花王が食用油「エコナ」のトクホの許可失効を申し出た。民主党政権下で消費者庁が進める「生活者重視」の政策が、反論不能な「消費者」という新たな権力を生みつつある。
「私たちは、エコナ発売当時から安全性の議論を続けてきました。そのエコナが販売中止になりました」
花王が「エコナ クッキングオイル」とその関連商品を一時販売中止すると発表した9日後の9月25日、東京都内の主婦会館地下2階。全国消費者団体連絡会などの消費者団体が主催する「エコナの安全性を問う会」の冒頭で、司会者の女性は高らかに宣言した。
次いで、壇上の関係者の紹介。食品安全委員会、厚生労働省、消費者庁と続き、花王からの出席者を紹介する段になると、にわかに語調を強める。
「関係者の皆さん、というか、発ガン性が疑われる食品を流通させた関係者の皆さんです」
関係省庁や花王担当者の説明が一通り済むと、厳しい質疑が続いた。「花王は本当に有害物質のことを知らなかったのか」「今後、原因物質を調べるのが花王自身では不安が残る」。
販売自粛と製品回収を発表した9月16日以降、花王の顧客相談窓口は問い合わせの電話が殺到して機能不全に陥った。事前に電話回線を増設して備えていたが、反響の大きさは花王の予想を超えていた。インターネット上のブログにも消費者の不安や疑念の声があふれた。「健康にいいと信じて買っていた商品なのにショックです」「発ガン性の議論は以前からあったのに、花王は隠していたのではないか」。
花王は、自ら折れた。
10月8日、販売自粛中のエコナ関連商品に対する「特定保健用食品(トクホ)」の許可の失効届を提出し、受理された。販売再開のメドは立っていない。売り上げ規模およそ200億円。花王は、成長分野の食品事業を牽引するヒット商品を失うことになる。
消費者重視の姿勢が仇に
消費者団体が数年前からエコナの発ガン性について警告していたにもかかわらず、花王はその事実を隠匿して販売していたが、ついに耐え切れず販売中止を余儀なくされたーー。花王を追い詰めたのは、消費者の中に形成されたそんなストーリーだ。だが、これは事実とは相当異なる。
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