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「私たちの町には美術館がありません。美しい砂浜が美術館です」

ラッキョウ、クジラ・・・あるものすべてが展示物

2009年11月6日(金)

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 高知県に梅原真というグラフィックデザイナーがいる。この人の手にかかると、どんなものでも飛ぶように売れていく。カツオだろうが、砂浜だろうが、ユズだろうが、村だろうが、例外はない。そんな魔法のような腕を持ったデザイナーだ。

 このデザイナーの生き様を通して、商品開発や企業経営のあり方、地域社会の可能性などを考える――。それが、この連載の狙いである。前回は「藁焼き鰹たたき」をモチーフに、デザインの破壊力や梅原の個人史を見た。今日の題材は梅原が産み落とした不思議な美術館。ものの見方を変えるだけで、可能性は無限に広がる。そのことがよくわかるだろう。


(日経ビジネス オンライン、篠原匡)
梅原デザインのあしあと

 高知市内から南西に3時間。「への字型」に湾曲した海岸線の左下、松原で有名な黒潮町(旧大方町)にはふしぎな美術館がある。

 メインステージは4キロメートルにわたる入野の浜。澄み切った青空を天に抱き、鮮やかな海岸線と緑深い松原に四方を囲まれている。BGMは波の音。眩いばかりの太陽と幻想的な月の光が展示品を照らし出す。

 この美術館の館長は沖を泳ぐニタリクジラ。太平洋を望む海岸線や名勝の誉れ高い入野松原が展示品ならば、風が刻んだ風紋や波が残した潮紋、小さなチドリの足跡、産卵に来たウミガメなども展示品である。

「美しい砂浜が美術館です」

 この美術館では、季節ごとの特別展示も目玉の1つになっている。

 例えば、5月のゴールデンウィークに開催される「Tシャツアート展」。写真や絵画などの原画をプリントしたTシャツを浜辺に並べる野外展覧会のことだ。1000枚前後のTシャツが浜辺でひらひらと舞うさまは圧巻の一語といっていいだろう。

5月のゴールデンウィーク、1000枚のTシャツが浜辺ではためく(砂浜美術館事務局提供)
画像のクリックで拡大表示

 10月後半~11月末にかけては、赤紫色が鮮やかなラッキョウの花が満開を迎える。黒潮町は全国でも有数のラッキョウの産地。この時期、入野の浜はどこにも負けない花見の名所に姿を変える。

 そして1月~3月。砂浜に流れ着いた漂流物を展示する漂流物展が幕を開ける。黒潮町の周辺で見つけた漂流物を展示する漂流物展では、全国のファンが撮影した漂流物の写真コンテストなども開かれる。ここで展示される作品は見方を変えればただのゴミ。だが、この美術館にかかると、オリジナルな展示物になるから不思議なものだ。

どこから流れ着いたのだろうか(砂浜美術館事務局提供)
画像のクリックで拡大表示

 コンセプトは「私たちの町には美術館がありません。美しい砂浜が美術館です」。この言葉に魅せられて、年間20万人を超える人々がこの砂浜に訪れる(海水浴客やサーファーなどを含む)。ただの砂浜にもかかわらず、毎年たくさんの人が訪れる。この美術館の名前は「砂浜美術館」。あるものすべてを展示物に見立てた美術館である。

 全国的にも有名な砂浜美術館。その誕生の影にもあの男がいた。高知県在住のグラフィックデザイナー、梅原真である。農林漁業や地域に関する仕事しか受けないが、関わるプロジェクトを成功に導く凄腕のデザイナーだ(第1回「『シアワセのものさし』持ってますか?」、第2回「そして、カツオ一本釣り船が生き残った」参照)。

 砂浜美術館が誕生したのは今から20年前。バブルの熱狂が渦巻く1989年に、梅原は地元の若者たちと立ち上げた。全国各地でリゾート開発計画が相次いだこの時期に、なぜ梅原は砂浜美術館を仕掛けたのか――。それを紐解けば、梅原という男の人間性やその哲学の一端が見えるのではないだろうか。

 前代未聞の美術館、きっかけは1人のカメラマンの一言だった。時は1988年後半、東京・渋谷の呑み屋での話である。

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「「私たちの町には美術館がありません。美しい砂浜が美術館です」」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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