小さくても誇り高いスイスの時計工房に触発され、独立を決意した。電鋳などを駆使して切削では不可能なナノサイズの超微細加工を得意とする。インフルエンザワクチンを鼻から吸入する新接種法の開発に意欲を燃やす。
水を特殊なメッシュの上に乗せて振動を与えると、穴を通過する際に小さな微粒子になり噴霧される。
喘息患者が薬を吸引するための医療機器、ネブライザだ。メッシュを潜り抜けた薬は直径が約2.5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)となり、気管支から直接体内に取り込める。このメッシュには、その大きさの穴が、規則正しく開いており、その数は、1cm2当たり4万個に上る。
栃木県にある精密加工会社、「オプトニクス精密」の技術がこの製品を支えている。工場には所狭しと機材が並び、さながら大学の研究室のようだ。
2001年に医療機器販売大手のオムロンは、オプトニクスの技術を活用することでメッシュ式の製品化に漕ぎ着け、従来型のネブライザに比べて大幅な小型軽量化に成功した。100g弱の重量と乾電池で動く手軽さで、患者からは気軽に外出できるようになったと評価されている。欧米や中国など世界中で販売され評価されている。

絹田社長が独立を決意したのは37歳。時計部品メーカーに勤務していた頃は、スイスの時計メーカーを何度も仕事で訪れたという。10人足らずの中小企業ながら、誇りを持って仕事をしている姿に感銘を受けた。
1986年の設立に先立ち、自宅の物置を工場にして起こしたベンチャーは、妻と学生アルバイトを合わせてたった5人だったが、技術には自信があった。そして、独立の際に絹田社長は1つの課題を自分に課した。「時計の仕事はしない」というものだ。会社の財産を盗むような真似はしたくなかった。
この姿勢は今でも変わらない。技術への自信から営業社員はゼロ。それでも噂を聞きつけて訪れる大手企業や研究者は引きも切らない。
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