「若きキャリア官僚たちの秋2009」

今、人類は「優しさ」が問われている

【第7回】環境省 福嶋慶三氏《後編》

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2009年11月9日(月)

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 福嶋慶三氏は、前回の話からも分かるように、官僚の立場から官民協働ネットワーク「Crossover21」やYEN(環境マインド若手社会人交流会)で、政策形成への市民参加に取り組んでいる。

 今回は、福嶋氏が尽力するもう1つのテーマである、地球の温暖化問題を中心に話を進めていく。

■記事の最後に筆者が企画する「政策座談会」のお知らせがあります。

佐藤 ゆみ(以下、佐藤) 福嶋さんは温暖化問題に思い入れを持って環境省に入られて、国際交渉などにも参加したとお聞きしました。実際のところは、どのようなお仕事をされてきたのですか?

福嶋 慶三(以下、福嶋) 最初は国内対策を担当していました。日本全体で、どのように温暖化対策を進めていくべきか、ということを関係省庁や経済界、NGO(非政府組織)の方々などと喧々諤々の議論をさせていただきました。

 そのうちに、国際交渉の担当になりまして、国連をはじめとする国際会議に出席するようになり、自分は主に途上国イシューを担当していました。以前のインタビューでご登場された菊地信之さんもおっしゃられている通り、大変やりがいがあって面白い、感動する仕事でした。

宇宙人の侵略には一致団結するはずだ

佐藤 どんなところにやりがいや感動を感じましたか?

福嶋 慶三(ふくしま・けいぞう)氏
京都市出身。立命館大学法学部政治・行政コース卒業、神戸大学大学院法学研究科公法専攻修了。2002年、環境省入省。温暖化をはじめとする地球環境問題に国内対策・国際交渉の両面から取り組む。内閣官房構造改革特区・地域再生推進室への出向、英サセックス大学大学院(環境開発政策修士)留学などを経て、環境省環境保健部企画課課長補佐。官民協働ネットワーク「Crossover21」、YEN(環境マインド若手社会人交流会)の活動など、政策形成における市民参加を実現するために奔走している(本インタビュー後に、内閣官房副長官補付に異動。現在、鳩山由紀夫総理の掲げる温室効果ガス25%削減のための検討チームに所属)
(写真:佐藤 ゆみ)

福嶋 まず、初めて国連の会議に出た時、感動しました。というのも自分は昔から、どうやったら地球上のみんなが紛争や貧困のない世界で、平和で幸せに暮らせるようになるのか、ということをよく考えていました。

 よく言われるのが、例えば、宇宙から宇宙人が侵略してきたら、米国もロシアも中国も中東もみんな争いをやめて、一致団結するはずだ、とか(笑)。温暖化問題って、そういう地球市民に共通の問題としての側面があると思います。

 なので、少なくとも、みんなこの問題に対して、なんとかしないといけないという共通の思いはある。目や髪や肌の色が違い、文化も価値観も全く違うような人たちが、協力して何とかこの問題に取り組もうとしている。そこに素直に感動しました。

佐藤 現実の国際交渉は、そんな生やさしいものではないのでしょう? 中国やインドは、新興国といえども、「自分たちはまだまだ開発途上国であり、自国の貧困問題解決のためには経済成長する必要がある。それに、これまで先進国はさんざんCO2(二酸化炭素)を排出してきたのだから、まずは先進国が削減をするべきで、さらに途上国へ資金支援や環境技術を提供せよ」と言っていますよね。

福嶋 その通りですね。それ以外にも、例えば産油国は、「世界が温暖化対策を進めれば進めるほど石油が売れなくなるので、金銭補償をせよ」なんてことを平気で言ってきます。他方で先進国は、「新興国も途上国とはいえ総排出量は多いわけなので、何らかの削減にコミットするべきだ」という主張をしています。またご存じのように米国は、京都議定書は自国の経済にマイナスの影響を与えるというので、ジョージ・ブッシュ政権時には議定書の枠組みから脱退しました。

佐藤 まさに、国益と国益をかけたぶつかり合いですね。

福嶋 交渉は当然、それぞれの自国の国益がかかっているので、厳しいものになります。例えば、せっかく連日徹夜で議論をしてみんなでまとめたドラフトを、インドが最後の最後に「やっぱり反対!」と言い出して、収拾がつかなくなったりしたこともありました・・・。そういうこともしょっちゅうです。

 しかしながら根底には、やはり世界全体のため、次世代のため、みんなで協力していくべきだという地球愛・人類愛のようなものが流れている。ですので、もちろんタフで厳しい交渉ではありますが、いや、だからこそ、少しでも会議が前進したり、みんなで提案を出し合ったり少しずつ妥協したりして合意に漕ぎ着けることができた時は、それは本当に感動があります。マルチ(多国間)の国際会議はまさに、そこに醍醐味があるんだと思います。

信頼関係を高めるマナーあっての交渉ごと

佐藤 何か、交渉をまとめるための秘訣のようなものはあるのでしょうか。

福嶋 難しいご質問ですが、先輩に教わり、大事にしていることは、相手との信頼関係を築いて、それを大切にするということですね。例えば、会議に参加すると、各国の交渉担当官同士で、名刺はもちろんですが、携帯番号や携帯アドレスの交換などもします。刻一刻と状況が変化するため、それについていくのに、みんなで情報をシェアするためですね。

 日本は比較的大きな交渉団で会議に臨むことが多いので、手分けをすることもできるのですが、各国の人は、少ない人数で、かけもちして複数の交渉議題を追いかけたりして大変だったりします。そこで、こちらが手に入れた情報を独り占めしないで、各国の交渉担当者たちに電話やメールして、シェアしてあげたりする。

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著者プロフィール

佐藤 ゆみ(さとう・ゆみ)

佐藤 ゆみ政治アナリスト、マナー・礼法講師。札幌市出身。米国ルイス&クラーク大学留学、政治学・国際関係を学ぶ。帰国後、総合広告代理店にプランナーとして勤務。その後、衆議院選に出馬。政策担当秘書として国会議員の各種政策立案に携わる。現在、INTEGRACE(インテグレース)代表。企業・個人を対象に印象マネジメント、営業・接遇マナー、時事研修を実施中。ハリウッドビューティサロン「美人講座」講師。政治を切り口にしたコンサルティング・研修には定評がある。ウェブサイト「人を動かすマナーの法則」連載。



このコラムについて

若きキャリア官僚たちの秋2009

税金のムダ遣い、縦割り行政の弊害、天下りの横行・・・。様々な批判が浴びせられる官僚たち。政権を担う民主党はマニフェストで「国家公務員の総人件費を2割削減する」と掲げた。日本の高度成長を支えた官僚の後輩たちは、どんな現状認識を抱いているのか。そして、国家運営に対する志は残っているのか。生の声から探っていく。

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