の供給ルートが閉ざされてしまった。それが磯焼けの大きな原因の1つになっている。

 新日鉄では2003年から、東京大学と共同で、人為的に鉄分を海に供給して、藻場を蘇らせる取り組みに乗り出してきた。その際に思いついたのが、鉄鋼スラグの有効利用だ。

 鉄鋼スラグとは鉄鉱石から鉄を作り出す過程などで生まれる副産物で、鉄分や石灰を多く含んでいる。1トンの鉄を作るに当たって約400kgと約4割の鉄鋼スラグが発生する。新日鉄だけで2008年度に約1200万トンの鉄鋼スラグが発生した。

公共事業減少の影響も

 この鉄鋼スラグは、最近の粗鋼生産量の拡大で、排出量が増加している。これまで鉄鋼スラグは主にセメント材料が道路の路盤材、コンクリート骨材などに再利用してきた。だが、公共事業の減少などでセメントやコンクリートの原材料としての用途は先細りになることが考えられ、「今は何とかさばいている状態」(鉄鋼メーカー)。鉄鋼各社もスラグの用途拡大を模索していた矢先だった。

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