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「シアワセのものさし」持ってますか?

2009年10月23日(金)

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 グローバル資本主義や世界経済のあり方を根底から問い直した金融危機。その余熱が冷めやらぬ今年1月、「この国のゆくえ」という連載を始めました。これから訪れる新しい時代。この国がどういう国を目指すべきなのか、それを考えてみたいと思ったからでした。

 あの連載は4月に終わりましたが、その後も暇を見つけて、日本の未来が見えそうな地方や企業に足を運びました。そして、2カ月前、ある人物に出会いました。

 坂本龍馬や中岡慎太郎、武市半平太など幕末の風雲児を生み出した土佐の国に生きるグラフィックデザイナーでした。一次産業と地域に関する仕事しか受けない。大企業の依頼も断っている。それでいて、この人が関わると、どんなプロジェクトの成功してしまう。そんな不思議な力を持ったデザイナーでした。

 業界では有名なようですが、恥ずかしいことに、私は存在すら知りませんでした。でも、少し話を聞いただけで、その計り知れない人間の深さと他を圧倒する迫力に引き込まれました。出会ってたったの2カ月。それでも、前回の連載で書ききれなかったことが、この人を通して書けるのではないか――と感じました。

 これから数カ月、このデザイナーを主人公にした連載を始めます。彼の足跡や過去の実績を通じて、商品開発の手法や企業経営の要諦、地域経済の未来などが浮き彫りになるでしょう。それだけでなく、彼の考え方や生き方は、グローバル経済の大海原を漂流しているこの国に、違った価値観を提示するに違いありません。

 オバマの米国は新たな世界秩序の構築を模索しています。国内でも民主党政権が誕生、国家機構の見直しに着手し始めました。金融危機から早一年。世の中は新たなフェーズに進みつつあると言っていいでしょう。連載がどこにどう転がっていくかわかりませんが、新しい時代の「ものさし」が提示できれば望外の喜びです。

(日経ビジネス オンライン、篠原匡)

 この男がひとたびプロジェクトに関われば、どんなものでも飛ぶように売れていく。カツオだろうが、砂浜だろうが、ユズだろうが、村だろうが、例外はない。そんな魔法のような腕を持つ男が土佐にいた。梅原真、59歳。高知県香美市に住むグラフィックデザイナーである。

“辺境”に生きる凄腕デザイナー

梅原デザインのあしあと

 高知県東部にある物部川のほとり、2階建ての自宅兼事務所で裂き織り作家の和香夫人と暮らしている。ほどほどに広い庭には畑があり、仕事の合間には農作業で汗をかく。2階の居間に腰を下ろせば、目の前に広がるのは物部川の清流と龍河洞県立自然公園の雄大な眺め。その借景を、創作活動の糧にしていることは想像に難くない。

 その毎日は判で押したように規則正しい。出張などがなければ、9時ちょうどに隣の事務所に顔を出す。そして、和香夫人の手料理を食べるため、12時から1時までは昼休みを取り、18時まで仕事に没頭する。夕食の後は、2人の女性スタッフが帰社した頃合いを見計らって、おもむろに事務所に戻り、深夜まで創作活動を続ける。

自宅の庭にて(写真:宮嶋康彦)
画像のクリックで拡大表示

 事務所スタッフに対する帰り際の挨拶はなぜか「ごちそうさま」。フランス出張から帰った後、メールの文面がすべてカタカナになっていたこともある。オリジナリティが問われる職業柄か、もともとの性格なのか、どこかにユーモアを潜ませなければ気が済まない。

 しかも、かなりの愛妻家。身につける服は毎朝、和香夫人が揃えておいたもの。口についたトマトソースを拭いてもらうほどの仲である。夫人が海外出張に行った時など、妙に落ち着きを欠き、何かもぞもぞしていた、と事務所のスタッフは言う。

 基本的に明るく陽気で、飲み会の盛り上げ役も買って出る。見ていて楽しい人物である。

札束を積まれても嫌なものは嫌

 そんなお茶目で可愛らしい一面を持つ梅原だが、その容貌はデザイナーのそれとはほど遠い。身長182cm、体重82kgの巨躯。短く刈り揃えた髪、魯山人のような黒縁の丸眼鏡、太い眉、分厚い唇、厳つい肩――。その容姿は見る者にかなりの威圧感を与える。

 性格も激しい。

 「おまんは何がしたいんじゃ」

 仕事の依頼に来た客を、その野太い声で一喝することは日常茶飯事。一度、頭に血が上ってしまうと、容易には下がらない。

 「おまんらはなにもわかってへん」

 会議の席上、書類を集めて帰ったことも一度や二度ではない。

木星会のロゴ。かなり初期の作品

 「こちらに明確なコンセプトがないと彼は本気で怒り出すからね。彼に会う時はよく寝て、頭の体力をつけて、3つくらいのシミュレーションを立ててから行ったよ」

 過去に組織のロゴ作成を依頼した「木星会」(高知県大川村、木工品製造)の川村純史はこう振り返る。梅原と会うのはそれだけ緊張するということだろう。

コメント6件コメント/レビュー

高知は幸せな国。土佐犬、尾長鶏、出目金。暮らしに困る国でこんな手間暇のかかる趣味は生まれない。カツオとアマゴが一つの食卓に当たり前のように並ぶ国でもある。貧乏だとは言うけれど、本当の貧乏では決してない。(2009/10/26)

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「「シアワセのものさし」持ってますか?」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

高知は幸せな国。土佐犬、尾長鶏、出目金。暮らしに困る国でこんな手間暇のかかる趣味は生まれない。カツオとアマゴが一つの食卓に当たり前のように並ぶ国でもある。貧乏だとは言うけれど、本当の貧乏では決してない。(2009/10/26)

ほんとうに、つい先日高知へ行って来ました。赤岡町のおっこう屋のおかみさんともお話ししたし、明神水産の鰹のたたきも食べた。高知は潜在力のある土地だと感じた。来年の大河ドラマ龍馬ブームに依存することなく、地道に高知を売り込む姿を参考に、私も自分のまちのまちづくりに何かできればと思いをはせたい。▼『そこにしかない唯一の価値を認めるべき。その思想をデザインで示したのだ。』『デザインを通して地域が生きる道を照らし出す。』 この言葉にうそがないから売れたのだろう。先日講演を聴いた藤巻幸夫氏もデザインと一緒に地域の魅力を探っていた。▼篠原記者の地域の魅力探し、これからも楽しみにしていきます。(おやさん)(2009/10/25)

 この国のゆくえ掲載時から興味をもって拝読しておりました。 腹八分の資本主義も早速購入して読みました。 60歳定年を受けて来年6月から高知県で農業を始めようと思い立ち、農業関係の書籍を読み且つ様々な人と会話しておりますが、農業の一番の問題は再生産するのに必要な利益が通常の販売ルートからでは絶対に得られないことにあると思います。これは、農業だけでなく小売業のPB商品の製造受託を受けて疲弊しているメーカーを始め篠原さんの著作の副題である「強欲な資本主義」と合い通じることです。 そういう状況からこの連載は自分にとって身近な問題を取り上げてもおり金曜日が待ち遠しいこととなります。 我々団塊の世代は大企業に就職し会社からスキルアップに投資してもらった身として、地域に・次世代に少しでも貢献したいものです。(2009/10/23)

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