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JAL、「いきなりの実質債務超過」の波紋

水面下の攻防で得するのは誰か?

  • 高橋 篤史

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2009年10月20日(火)

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 日本航空(JAL)の再建問題をめぐって、巨額の債権放棄が要請される可能性の高いことが波紋を広げている。これは、前原誠司・国土交通大臣が指名した「JAL再生タスクフォース」が、主力の日本政策投資銀行と3メガバンクに対して10月13日に打診したもの。このことは裏返せば、既にJALが巨額の実質債務超過状態にあることを意味する。

 冨山和彦氏ら産業再生機構OBを中心とするタスクフォースは、再建計画を策定するため、9月末からJALの資産査定を進めている。タスクフォースは10月13日、政投銀とみずほコーポレート銀行以下の民間主力3行との間で別々に協議を行い、その中で、デューデリジェンス(資産査定)の途中で正式な数字ではないものの、債権放棄と債務株式化の組み合わせで3000億円程度の金融支援の必要性を明らかにした模様だ。債権放棄については2500億円程度とされる。

 債権放棄が必要ということは、JALがそれとほぼ同額の資本不足に陥っていることを意味する。今回のタスクフォースの動きが表面化した直後、JALは「現時点で債務超過であるというのは事実と異なる」とのリリースを出し、火消しに躍起だが、同社の資産内容が公表ベースよりかなり劣化していることは間違いない。

クレメモ乱発で、利益を先取り

 今回、巨額の実質債務超過が表面化したことは、それほど驚くに値しない。タスクフォースがデューデリジェンスに入った時点で、ある程度予想されていた事態といえる。

 実は、JALが保有する機材(航空機)については、かねてより多額の含み損が隠れているのでは、といった指摘がなされていた。今年3月末で同社の総資産は1兆7506億円。うち航空機は半分近い7235億円を占める。ほかに簿外にもリース資産として約6000億円(未経過リース料)が存在する。

 保有機材の含み損は、JALが「クレジット・メモ」(通称クレメモ)と呼ばれる航空機業界独特の商慣行を利用して期間利益を捻出してきた過去と密接な関連がある。

 メーカーから航空機を購入する場合、航空会社は2通りの値引き交渉を選択することができる。1つは単純明快な現金値引きだ。例えば、100億円の航空機を2割値引きしてもらい、80億円で購入する、といった具合である。この場合、バランスシート上で購入機材は80億円として計上されるだけだ。

 もう1つのやり方はクレジット・メモ方式と呼ばれるものである。クレジット・メモはクーポン券みたいなもので、航空会社はそれを使ってスペアパーツを購入したりする。この場合、同じ2割の値引きでも航空機の代金100億円はそのままだが、会計ルール上、クレジット・メモ20億円については営業外収益に「機材関連報奨額」として一括計上することができる。つまり、利益となるのだ。

 実はJALはクレジット・メモを“乱発”することで、利益を先取りしてきた。2005年3月期の483億円を最高に、1993年3月期からの分だけでも、その総額は2000億円を超える。この分、JALの期間利益は実力よりカサ上げされてきたと言える。

 機材関連報奨額による利益先取りは、必然的にバランスシート上に実勢より高い簿価の資産が計上されることを意味する。大手航空会社の場合、古い機材を売却して新しい機材に入れ替えることを行っているが、その際は売却損が出るのが通例。結局、JALは低い収益力と脆弱な財務体質が災いして、機材の入れ替えが進まなかった。含み損を抱えた高簿価の機材が滞留していったのである。

 全日本空輸(ANA)との差は、ここでついたともされる。ANAは損失覚悟で古い機材をどんどん売り払い、燃費のよい中小型の新鋭機への入れ替えを積極的に行った。それだけ毎年のランニングコストは低減され、収益力は強化された。

 一方のJALは、その逆である。今年3月末の保有機材を見ると、B747 型機が依然40機以上あり、全体の4分の1を占める(リースを除く)。「ジャンボ」の愛称で親しまれたB747型機は燃料を大量消費するだけでなく、効率的な機材繰りにも向かない。

 JALの今年3月末のバランスシートを見ると、デリバティブ債務で1262億円、繰延ヘッジ損益で2018億円ものマイナスを計上している。それだけ自己資本が毀損されているわけだが、これは燃料確保の際のヘッジに失敗したためだ。原油価格の下落を見通せず、高い価格で購入予約を打ってしまったのである。これも元を正せば、JALの“燃料馬鹿食い体質”に原因が求められる。

困惑する銀行団

 今回、JALの実質債務超過が予想された事態だと指摘したのには、もう1つ理由がある。タスクフォースがデューデリジェンスの過程で目一杯に損失を積み上げる可能性が非常に高いと考えられるからである。

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