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「トヨタハマー」はなぜできない?

日本企業の世界戦略を阻む武器輸出3原則の影

  • 鍛冶 俊樹

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2009年10月22日(木)

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 米自動車メーカーであるゼネラル・モーターズ(GM)は、有名ブランド「ハマー」を、中国の機械メーカーである四川騰中重工に売却することで10月9日に正式合意した。ところが、騰中重工は建設機器の製造を手がけており、自動車生産の実績はゼロだと言う。そんな企業が世界的なヒット商品でもある乗用車ハマーの生産を維持できるのか、はなはだ疑問だと言わなくてはならない。

 もとよりGMは6月に経営破綻し、会社再建中の身の上だ。採算が合いそうにない部門は廃止するか、売り払うかしかない。売却されたハマーは、2011年までは米国の工場で生産が続けられるとのことで、約3000人の米国人の雇用が当面守られるという。

 つまり、この売却はバラク・オバマ米政権の失業対策の側面が色濃くにじむ国家的プロジェクトだとも見える。オバマ大統領としてはとりあえず雇用を確保し、徐々に政府が推奨する新規プロジェクトに労働者を振り替えていく算段なのだ。

 そうなると新たな問題が生ずる事は明らかだ。2012年以降、仮に騰中重工が米国での生産を続けようとしても、その時に熟練労働者は職種転換していなくなっている可能性がある。いつ中国に移転するかもしれない工場に留まりたいと思う米国人労働者はほぼ皆無だろう。

 当然、中国企業としては、この事態を予想しているはずであり、生産技術の獲得に全力を尽くすだろう。しかしこれはさらに問題を生む。ハマーの技術が中国に流出し、軍事転用される公算が極めて高くなるのである。たかが自動車技術、軍事転用とは大げさだなどと思うなかれ。ここにこそ問題の本質があるのだ。なぜならハマーはもともと軍用車両なのだから。

軍用、民生用で評価されたトヨタ車

 ハマーの原型は、1980年代に米軍で採用された軍用自動車ハンヴィーである。ハンヴィーはジープの後継として制作されたものだが、ジープが民間車両としても販売されたのと同じように民間向けにも販売された。それがハマーである。

 つまり軍用、民生用ともに評価されているわけだが、実は日本にも全く同じ軌跡を辿った自動車がある。トヨタ自動車のメガクルーザーである。これは自衛隊に納入している高機動車を民間向けに改装したものだが、形状はハマーH1に酷似している。

 それもそのはず、もともと自衛隊の高機動車は米軍のハンヴィーを真似て作られたものだからだ。これを盗用という非難は当たらない。同盟国として共同作戦も視野に入れておかなくてはならないので、軍用車両も類似の性能が要求され、従って形状もどうしても似てきてしまうのである。

 ところが実際の性能となると面白いことに、オリジナルのハンヴィーよりトヨタの高機動車の方が優れているのである。具体的に言うと、燃費がよく故障が少ない。これは日本の自動車が世界に誇る長所であるから、当然とも言えるが、価格はそうはいかない。ハンヴィーが5万ドル(450万円程度)なのに対して、高機動車は約700万円する。この日本車らしからぬ高価格は、自衛隊しか市場がないため少量生産にならざるをえないためである。メガクルーザーの方もハマー人気に押されて販売が伸びず、2002年には生産を中止している。

 ここまで書けば、もうお分りだろう。米国がハマーブランドを中国に売るより、トヨタがハマーとハンヴィーを買い取って、日米共用の軍用、民生用自動車を生産、販売した方がはるかに望ましいのだ。

 具体的に言おう。ハンヴィーは米AMゼネラルが生産し、米軍に納入している。海外にも輸出しており、軍用品としてはヒット商品だと言える。だが先に述べたように、性能は今ひとつ物足りない。もしこれをトヨタが作れば、かつてのジープのように世界各国の軍隊で採用されることは間違いない。

 一方ハマーは、俳優で現在は米カリフォルニア州知事でもあるアーノルド・シュワルツェネッガーの要望を受けてハンヴィーをAMゼネラルが民間向けに作り直して売り出し、後にGMがこれを引き継いだものだが、H1型はハンヴィーを原型としているものの、H2型以降はハンヴィーの原型から離れてしまっている。馬力の強い大型の4輪駆動車に変わりはないが、エコブームの時代に故障の多い燃費の悪い車がシュワルツェネッガーのマッチョイメージだけで売れ続けるわけはない。

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